HGUC クシャトリヤ

バンダイ HGUCシリーズ

定価:4725円(税込)

HGUC クシャトリヤ
袖付きのニュータイプ専用MSがHGUC化

人はね・・・人間はね・・・、自分が12人もいるのが不愉快なのよ!
『機動戦士 ガンダムUC』は、シャアの反乱から3年後の世界を描いている作品であるが、過去のガンダムシリーズに登場したMSやキャラクターの設定を引き継いで作品制作にあたっている。特にひいきにされているのは、新訳Ζガンダムで黒歴史にされかけている『機動戦士 ガンダムΖΖ』である。

この作品で登場するロンド・ベルの戦艦はΖΖで登場したネェル・アーガマであるし、OVAではドライセンカプールといったこの時代にネオ・ジオンガ使用していたMSが多数登場している。これは、富野監督が新訳のΖΖを作るつもりは当面ないという発言から、黒歴史化しそうだったところを原作の福井晴敏氏がUCの作品に優先的に設定やMSを取り入れたのだった。

今回紹介するネオ・ジオンのニュータイプ専用MSであるクシャトリヤもΖΖ作品に登場したMSの流れをくむMSである。ΖΖの時代のMSは、高出力・大型化が進み40メートルの巨体を誇るMSも登場した。このクシャトリヤは、第一次ネオ・ジオン抗争の最終決戦時に投入されたクイン・マンサの後継機である。

クイン・マンサは、ティターンズが開発したサイコガンダムMk-Uのデータを使用して開発されたニュータイプ専用MSである。サイコガンダムと同じく大型メガ粒子砲を多数装備し、アクシズ時代に開発したキュベレイが装備していたファンネルを装備した巨大MSである。劇中ではかなりの強敵として描かれており、ガンダムチームに配備されていたガンダムMk-UΖガンダムを戦闘不能にまで追い込んだ強力なMSであった。

しかし、このクイン・マンサはサイコガンダムに並ぶ巨体を誇っていたたためコストと整備性という面では扱いにくい機体であった。そこで、シャアの反乱時に開発された新素材であるサイコフレームを機体に使用して小型化に成功したのがこのクシャトリヤというわけである。

このクシャトリヤに搭乗するマリーダ=クルスは、第一次ネオ・ジオン抗争時に投入されたニュータイプ部隊の生き残りである。ΖΖでは、今の萌えキャラの通じるエルピー=プルという少女が登場する。10歳の少女であるこのプルは、お風呂が大好きでジュドーの前で臆面もなくすっぽんぽんになったり、プロペラ飛行機をまねて「プルプルプルプル〜」と駆けまわったりするトラブルメーカーなキャラがいたのだが、マリーダはそのプルの12番目のクローンである。

プルのクローンは第一次ネオ・ジオン抗争時に量産型キュベレイで出撃し、キャラ=スーン駆るゲーマルクと交戦した末、全機撃墜されたはずだったが、彼女は密かにその生き残った。

しかし、折角生きながらえた彼女の人生は福井氏のダークな作風を受けまくり凄惨なものとなった。。戦争に生き残ったマリーダことプルトゥエルブは、娼館に売りに出され、ジンネマンに助け出されるまでは客の慰み物にされていたのだった。客の倒錯プレイと堕胎を繰り返した末、彼女の女性としての機能は破壊されていた。あの天心爛漫だったプルが・・・と考えさせられてしまうのがこの作品の面白いところである。

あなたは、私の一等激しいところを持った人でしょ?(by クィン・マンサ)
クイン・マンサには同じくプルのクローンであるプルツーが搭乗していたが、その後継機であるクシャトリヤに同じくプルのクローンのマリーダが乗るというのは運命のいたずらである。『UC』の時代でもニュータイプ専用MSというのは稀少で強力なMSであり、クシャトリヤは当時の最新量産機であるジェガンもたやすく撃破できるほどのハイスペック機に仕上がっている。

HGUC クシャトリヤ 前 HGUC クシャトリヤ 後
バインダーの形やメガ粒子砲の位置がクイン・マンサを彷彿とさせるクシャトリヤ
小型化されているが、それでも大型の機体に仕上がっている

