MG Vガンダム(Ver.Ka)

バンダイ MGシリーズ

定価:3980円(税込み)

MG Vガンダム(Ver.Ka)
ついに変形合体機構を備えたVガンダムが登場!

すさんだ心に、作品制作は危険なんです!
1990年代の金曜日16時半から18時までのテレビ朝日はまさに関西圏のロボット大好き男の子にとっての黄金の時間帯であった。この時代は17時から勇者シリーズが、17時半からはスーパー戦隊シリーズが放映されていたからである。さらに、1993年からは16時半からガンダムシリーズが参入し、放送時間が変わる1996年まではまさにアニメ好きな子どもにとって神聖な時間だったに違いない。

1990年代のガンダムテレビアニメシリーズの第一弾が『機動戦士 Vガンダム』であった。この作品は、初代ガンダムの監督である富野由悠季が監督を務めており、ガンダムファンにとっては期待の作品であった。放映当初のアニメ雑誌では「子供向けを意識したエンターテイメント作品に仕上げる」という意向を示していた。その言葉通り、主役MSであるVヴィクトリーガンダムは、ΖΖガンダムよろしくコアファイターを中核として3機のメカが合体しMSになるというギミックが付与され、主人公であるウッソ=エヴィンも従来の主人公の年齢から大きく引き下げられた13歳に設定された。このころのガンダムはSDガンダムが主流だったのだが、それから入った子供たちをリアル路線に引き込もうという意図もあったのだろうし、同時期にやっていたライバル会社であるタカラの勇者シリーズと、トミーのエルドランシリーズが変形合体するメカを取り扱っていたため、それに対抗しようという意図もあったのだろう。

しかし、結果から言うとこの機動戦士Vガンダムは、子供そっちのけの鬱アニメに変化してしまった。というのもこの作品、富野監督が手当たり次第に登場するキャラクターを敵味方関係なく死なしていったからである。まず、第1話からして空爆で焼死した遺体を画面に映したり、ギロチンで(直接描写はないと言え)首は落とすなどといった陰惨な描写が目立った。さらに、同時代にやっていた『美少女戦士 セーラームーン』を意識してか味方側は多くの女性パイロットが登場したが、シリーズ全般を通して次々に死んでいき果ては全滅するという暴挙にまで出た。

こうも陰惨な作品になったのは、このころバンダイによるアニメ制作会社のサンライズの買収が進んでおり、そのことで富野監督が鬱に近い状況になってしまったからだといわれている。この鬱の状態の富野監督を黒富野とファンが呼ぶことがあるが、子どもそっちのけの作風に当の子どもが付いていくことができず、年齢層の高い視聴者だけに受けるという結果になってしまった。翌年の1994年には監督が交代し、リアル路線を排した『機動武闘伝 Gガンダム』が開始され、人気を博すに至る。

このころの私は『勇者特急 マイトガイン』に夢中だったことと習いごとで16時半には家にいなかったこともあり、この作品はほとんど見ていなかったのだが、中学生のころやっていたプレイステーションのゲーム『SDガンダム G GENERATION F』で作品を気に入ったのと、高校生になってからケーブルテレビでテレビ放送をすべて見て作品を気に入っていた。だが、もろもろの事情でプラモデルがなかなかリリースされることがなく早くリリースされないかと期待していたのだが、ついに2009年12月にMGで主役メカであるVガンダムが発売されることとなり、変形合体スキーの私の血が騒いだ。というわけで、今回はMG Vガンダム(Ver.Ka)の紹介を行おう!

マシンと会った日
Vガンダムの第1話は、いきなりウッソの乗るシャッコーとライバルキャラクターであるクロノクル=アシャーのゾロの戦闘シーンから開始される。何故この二人が戦っているのかということが全く説明されていないのだが、この第1話は実質上の第4話に当たるためである。このような変則的な話の流れになった理由は、監督の構想していた作品の流れだと、Vガンダムが初回から登場しなくなってしまい、それにスポンサーであるバンダイが難色を示したため、4話に当たる話を1話に前倒しし、後の2〜4話でウッソがザンスカール帝国と戦うことになった理由付けを回想という形で行うことになったからである。

