MODEROID ライジンオー
グッドスマイルカンパニー MODEROIDシリーズ
定価:5500円(税込み)
原型制作:ユニテック
制作協力:エルドラモデル
グッドスマイルカンパニーより、ライジンオーが出動!
プラモデルでも出動OK!
商品化競争を生き残れ!
2018年はエルドラン・勇者ファンにとって転換期の年であった。バンダイスピリッツホビー事業部がHG 1/300 ゴウザウラーの発売を発表したことを皮切りに各社がエルドラン・勇者シリーズなどの90年代のロボットアニメのキャラクターの商品化が進められるようになったのである。
この動きに目ざとく反応したのがfigmaなどやねんどろいどなどのフィギュアで有名なグッドスマイルカンパニーであった。基本的に美少女や人間のフィギュア中心のイメージの強い会社であるが、聖闘士聖衣神話や超合金魂、ROBOT魂などの様々な商品の企画を手掛けた田中宏明氏がバンダイより移籍してから情勢が大きく変わった。美少女フィギュアのみならず、ロボットのフィギュアやプラモデルの開発にも力を入れだしたのである。
このバンダイのゴウザウラーの報を受け、刺激になったのか2018年末にライジンオーの商品化を発表。大阪で1月に開催された絶対!!元気!!熱血!!エルドランシリーズ展のポップにてグッドスマイルカンパニーのプラモデルブランド、MODEROIDで商品化されることが告知された。この時点では発売時期が未定だったが、後に2019年8月の発売がアナウンスされた。
この構図は、MicrosoftとAppleの関係のような熾烈なパソコンソフト開発競争の幕開けの様であった。ゴウザウラーが変形合体をこなすということを受け、このMODEROID ライジンオーでも変形合体をこなし、かつ2号ロボのバクリュウオーの商品化と合体が示唆された。1社のみの開発よりも多数の企業が開発を競い合うことで商品のクオリティが上がるという現象を相乗効果と呼ぶが、この現象がグッドスマイルカンパニーとバンダイスピリッツの間で起きつつあるのであった。
今回は、このMODEROID ライジンオーを細かく見ていこう。
MODERID ライジンオー見参!
ライジンオーはエルドランシリーズの1作目でアニメファンの人気も高く、安定した需要が見込まれるためか多数の商品が商品化されている。しかも、変形合体を何らかの形でこなす商品が多数発売されているのである。TOMYのDX版は高いプロポーションを維持しつつ、変形合体もこなす良玩具であった。2006年にはシーエムズコーポレーションがBRAVE合金 ライジンオーをバクリュウオーとのセットで発売し、高い評価を得た。(注1)後にライジンオー単体でもBRAVE合金ブランドで発売され、サンライズメカアクションシリーズでもアクションフィギュアとしてシーエムズから発売された。(注2)
この後、コトブキヤからはSD体形にアレンジされたD-スタイルでもプラモデル化されており、こちらも差し替えありだが変形合体をこなすことができる。
MODEROIDは、シンカリオンやマジンカイザーなどの比較的ニッチなメカを商品化してきていた。シンカリオンは元々はタカラトミーのキャラクターで、新幹線からロボットに変形しロボット同士のオーバークロス合体などもこなすが、MODEROIDは高めの年齢層をターゲットにしており、新幹線への変形機構を廃してプロポーションと可動を重視したモデルとなっている。
しかし、MODEROID ライジンオーでは可動のみならず変形・合体ギミックを高いレベルで実現することが宣言された。その開発はグッドスマイルカンパニーの公式ブログや田中宏明氏のtwitterで公開され、ファンの期待が高まっていった。
開発にはエルドランメカのデザイナーであるやまだたかひろ氏が監修し、パッケージの絵もやまだたかひろ氏描きおろしである。バンダイのプラモデルとは違い、一部アクションフィギュア的な要素が組み入れられており、ランナー単位で塗装されていたり、関節部には摩耗に強いPOM素材が使用されていたりする。さらに、強度が必要となるところには組み立て済みの関節パーツが使用されているのが驚きである。これらの発想は田中氏が手掛けたスーパーミニプラやアクションフィギュアのものがフィードバックされており、プラモデルになじみのない初心者でも組み立てられるように配慮されている。
注1 ライジンオー単体で見ればギミック・可動が充実しており評価が高いが、2号ロボのバクリュウオーと最強合体形態のゴッドライジンオーのギミックは後世に語り継がれるほどのダメさ加減である。詳しくはBRAVE合金 バクリュウオーとBRAVE合金 ゴッドライジンオーのコラムを参照のこと。
注2 このシリーズは可動範囲は非常に良いのだが、プラ製の関節が異常にまで脆く、下手をするとパッケージから取り出しただけで破損してしまう低クオリティ具合であった。
開発者達の闘志
ライジンオーは、人型の剣王、ライオン型の獣王、鳥型の鳳王の3体が合体して誕生するメカである。MODEROID ライジンオーではこの3体のコアメカもぬかりなく造形されている。それではライジンオーを構成する各メカの出来を見ていこう。
BRAVE合金でも出来が良かった剣王は、小型にもかかわらず細かい造形にこだわって作成されている
ライジンオーの中核を構成する剣王
比較的小さいが、可動範囲は広い
剣王は劇中でも龍尾脚などの格闘戦をこなすメカであるが、それらのポーズをこなすことが可能である。特に目を引くのが股関節の構造である。股関節は、ライジンオーに合体した時も獣王の脚部を支えてポーズを取らなければならないということから、強度と保持力が求められる。この箇所には組み立て済みの関節パーツが採用されている。しかもこれはPOM関節のみならず、可動軸に真鍮線が用いられているのである。このため、この手のプラモデルでありがちな破損しにくくなっている。剣王単体でもポーズをとるため、股関節を下にずらすことが可能である。