第一次ネオ・ジオン抗争時の試作品を流用したため、外装は当時のMSのそれを踏襲している。しかし、コクピット周りにはシャアの反乱時に開発されたサイコフレームが搭載されており、そのため当時の機体よりも小型化されている。クイン・マンサの性能をそのままに小型化した機体だが、それでも近い時代のMSと比べると大型な機体となっている。

リ・ガズィと比較 サザビーと比較
UC0093年時の大型MSであるサザビー(25メートル)とほぼ同じ大きさ
バインダーを含めるとさらに威圧感が増す

1/144サイズであるにもかかわらず、並みのMGとほぼ同じ大きさに仕上がっている。そのためか、袖付きのMSの中でこのクシャトリヤだけはROBOT魂で発売されず、プラモデルでの発売のみとなっている。

大型キットであるにも関わらず、エングレービング以外の箇所の色分けは細かくされており、メガ粒子砲やスラスターの内部を塗れば本体の色はほぼ再現することができる。ただし、袖付きMSの特徴であるエングレービングはホイルシールでの再現となっているため、ここも白で塗装する必要がある。黒い装甲の上に色が乗りにくい白を塗らなければならないので、ROBOT魂に慣れ切ってしまった筆者にとっては辛い部分である。

胸周りのメガ粒子砲や脚部やバインダーのデザインはクイン・マンサと似ており、クシャトリヤが後継機であるということが一目でわかるようになっている。しかし、頭部の造形はクイン・マンサというよりも一年戦争時のゲルググと似ている。クイン・マンサ時代にはゴーグル状だったカメラ部分もモノアイに変化している。このモノアイは顎の下のレバーを動かすことで可動する。

頭部のアップ

可動範囲も大型であるにもかかわらず広く取られている。特にデザイン上動かしにくそうな肩パーツも内部で分割して水平に上げることが可能である。

肩を水平に上げたところ
バインダーと肩の接続パーツにジョイントを仕込むことで腕を水平にすることが可能

本体側にはメガ粒子砲が備え付けられており、クイン・マンサが誇った火力をほぼ再現している。本体に武装が取り付けられているため、手持ちの武器は腕部に備え付けられたビームサーベル2本のみである。

ビームサーベル
手持ち武器はビームサーベル二本のみ
ただし、オプション装備としてビームマシンガンを装備することも想定されている

同じくクイン・マンサが装備していたファンネルやIフィールド発生は、肩からのびる大型の4枚のバインダーにすべて収納されている。このバインダーは様々な機能が搭載されおり、バインダーの裏側にはAMBACの役割を果たすためのバーニア3機と、ファンネルが6機搭載されている。バインダーは計4枚あるので、クシャトリヤ1機で最大24機のファンネルを放出することができるわけである。

バインダーの裏側
1枚でジェガンとほぼ同じ大きさの大型バインダー
その裏には6機のファンネルと隠し腕が搭載されている

このバインダーに搭載されたファンネルは一体成型ではなく、一つ一つ取り外すことができる。クシャトリヤの放出するファンネルは、サザビーやヤクト・ドーガが使っていた円筒型ではなく、クイン・マンサやキュベレイに搭載されたファンネルと同じ漏斗状になっている。

ファンネル
ファンネルの名の通り漏斗の形をしているビット
キュベレイなどにも流用できるかも

さらに、このバインダーには隠し腕が1本ずつ備え付けられており、中にはビームサーベルが仕込まれている。これはグリプス戦役時のジ・Oアドバンスド・へイズルの流れをくんだ武装である。この隠し腕はABSを使用したアームパーツにより差し替えなしで展開させることが可能となっている。

隠し腕の展開
折りたたまれたフレームパーツを引き延ばし、腕パーツをスライドさせる
ロールオーバーで画像が変わります

これだけのギミックが仕込まれているため、バインダーは1機だけでもジェガンに匹敵する大きさである。これだけの大きいため、重さも並大抵のものではないがこのキットではしっかりとバインダーを固定させたい位置に固定させることができる。これは粘着性の高いABSを使用しているということも挙げられるが、各部にロック機構が仕込まれている賜物である。