コラム的には何の説明なしで話は進められないので、説明を加えよう。ポイントカサレリアにて不法居住していた少年、ウッソ=エヴィンが幼馴染であるシャクティ=カリンとともに、パラグライダー飛行を楽しんでいたところ、偶然にもリガ・ミリティアのコアファイターとザンスカール帝国のベスパのMSの戦闘に巻き込まれてしまう。パラグライダーが破けてしまったため、ウッソはザンスカール帝国のMSに引っかかり、コクピットの中に入り込んでしまう。ウッソは、中に乗っていたクロノクルを殴り倒しそのままシャッコーを奪ってしまうのだった。

その場に居合わせたシャクティは、先ほど戦闘を行っていたファイターを森の中で見つけ、パイロットであるマーベット=フィンガーハットが負傷していたため手当てを施していた。シャッコーから出たウッソは、自身のハロに連れられシャクティのところへ向かう。ウッソは、戦闘に巻き込まれた怒りも手伝ってかマーベットにカサレリアから立ち去るよう言い、シャクティとともに家に帰った。

その夜、ザンスカール帝国のベスパが、ウッソの憧れの女性であるカテジナ=ルースの住む町、ウーイッグを空爆し始めたため、ウッソは奪ったシャッコーで彼女を救い出しに行った。空爆を受けた町の様相は悲惨なもので、ベスパによる「人狩り」が行われていた。レジスタンス軍にベスパと誤解を受けながらもウッソは、辛くもカテジナと合流した。

しかし、彼らが隠れていた地下教会にベスパのMS部隊が総攻撃を仕掛け、地下教会は壊滅してしまう。しかし、ウッソとカテジナは何とか生き延び、旧世紀時代の地下鉄の通路を見つけ、シャッコーで町から脱出したのだった。

ウッソが町から脱出した頃、カサレリアでは先の小型戦闘機の持ち主らとシャクティが行動をともにしていた。そんな折、ウーイッグ付近を探索していたゾロ部隊にシャクティらが遭遇する。ゾロ部隊の兵士は、事情を訊くためだけが目的であったが、近くに兵器を隠していることを知られたくないため彼らは逃げることにした。怪しんだゾロのパイロットはシャクティらを包囲したが、そこにウッソの乗るシャッコーが現れ、リガ・ミリティアの支援を受けながらゾロを撃退し、彼らを救うのだった。

シャクティと合流したウッソは、リガ・ミリティアと行動を共にすることとなった。そんな彼らの元に、再びベスパの魔の手が忍び寄ってきた。カサレリア付近にリガ・ミリティアの基地があると踏んだ彼らは再び空爆を始めたのである。ウッソは、シャクティとリガ・ミリティアの団員を守るために再びシャッコーに乗り込んだ。

リガ・ミリティアからガトリングを借りたウッソはゾロを迎撃し善戦するが、すぐに弾切れを起こし地上に不時着する。しかし、リガ・ミリティアの女性パイロットであるマーベット=フィンガーハットのファイターの援護により、ゾロを次々と撃破していく。

ウッソは隊長であるサバトの乗るゾロを辛くも撃破するも、今度はクロノクルに追い詰められてしまう。シャッコーの右足が破損したため、ウッソはシャッコーの脱出機構を使用して脱出を図った。しかし、クロノクルのゾロのビームがコクピットブロックをかすめ、ウッソはコクピットから投げ出されてしまう。10メートルほどの高さから落下したためクロノクルは、パイロットが死んだと思っていたが、当のウッソは運よく木々の中に投げ出され、無傷で助かっていた。

戦闘終了後、シャクティとカテジナはリガ・ミリティアの地下工場へ赴き、マーベットはウッソの探索に当たっていた。マーベットのファイターを確認したウッソは、マーベットを不時着させたが、先日受けた傷が悪化しマーベットは倒れこんでしまう。

ファイターを操縦できないマーベットに代わり、ウッソはファイターを操縦させる。コンソールを弄っていたウッソは、気になる項目を見つけた。

気になるコンソールを見つけたウッソ
ウッソ「気になっています。これ、何です?トランスフォーメーションモード・・・。」

マーベット「ああ、その初めのMSの頭が上がるのよ。」

ウッソ「え、このファイターの?」

マーベットの言葉に興味を抱いたウッソは、コンソールのスイッチを押した。マーベットは速度が落ちるからとウッソにやめるよう言ったが、ウッソはファイターを加速させファイターの頭部をせり出させたのだった。