組み立て済みの股関節のおかげで剣王単体でも広い可動域を誇る
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また、プラモデル初心者のために目や額のアンテナのクリスタルの部分が塗装済みである。顔の大きさは1cmにも満たない大きさであるが、塗装されているのが驚きある。また、武器の剣王ブレードも付属。手に持たせてポージングさせることができる。ただし、これまでの商品と違い、背中への収納は再現されていない。
剣王ブレードの刃の部分は塗装済みである
ライオン型の獣王は、獣時の脚部の造形にこだわって作られている。
シャープな角の造形が目を引く獣王
獣王の脚部はライジンオーに合体するときは折りたたまれて収納されるのだが、そのギミックを再現すると脚部が細く小さくなってしまう。そこでMODEROIDでは形状重視の脚部をかぶせることでプロポーションの維持に努める手法を採用している。これにより、合体時は形状重視パーツを外せば合体ギミックも再現することができる。ただし、形状重視パーツを取り付ける軸が非常に細くなっているため、取扱注意である。取り外す際は外側にゆっくり力をかけて取り外すようにしよう。
最後の鳳王は、ライジンオーのプロポーションを維持するためオリジナルのギミックが仕込まれている。
劇中と同じく翼が大きく造形されている鳳王
鳳王は翼が大きく造形されており、単体では劇中そのままの出来栄えである。ロボット時の頭部が極力見えないように配慮するためか、変形ギミックが劇中以上に複雑になっており、腕をアームで移動させたりしなければならない。こちらの変形は、翼を取り外して行ったほうがやりやすいと公式でもアナウンスされている。また、説明書では変形時に分解しないよう一部接着が推奨されている。
プロポーションを維持するために腕がアームで移動したり、鳥状態時の頭部が回転したりする
言葉では説明しにくいが、開発者が相当頭を使ったことが分かるギミックである
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飛行メカであるということでこの鳳王はスタンドに取り付けられるようにもなっている。翼の赤いラインは塗装済みで、組み上げれば劇中と同じく翼を折りたたむことも可能。
このように、コアメカの状態もぬかりなく造形されている。他社製品も基本的にコアメカのギミックが充実していたので、後発のMODEROIDもきっちりギミックを仕込み、さらに磨きをかけたものにしようという意気込みが感じられる。これらの可動域やギミックを利用すれば、劇中の合体シーンがしっかり再現可能である。次のセクションではライジンオーへの合体を見ていこう。
プラモデルでも合体OK!
ライジンオーは合体プロセスがよく練られており、これまで変形合体をこなす商品がいくつもリリースされてきた。DX版やBRAVE合金は言うまでもなく、当時カバヤから発売された食玩、コトブキヤのD-スタイルも変形合体をこなす。このことから、ライジンオーの合体システムがそれだけ完成されていることが分かる。
MODEROIDでは、1号メカに関しては完全変形を目指すというコンセプトで作られており、BRAVE合金と同じく劇中の合体シーンを再現することができる。その細かいプロセスを見ていこう。
邪悪獣にコアメカでは手に負えない状態になると、ライジンオーに合体して対抗することになる。指令室で、泉 ゆうが合体開始用のレバーを引き、飛鳥と吼児が仁の剣王内にあるライジンコマンダーへライジンメダルを転送、仁が自分のメダルをはめることで合体が開始される。
仁「ライジンオー!」
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仁「無敵がったーい!」
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鳳王の飛行シーンは、3mmジョイントが設けられているので、スタンドに取り付けることが可能である。また、剣王も獣王にまたがる可動域が確保されているため獣王に載せることが可能である。
獣王から剣王が取りあがり、剣王が変形を開始する。剣王の腕が伸縮し、頭部が胸部の中に収納、太ももが伸縮し、ライジンオーの太ももを形成する。
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続いて獣王が変形を開始する。頭部が外れて、脚部がパネルの中に収納される。脚部パーツは見栄え用のパーツを取り外して中に収納される。
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獣王の脚部収納後、パネルを押し込むことで脚部のラインが細くなるようになっているのがこだわりの箇所である。これにより、変形機構を維持しつつ合体後のスマートなライジンオーが再現されるわけである。
最後に鳳王を先に述べた複雑な変形ギミックで上半身にする。これは合体バンクでは描かれていないが、グッドスマイルカンパニーはどのような変形をしているのか想像してプロポーションの維持にあたっているわけである。
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各メカが変形すると、それぞれが合体してライジンオーが完成する。