まず、バインダーを支えるアーム部分に角を設けて引っ掛けることでバインダーの重さに負けてヘタれる事を防いでいる。

アームのロック機構
引き延ばしたいときは角と角をはずす
簡単な仕組みだが、折りたたんだ状態を十分維持できる

また、バインダーの基部にはロック機構が設けられており、このロック部分をスライドさせることでバインダーの基部関節をロックさせることが可能である。これにより、バインダーを展開させてもバインダーの重さに負けずに垂れ下がってくることはない。

バインダー基部のロック機構

このバインダーの基部のおかげで、別売りのアクションスタンドと併用することにより、収納状態から飛行形態への変形も再現することができる。

収納形態から飛行形態への変形
マリーダ「マリーダ=クルス、クシャトリヤ出る!」
ロールオーバーで画像が変わります

このように、単体でのボリュームはHGUCであるにもかかわらずMG並みにあるので組み応えのあるキットに仕上がっている。OVA第一話ではスタークジェガンと激闘を繰り広げたので、ぜひスタークジェガンと合わせて飾りたいものである。

パラオ攻略戦
クシャトリヤによって拿捕されたユニコーンガンダムは、袖付きが拠点としている資源衛星、パラオに連れ去られてしまった。袖付きによって拘束されたバナージは、そこで首領であるフル=フロンタルと対談したり、クシャトリヤのパイロットであるマリーダやギルボア一家と交流を持ち、袖付きの組織の内面を垣間見るのであった。

一方、袖付きに手玉に取られたネェル・アーガマは、エコーズの増援部隊と共同作戦を立案し、パラオからユニコーンガンダムを奪還する計画を立案した。エコーズの特殊工作部隊がパラオに忍び込み爆薬を仕掛け、さらにネェル・アーガマに搭載されたハイメガ粒子砲を併用することで軍港を閉鎖、混乱に乗じてバナージとユニコーンを奪還する作戦を実行する。

工作員によって合流地点の記してあるメモを受け取ったバナージは、民間人も住んでいるパラオが戦火に飲まれることを心配しつつ合流地点へと急いだ。道中にユニコーンガンダムを見つけたバナージは、ユニコーンに乗り込み強襲してきた連邦軍との合流を図ろうとした。

攻防戦のさなか、バナージはリディ=マーセナスデルタプラスと遭遇した。デルタプラスのコクピット内に同乗していたオードリーはバナージに地球へ赴いて、連邦軍の高官である父の下へと向かい、事の全容を伝えることを伝えた。バナージはリディにオードリーのことを任せ、ネェル・アーガマへ向かった。

そんなバナージにマリーダの駆るクシャトリヤが三度現れた。クシャトリヤはバインダーからファンネルを放出し、同時にビームサーベルを引き抜いてユニコーンガンダムに切りかかってきた。

ファンネルを放出するクシャトリヤ
バナージ「四枚羽根か!?」
ロールオーバーで画像が変わります

剣を交える中で、バナージはクシャトリヤのパイロットがマリーダであるということに気付いた。一方、La+があるコクピットだけでも回収したいマリーダは、クシャトリヤの隠し腕でユニコーンを捕まえ、投降するよう迫った。そんな彼女にバナージは、自分とユニコーンが戻れば戦闘が止まることを伝えるが、マリーダは頑としてバナージの話を聞かない。話がかみ合わないことにバナージは怒りを感じ、それに呼応してユニコーンのNT-Dが発動した。

NT-D発動
バナージ「この分からず屋ー!!!!

マリーダ「・・・ガンダム!」
ロールオーバーで画像が変わります

ファンネルと本体の拡散メガ粒子砲でユニコーンガンダムに攻撃をかけたマリーダは、ユニコーンが急場しのぎで保持していたクシャトリヤ専用のビームガトリングガンを破壊し、ユニコーンに手傷を負わせることに成功した。肩の装甲を軽く損傷したユニコーンは、サイコフィールドを展開した。

サイコフィールドを展開するユニコーン

サイコフィールド内に取りこまれてしまったファンネルは攻撃を中止した。マリーダは再度ファンネルに攻撃命令を下すが、ファンネルは応答しない。それどころか、マリーダの放ったファンネルのモニター上の表示がどんどん敵性を示す表示に変わっていき、逆にユニコーンが指示を出すかの如くマニピュレーターを握るとファンネルは彼女の意志に反してクシャトリヤに攻撃をしだした。