ファイターの頭部がせり出す図
ウッソ「じゃあ、加速します!」

マーベット「ウッ・・・。」
ロールオーバーで画像が変わります

せり出した頭部は、二つ目にV字アンテナに口元の2本のスリットがあった・・・。そう、それはリガ・ミリティアが新規に開発した新型MS、Vヴィクトリーガンダムの頭部なのだった・・・。

「ウッソ、新しいパーツよ!!」「元気百倍!Vガンダム!!」(ア○パンマン風に)
この作品の主役MSであるVガンダムは、従来のガンダムと一線を画す要素がある。このVガンダムはガンダムシリーズ初の量産機(注1)なのである。Vガンダムは、頭部とコクピットを形成するコアファイター、上半身と腕を形成するハンガー、脚部を形成するブーツの3つが合体し一つのMSとなる。

コアファイター

ハンガー ブーツ
量産機なのに複雑な変形合体機構を備えたMSであるVガンダム
ハンガーはトップリム、ブーツはボトムリムと呼称される場合があります

ガンダムF91のコラムで述べたように、UC0123年以降MSは小型化の一途をたどり、Vガンダムの作品舞台である30年後のUC0153年にはMSのサイズは完全に15メートル前後に設定され、ビームシールドと飛行能力がデフォルト能力になり、さらに変形・合体機構まで備えるようになったわけである。。

Vガンダムは、製造元のリガ・ミリティアが人員の少ないレジスタンス組織であるというから、整備のしやすさと生産のしやすさを優先しハンガーとブーツは完全に消耗品扱いであった。特にブーツは敵に特攻させてしばしばミサイル代わりに使われていたし、先に紹介したGジェネシリーズでは何気に高い攻撃力を誇る技となっていた。さらに、富野監督お得意のリアル路線で、合体の最中に敵に攻撃にされパーツが破壊されるというのは当たり前で、装甲も従来のガンダムより非常に薄くもろいものとなり、「無敵のスーパーロボット」という描写はなりを潜めている。さらにウッソが後継機であるV2ガンダムに乗り換えた物語中盤以降では、完全に量産機扱いで多数のVガンダムが投入され、物語終盤では容赦なく撃ち落とされた。

作劇も、作品序盤はウッソが持ち前の機転を利かし、合体変形を駆使してVガンダムをトリッキーに使用して敵を打ち負かすという感じの非常に分かりやすい作風となっていた。パーツが消耗品であるということと合体機構で簡単に取り換えが利くということは、破損したパーツを射出して取り替えさえしてしまえばすぐに戦線復帰ができる。さらに合体機能を利用し、劇中ではコアファイターを入れ替えることでパイロットが入れ替わるという芸当も見せている。

パイロットの交代劇
マーベット「ウッソ、私の機体を使いなさい!」

ウッソ「ありがとうございます、マーベットさん!」
ロールオーバーで画像が変わります

このように、ギミック面では非常に面白いMSだったのだがVガンダムの変形ギミックには多くの矛盾点が存在する。まず、上半身と下半身の接続なのだが、劇中の合体バンクでは板一枚で接続されている。これを馬鹿正直に再現したのでは当然強度が得られるはずがなく、立体化するにあたって難しい部分となっている。

さらに、腕回りの変形も非常にいい加減である。変形するときにシャッターが開きその中から手首が出現するのだが、そのシャッターがどこに消えるのかまったくもって謎なのである。設定画の変形説明でも「シャッターが適当に開く」といういい加減な説明がなされており、果てはMS形態時に腕の中にビームサーベルが収納されているという強度はおろか内部機構のことなど全く考えていない作りとなっているのだった。これを反省してか 、後継のV2ガンダムの合体機構はVガンダムよりも簡略化されたものとなっている。