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収納された手首が展開し、頭部に雷が落ちてライジンオーの角が形成され、合体完了となる。
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このように、BRAVE合金よりも小さいわずか16cmほどの大きさにしてここまでの変形合体プロセスの再現を行える驚愕のクオリティとなっている。この変形を再現するためにいくつかの工夫が施されているのでそれを見ていこう。
まず、剣王の頭部収納の際にネックとなるのは頭部の角パーツである。BRAVE合金では軟質パーツの角を用意し、そのまま強引に合体させていたが、このMODEROIDでは剣王の角を取り外して獣王の盾の取っ手に取り付けられるようになっている。これはライジンオーの角も同様で、合体時に取っ手の部分から交換する形となっている。
シールドの取っ手の部分に角を取り付けられる
ゴッドライジンオーの時は2つとも使わないので両方同時に収納可能
この角パーツは非常にシャープに造形されており、破損が心配されるがそれぞれ予備の角が付属している。どの角パーツにも塗装が施されており、ユーザーが組み立てやすく配慮されている。この辺りは、スーパーミニプラを立ち上げた田中氏らしい発想である。
変形とプロポーションの維持のために、足首パーツは非変形の見栄え重視用のパーツが付属している。また、手首も収納用の小型のものとロボット単体用の大型のものが用意されている上に、平手パーツも用意されているため非常にプレイバリューがある。それぞれを交換すると以下のようなプロポーションになる。
合体後のプロポーションは抜群!
余計なディティールのないアニメデザインのライジンオーである
余剰パーツは、鳳王のしっぽと獣王のしっぽである。特に鳳王のしっぽはライジンソードになる箇所だが、劇中のイメージを重視したためか、余剰部品扱いである。獣王のしっぽもBRAVE合金ではシールドの取っ手にしていたが、そこまでの複雑なギミックは大きさの都合上入れられないと判断したのか余剰になっている。
大きさはバンダイスピリッツが発売したHG ゴウザウラーと同じ大きさで、意識していることが見て取れる。同じサイズであるにもかかわらず、MODEROIDのライジンオーは変形合体を完全にこなすという驚きの使用なのである。
同じ価格帯で様々なギミックを詰め込んできたMODEROIDライジンオー
バンダイスピリッツには負けないという意気込みが感じられる
また、BRAVE合金は旧玩具よりもはるかに小さいにもかかわらず圧倒的な可動範囲を誇るわけである。次のセクションでは、ライジンオー時の各ギミックを見ていこう。
敵を捕縛してから一刀両断かあ・・・。その発想はなかったなぁ・・・。子どもってザンコク〜!
ライジンオーは上記の合体プロセスをわずか2.8秒でこなす。バクリュウオーが登場してからは簡易バンクも用意されており、これも再現可能である。
仁「ライジンオー!」
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仁「無敵合体!!」
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可動範囲は非常に広く、BRAVE合金以上に可動する。特に、肩には引き出し機構が備え付けられており、腕をある程度前に出すことが可能である。そのおかげで、アイキャッチのポーズも取らせることが可能。また、剣を大きく振り上げることもできる。
また、BRAVE合金時代では完全に再現できなかった必殺技のゴッドサンダークラッシュをほぼ完全再現できる。しかも、勝ち名乗りまで再現できてしまうのである。
仁「一気に行くぜ!」
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仁「ライジンソード!」
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シールドを投げつけると、シールドから重力波が照射され邪悪獣の動きを封じ込める。そこに、ゴッドサンダークラッシュを叩き込む。
仁「ゴッドサンダークラッシュ!!」
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縦に切られた邪悪獣は爆発四散。ライジンオーの手にライジンソードが戻ると勝ち名乗りを上げる。
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仁「絶対無敵!ラーイジーンオー!!」
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この流れは、BRAVE合金では肩の引き出しができなかったため、再現できない箇所であった。MODEROIDでは、可動範囲も十分に考慮に入れられた設計となっており劇中再現という点ではほかの製品の追随を許さない出来栄えに仕上がっている。バクリュウオーにもこの「劇中再現」という要素は引き継がれており、差し替えが増えたと言え、遊んでいて楽しい製品となっている。
一号ロボに関しては、2作目の『元気爆発ガンバルガー』をMODEROIDで発売することが決定されている。こちらのモデルも開発図を見る限り変形合体を目指しているものと思われる。MODEROIDの活躍に期待がかかる。
バクリュウオー、発進スタンバイ!(MODEROID バクリュウオーのコラムへ)
ゴッドライジンオー、超無敵合体!!(MODEROID ゴッドライジンオーのコラムへ)
授業中でも出動OK!(もどる)