ファンネルをジャックされたクシャトリヤ
マリーダ「私がわからないのか!?」
ロールオーバーで画像が変わります

バインダーを折りたたみ防御形態を取ったマリーダは事態を飲み込めず、混乱しているようであった。

ファンネルを乗っ取ったユニコーン
マリーダ「お前は・・・誰だ・・・!?」

クシャトリヤとユニコーンの戦いを、パラオのモニター室からフロンタルが静観をしていた。マリーダはユニコーンガンダムの性能を引き出すために意図的に孤立させられ、NT-Dの発動を促すためのいわば噛ませ犬として扱われていた。彼女を保護したジンネマンは、そんなフロンタルに憤りを感じながら、戦いを静観していた。

ユニコーンガンダムは拿捕されている間にコクピットにサイコモニターが搭載され、NT-Dが発動されれば袖付きがそのコクピット状況をモニターできるように細工を施されていた。これにより、袖付きはLa+が表示する次の座標を知ることができるようになったため、バナージとユニコーンを泳がせることにしたのである。

ファンネルのコントロールを得たユニコーンはビームサーベルを引き抜くと、圧倒的な機動力でクシャトリヤに近づきクシャトリヤに切りかかった。

ビームサーベルを引き抜くユニコーン
ロールオーバーで画像が変わります

クシャトリヤのバインダーを破壊するユニコーンガンダム
ロールオーバーで画像が変わります

ユニコーンガンダムは、防御力に長けているはずのクシャトリヤのバインダーを軽々と切断した。マリーダもクシャトリヤにビームサーベルを抜かせるが、ユニコーンの圧倒的な機動力になすすべもなく機体を切り刻まれてしまう。

ビームサーベルを抜くクシャトリヤ
マリーダ「くっ・・・!」

切りかかるユニコーンガンダム
ロールオーバーで画像が変わります

この圧倒的な戦闘力はバナージの意志によるものではなく、NT-Dの力によるものだった。NT-Dがニュータイプを感知すると、システムが発動し、ユニコーンの「ニュータイプを駆逐する」能力が解放される。この時、パイロットは受信した感応波を敵意に変換する処理装置と化してしまい、システムに取り込まれているのであった。つまり、この容赦のない総攻撃はバナージの意志によるものではなく、システムの力によるものなのだった。

ユニコーンガンダムは、クシャトリヤのコクピットハッチの装甲をはぎ取り、ファンネルをクシャトリヤ本体に攻撃させながら特攻させた。

装甲をはぎ取るユニコーン
ロールオーバーで画像が変わります

その激しい衝撃はコクピットの中に響き、パイロットを保護するエアバッグを破り、マリーダはモニターに激しく叩きつけられてしまう。

沈黙したクシャトリヤにユニコーンは腕に備え付けられたビームトンファーを展開し、止めを刺すべくクシャトリヤのコクピットめがけてサーベルを突き刺そうと突撃をかけた。

ビームトンファーを展開するユニコーン
ロールオーバーで画像が変わります

機体を突撃させるユニコーン

バナージが機体を突撃させたその時、クシャトリヤのコクピットから閃光が走り、彼女の思念がユニコーンのコクピットにいたバナージに伝わって来た。彼女の思念を受信したバナージは彼女の過去を見る。

――第一次ネオ・ジオン抗争時の主人を失い、途方に暮れたこと、娼館に売りに出されたこと、妊娠した子どもを堕胎したこと、そしてジンネマンに助け出されたこと。――

彼女の過去を知ったバナージは攻撃を取りやめた。

攻撃を取りやめたユニコーン
バナージ「こんな・・・こんなの悲しすぎます」

マリーダ「優しさだけでは人は救えない。罪も穢れも消せないから・・・。」

それでも・・・
バナージ「それでも・・・」

マリーダ「それでも・・・。」

マリーダとの精神邂逅を果たしたバナージは、大破したクシャトリヤを連れてネェル・アーガマに帰還、パラオにおける攻防戦はここに終結したのであった・・・。

たとえどんな現実を突きつけられようと、「それでも」と言い続ける。それがお前の根っこ。(ROBOT魂 ユニコーンガンダムのコラムへ)

任務完了・・・。これより帰投する。(もどる)