このように商品化するはずのキャラクターなのに、小さな体躯の中にさまざまな構造上の大きな矛盾をはらんでおり、Vガンダムの変形モデルは必ず差し替えパーツが必要となってくるのだった。VガンダムシリーズのMSの商品化を難しくしているのはまさにこの点で、HGUCやMGでは完全にはぶられた状態であった。今回のMG化にあたりデザイナーであるカトキハジメ が、Vガンダムのデザインを1から見直し、今まで培われた技術をフルに投入して変形合体するモデルを作ることとなった。上記の矛盾点をどのように克服していったのか詳しく見ていくことにしよう!
注1 歴史上では一年戦争時のRX-79陸戦型ガンダムがガンダム初の量産機である。さらに、F91から10年後を描いた『機動戦士 クロスボーンガンダム』では量産型のガンダムF91が少数ながら登場している。
今だからできた匠仕様
MG Vガンダム(Ver.Ka)では変形合体する小型MSというコンセプトを守るためにさまざまな工夫が施されている。まず、MG ガンダムF91で採用されたポリキャップレスのABSフレームを採用し、小さい体躯にもかかわらずフレーム構造を達成した。さらに、MG ガンダム(ver.2.0)で培われた技術の応用により、一つ一つのパーツが極薄でさらに可動のためのヒンジも非常に小さなものとなった非常に繊細な作りになっている。これは、バンダイホビー事業部のたゆまぬ技術の蓄積があればこそ達成されたもので、商品のキャッチフレーズも「今だからできた匠仕様」と謳われている。キットの出来もその名に恥じぬ出来栄えとなっている。

まず、説明書通りに組み立てれば最初に組み立てることになるVガンダムの中核をなすコアファイターから見ていこう。

コアファイター 前 コアファイター 後
コクピットと頭を形成するコアファイター
これだけでもギミックの塊なんです

先に出ていた初代ガンダムやΖΖガンダムのコアファイターは上半身と下半身に挟み込まれて内部に収納される作りとなっていたが、Vガンダムのコアファイターは外部に露出する形で頭部とコクピットを形成する。これは、コアファイターがパイロットの脱出装置を兼ねているということと、頭部にはメインカメラや学習 コンピューターなど高価な部品を使っていることから双方を回収するのは人員と資源の少ないリガ・ミリティアに好都合だろうということから採用されたものである。頭部は、胸内部のABSフレームに組み込まれているレールで首の付け根の板が上下に移動することで頭部の収納を再現している。

さらに、特筆すべきは機首の折りたたみギミックである。コアファイターを最初に組む時に組み立てるのはこの機首なのだが、これが極小のヒンジで接続されており、くみ上げれば劇中通りに機首が折りたたまれて、機首内部から胸の赤いパーツが中から出現するという驚きのギミックが搭載されている。

機首の折りたたみギミック
のっけから細かいパーツで組むのが大変な機首パーツ
組みあがってから変形させたときの驚きは格別です
ロールオーバーで画像が変わります

構造が非常に細かいため変形させるのが結構怖いという難点があるものの、このギミックには非常にうならされた部分である。さらに、機首の部分を機体内部に収納することで頭部が下がらないようにロックされるようになっている。また、ROBOT魂のガンダムシリーズのように頭部のアンテナはプラスチック製のものと軟質樹脂でできているものの両方が用意されている。両方ともシャープな作りなので、ガシガシ変形させる人は軟質パーツを使うようにしよう。

コアファイターのパーツは2つ用意されており、もうひとつはVガンダムヘキサを作るために使用することになる。

コアファイター(ヘキサ用) 前 コアファイター(ヘキサ用) 後
頭部パーツとパイロットが違うヘキサ用コアファイター
中にはマーベットを乗せるようになっています

コアファイターは、クリアパーツを使うことでアクションベースに接続し空を飛んでいるところを再現することができる。また、クリアパーツの車輪が用意されているので着陸した状態でもディスプレイ可能である。

クリアの車輪パーツ アクションベースでのディスプレイ
コアファイター単体でもディスプレイできるように配慮してくれています
ただし、クリアパーツ製で、ほかのパーツよりもろいので注意

コアファイター単体での難点としては、主翼の外れやすさがあげられる。白い主翼は合体時に折りたたまれるのだが、これがプラスチックのパーツに細い棒で差し込まれている状態なので非常に外れやすい。かといって接続部分が非常に細いので ポリキャップが仕込む改造は困難なため、気になる人は軸を瞬間接着剤や木工用ボンドなどで少々太らせておいたほうがよいだろう。また、胸の黄色いパーツをランナーから切り取る際にピンを切らないように気をつけよう。筆者はこのピンをわずかに切ってしまい、その結果保持力が落ちてコアファイター時にポロポロ取れるようになったので瞬間接着剤で接着した。

コアファイターを組み立てた後は、腕の組み立てとなる。先にも述べたように腕パーツはVガンダムを変形させるうえで非常に難しい箇所である。しかし、この部分も極小ヒンジとフレーム内のレール機構によって変形を再現している。ただし、手首の収納だけはさすがに不可能だったのか、変形するときは変形用手首に差し替えることになっている。また、サイズが小さいためかMGで採用される指の可動は親指以外はなく、人差し指から小指が一体成型になっておりこの部分を差し替えることで平手や武器の持ち手を再現するようになっている。

手首一覧
完全変形を妨げる手首部分
向かって左が変形用手首です

肩パーツは変形のために引き出すことが可能となっており、前の部分の装甲も回転するようになっている。

肩の変形
ロールオーバーで画像が変わります

特筆すべきは腕の変形である。手首を変形用手首に差し替え、手首の付け根のブロックを上にあげてその部分をレールで腕の関節まで移動するようになっている。さらに、肘の赤いパーツが前方に回転し前にスライドするようになっている。その際に生じるスペースは、内部に組み込まれたカバーパーツとビームサーベル用の蓋が連動して動くことでふさがれる。さらに、赤いパーツが移動したことによってできた内部の空間に手首が収納され、その手首の甲に当たる部分で穴がふさがれるようになっている。

腕回りの変形
手首の位置と肘の赤い部分の動きに注目
「適当に閉じる」で処理されていたシャッターの矛盾をうまく解消している
ロールオーバーで画像が変わります

また、ビームライフルを装備させるための穴は変形用手首の溝が上になるように手首を配置させることで確保される。

ビームライフルを差し込む時のジョイント

このように腕回りの変形は小さな空間内部を隙間なく利用するよう緻密に計算されており、「適当に閉じる」で処理されていた部分を見事に再解釈している。このせめぎあいはまさに匠の名に恥じない部分である。

胴体パーツとリアスカートを組んで、それに腕パーツをつければハンガーが完成する。

ハンガー(ディプロイメントモード) 前 ハンガー(ディプロイメントモード) 後
胴体回りのフレームも薄い作りになっています
前垂れのスカート部分がヒンジを介して回転してリアスカートにくっつくのがすごい

このハンガーの状態はディプロイメントモードと呼ばれるトレーラーや工場内部での格納状態である。この状態でハンガーがけん引され各地を転戦するわけである。

このハンガーにコアファイターが合体した状態をトップファイターと呼称する。肩の胴体側基部を起こし腕を前方に180度回転させ、ビームライフルを取り付けた状態に主翼を折りたたんだコアファイターが合体することで完成する。本キットでは、肩の接続部分の裏側にピンが用意されており主翼が折りたたまってできる四角いジョイントに取り付けることでドッキングする。

トップファイター 前 トップファイター 後
ビームライフルが追加されるため飛躍的に攻撃力が増加する分、運動性が落ちるトップファイター

専用アタッチメント
専用アタッチメントをコアファイター側に取り付ければアクションベース1にもディスプレイできる

コアファイター単体では頭部のマシンガンしか固定武装がなく、MSとは戦えない状態なのだがハンガーと合体してトップファイターとなることでMSとも互角に渡り合えるようになる。しかも、この状態でもビームサーベルとビームシールドを使用することが可能となっている。

ビームシールドを展開したところ
対ビーム兵器の防御もばっちりな航空機

さらに、劇中ではトップファイター単体で変形し上半身のみで戦うこともしばしばあった。

上半身のみの状態
昔、偉い人が言っていた。「足なんて飾りです。」と・・・。

ドッキング自体は主翼パーツが取れやすいために、ピンの接続が難しいことが難点である。また、フレーム自体も薄いパーツの集合体なので非常にデリケートな扱いが要求される部分でもある。

最後に組み立てられるのが下半身を形成するブーツである。脚部パーツには、MG ストライクフリーダムガンダムで培われた装甲の連動ギミックが採用されており、変形するときに膝を押し込むと連動して装甲がスライドし、さらに内部に仕込まれたウイングパーツが連動してせり出してくるようになっている。

装甲の連動スライドギミック
ただ単に装甲を展開させるわけではないのがみそ
ロールオーバーで画像が変わります

腰パーツを組み立てて脚部を接続すればブーツの完成となる。

ブーツ(ディプロイメントモード) 前 ブーツ(ディプロイメントモード) 後
これといって武装がないため真っ先に落とされるブーツ
プラモデルでも非常にもろい構造となっています

特攻兵器として使われたり、真っ先に落とされたりしてブーツはそのもろさを散々劇中で見せつけてくれるのだが、プラモデルでも非常にもろい構造となっている。まず、股関節の接続はHG アリオスガンダムと同じ構造となっており、棒状のジョイントにボール型のポリキャップをはめるようになっている。そのため、また関節の保持力が非常に落ちており、すぐに外れてしまい組みにくいのである。

股関節の構造
アリオスよりも重い脚部をこれで保持しようとする無茶仕様
本キットの癌部分である

説明書では棒のパーツにはめ込んでから太ももに接続するようになっているが、それだと奥までかっちり入らないので説明書を無視して先にボールジョイントを太ももにはめてから股関節に取り付けたほうが組みやすい。ただ、このような構造なため、MS形態時の可動にはほとんど期待できない。

ブーツもコアファイターとドッキングして運用することが可能となる。コアファイターにブーツが合体するとボトムファイターと呼称される。ディプロイメントモードから股関節を左右に開き、上下を反対にしてコアファイターを搭載して完成する。キットでは、補助パーツをつけて接続するようになっている。

ボトムファイター 前 ボトムファイター 後
航続距離が延びるボトムファイター
ハードポイントを利用して武装のけん引も可能

コアファイターとの接続に用いる補助パーツにはアクションベース1に接続するためのジョイントが設けられているので、飛行状態でもディスプレイできる。ただし、先ほどの股関節の構造により、足がすぐに落ちてしまって保持しにくいのが難点である。

ディスプレイしたところ
コアファイターが2つあるのでトップファイターと同時にディスプレイできる

このように、MGらしく各飛行形態も再現できる。ただ、変形好きな私の視点ではトップファイターから上半身を変形させる際に一度コアファイターを取り外さなければならないのが不満である。そのまま変形させようとすると、コアファイターの機首を折りたたむ際にフレームパーツと干渉してしまうのである。また、手首の差し替えも結構硬くいので、うっかり力を入れ間違えると薄いフレームパーツと装甲パーツが折れそうで少々不安である。変形させる際はいつもよりデリケートな扱いが求められる.

トップファイターを上半身に変形させ、下半身に変形させたブーツを上半身と接続すればVガンダムの完成となる。上半身と下半身の接続はブーツにある細いピンで接続するのだが、ある程度柔軟なABS同士を接続するとはいえ抜き差しが結構怖い。さらに、このような接続方法になっているため腰の可動がない。劇中では腰を回転させている描写はないのだが、ポーズをつけたい人には物足りない部分となっている。

そして、これがMG Vガンダムの全身像となる。

MG Vガンダム(Ver.Ka) 前 MG Vガンダム(Ver.Ka) 後
初代ガンダムをイメージさせるシンプルなラインのVガンダム
設定よりも足が小さめにアレンジされている

子供向けを狙ったということで、主人公のVガンダムのラインは非常にシンプルなラインとなっている。これは、児童が落書きでVガンダムの絵を描きやすいようにという意図があり、極力簡単なラインで構成されるようにしたらしい。また、これまでのMSは直線のラインで描かれていたが、Vガンダムは曲面で描かれている。

曲面構成のデザインというのには図面が引きにくく、万人が納得のいくラインで製品化しにくいという欠点がある。今回は、デザイナーのカトキハジメが徹底的に監修し、最新のCAD技術を使用して劇中のイメージと設定画のイメージを折衷した形で仕上がっている。また、設定画よりも足が細めにデザインされておりどちらかというと現代の流行のラインに合わせたリファインが行われている。

大きさはMGという大型ブランドながらわずか15センチ程度の大きさである。これはHGUC νガンダムほぼ同じ大きさ。同じ小型MSであるMG ガンダムF91やMG クロスボーンガンダムX1よりもさらに小型のサイズとなっている。

MG ガンダムF91との比較
画像では分かりにくいが、わずかにF91よりも小さい
それにもかかわらず、さまざまなギミックが追加されているのが技術の進歩を感じさせる

アニメの世界では30年間の隔たりがあるだけあり、小型化の技術が相当進み変形機構まで組み込まれているということから、時代の流れを感じさせる作りとなっている。また、F91が発売されてから4年ほど経過しており4年間でこれだけ技術が進んだのかと感じさせる作りとなっている。

また別に付属しているヘキサ用のコアファイターと合体させればVガンダムヘキサが完成する。

Vガンダムヘキサ 前 Vガンダムヘキサ 後
頭部のデザインが違う指揮官用のVガンダムヘキサ
通信機能がより強化されている

Vガンダムヘキサの状態ではガンダムの象徴であるV字アンテナが廃されたデザインとなる。Gジェネレーションなどのゲームではリーダー機に設定するとこの状態になるが、劇中後半に出てきたシュラク隊のVガンダムはすべてこのデザインとなっている。耳のブレードアンテナの黒い部分も別パーツで色分けされており、シールを貼ったり塗装したりすることなく完全に色分けを再現している。

Vガンダムとヘキサの標準装備としてビームライフルが1丁ととビームサーベルが2本付属している。

ビームライフル

ビームサーベルは下腕部のハッチに収納することが可能になっている

ビームサーベルの収納
こんなところにビームサーベルが収納されています
ロールオーバーで画像が変わります

また、ビームサーベルの刃は劇中で使用された扇型にビームを展開させたものも付属している。

扇型ビームサーベル
サーベルの刃の形状を調整することで扇型にもなり、防御に転用することができる
サーベルというよりビームハリセンみたい


さらに、肘の赤い部分を前方に移動させれば、ビームシールドを取り付けることができる。ビームシールドは赤い肘パーツの蓋の部分を一度取り外して挟み込むように取り付ける。

ビームシールドの展開
ロールオーバーで画像が変わります

ビームシールド
毎度おなじみPETで再現されたビームシールド
スパークの表現が追加され、ラメ加工で角度によっては虹色に光ります

ROBOT魂でもMGでもビームシールドにはグラデーション塗装が施されたPETを使うことが定番となったが、それだけでは芸がないということで今回はラメ加工が追加され虹色に光るようになっている。また、ビームの演出をより派手にするためにスパークの表現が追加されているのがポイントが高い。

また、機首が収納されるギミックを利用しコクピットの展開も劇中通りに再現されている。胸の赤いパーツの部分にわずかな隙間がありそこに爪を引っ掛ければ簡単にコクピットハッチの展開ができるようになっている。

コクピットハッチの展開
ロールオーバーで画像が変わります

キットの総評としては小さいがゆえにぶち当たる難点がいくつか見られるものの、小型可変MS第一弾としては申し分のないできである。Vガンダムにはバリエーション機としてオーバーハングキャノンを装備したVダッシュガンダムが存在しているのでこれもそのうち出そうな感じである。また、ROBOT魂では変形しないが可動範囲の広いV2アサルトバスターガンダムが3月に発売される。これは、武装を取り外して通常のV2ガンダムにもなるので非常にお得なセットとなっている。Vガンダムの技術をV2ガンダムでも踏襲しているのでそれをフィードバックした変形可能なV2ガンダムをMGでも早く出してほしい所存である。

白いモビルスーツ
変形合体機構をほぼ完全に再現されたMG Vガンダムの特性を生かし、今回は作品第1話後半のVガンダム初登場シーンの劇中再現を行おう。

ファイターをマーベット以上に上手く操縦し、ウッソはリガ・ミリティアと合流した。リガ・ミリティアは各地に秘密裏にMS生産工場を作っており、そこで新型MSの量産を行っていた。空爆が行われたラゲーンの近くにその工場の一つがあり、そこでMSのパーツを受領することになっていたのである。しかし、その工場のメンバーは、工場の位置を知られないためにラゲーンで交戦し、全滅してしまったのである。

しかし、偵察に出ていたクロノクルがラゲーン周辺で工場跡を発見。それを怪しんだ彼は、工場跡地周辺に爆撃を開始した。手傷を負っているマーベットの代わりに、ウッソはファイターに乗り込み迎撃を始めた。

迎撃に出たコアファイター
クロノクル「どこから出てきたのだ、あの小型機は!」

ウッソ「逃げるな、こいつ!」

ファイターに装備されたバルカン砲でウッソはゾロに攻撃を加えたが、すぐに弾切れになってしまう。クロノクルは、これ見よがしにゾロに装備された対地ミサイルでファイターを攻撃する。苦戦するウッソを助けるためカテジナとマーベットは隠しカタパルトからハンガーを射出した。射出するタイミングが少しばかり早く、ハンガーはファイターの正面を突っ切った。

コアファイターの前をハンガーが突っ切る図
マーベット「早すぎるわ!そんな事言わないわよ!!」

ウッソ「え・・・?うわああ!カミオンに乗っていたやつ?」

突然のパーツ射出に驚くウッソに、リーダー格であるオイ=ニュング伯爵から射出されたパーツと軸合わせを行うよう通信が送られてきた。ウッソは戸惑いながらも、指示通りに移動軸を射出されたハンガーと行いドッキングさせた。

トップファイターに合体する図
ウッソ「ドッキングしたの?」
ロールオーバーで画像が変わります

続いて、ブーツとドッキングしようとしたが、MS形態に変形したゾロに射出されたばかりのブーツを撃墜されてしまう。

撃墜されるブーツ
ウッソ「やられた!?」

マーベットは、追加のブーツを射出するよう指示を出した。ウッソは、トップファイターでゾロに応戦するが、火力は上がったものの運動性能が落ちてしまったため尚も苦戦を強いられていた。そこに新たなブーツが射出された!ブーツが射出された事を確認したウッソは、ブーツと移動軸を合わせトップファイターを変形させた。

トップファイターの後ろを飛行するブーツ
マーベット「ブーツは真後ろよ、ウッソ!」

ウッソ「了解!」

トップファイターの変形
ウッソ「Vモード、軸合わせ・・・。」
ロールオーバーで画像が変わります

ブーツの変形
ロールオーバーで画像が変わります

ドッキング!
ロールオーバーで画像が変わります

Vガンダム完成!
ウッソ「よし!」

3つのパーツがドッキングし、一つの白いMSとなった。その白い姿を見たクロノクルは驚きの声を上げる。

Vガンダムに驚くクロノクル
クロノクル「白いMSに見えたが・・・。し・・・白い奴だと!?

自身の発した言葉に一人で驚くクロノクル。それもそのはず、彼の見たMSは反抗の象徴である伝説のMS、「ガンダム」そのものだったからである。クロノクルはゾロを地上に下ろし、ガンダムにビームサーベルによる白兵戦を挑んだ。ウッソもビームライフルとビームサーベルを両方構え、体験したことのない白兵戦に臨んだ。

サーベルとライフルを構えるVガンダム
ウッソ「ビームサーベルだと!?白兵戦という奴だって僕は・・・僕には出来るはずなんだ!」

Vガンダムは、ビームライフルを蹴られながらもゾロの剣戟を受け止めた。更に、ゾロの土偶状の頭部を蹴り上げた。

蹴りを繰り出すVガンダム
ウッソ「このぉ!ネコの目かキツネ目なんか!!

頭部が潰れたことによりセンサーが破壊されたため、クロノクルはゾロの上半身を変形させその場から逃げ去っていった。敵を撃退したものの、生死を賭けた戦いを繰り広げたウッソは息を切らしながらVガンダムを降下させた。

Vガンダムを降下させるウッソ
ウッソ「ハアハアハア・・・。何で生きているんだ、僕は・・・?」

Vガンダムの初の戦果にリガ・ミリティアのメンバーは歓喜だった。ウッソも、自分が生還したことに喜びの声を上げた。そんな彼の姿を、シャクティは悲しそうな表情で見つめるのだった・・・。

かくして、ここにザンスカール帝国とリガ・ミリティアの壮絶な戦いの火蓋が切って落とされ、ウッソ=エヴィンとシャクティ=カリンは数奇で過酷な運命に巻き込まれていくのだった。

すさんだ心に、武器は危険なんです!(もどる)