HGUC Ζガンダム

バンダイ1/144 HGUCシリーズ

1680円(税込み)

牡牛座黄金聖闘士HUYU


宇宙世紀初の可変MS
Ζ(ゼータ)の鼓動・・・。

恋人たち
ヒッコリー基地でクワトロ・バジーナ大尉カツ・コバヤシを宇宙に上げたアウムドラはホンコンシティに停泊していた。
カミーユ・ビダンはホンコンシティで地球連邦軍のムラサメ研究所で作られた強化人間の少女フォウ・ムラサメと出会う。お互いに惹かれ合う二人だったが、エゥーゴと地球連邦軍という敵対する組織に属する二人は別れを余儀なくされる。最後には彼女の駆るニュータイプ専用巨大MAサイコガンダム(注1)の、命懸けの特攻により大気圏脱出用のロケットを手に入れ、カミーユは宇宙へと上がったが、フォウはその場で射殺されてしまった。
宇宙へ上がったカミーユを待っていたのはさらに激しくなったエゥーゴとティターンズの戦闘であった。 ジェリド・メサの駆る新型可変MSガブスレイに対しガンダムMk-Uで出撃するカミーユだったが、性能差からか次第に追い込まれてしまう。絶体絶命のピンチかと思われたその瞬間、宇宙の闇の彼方から飛来する機影があった。
エゥーゴが進めていた可変MS開発計画『Ζプロジェクト』。その完成形がカミーユの目の前を飛ぶ機体の正体だった。
その機体の名はΖ(ゼータ)ガンダムと言った。
Ζガンダムには大気圏突入に始まる地上での数々の激戦を潜り抜け、パイロットとして成長したカミーユが搭乗する事になる。(注2)
注1:地球連邦軍の開発したニュータイプ専用の機体。サイコミュシステムで動くその機体は全長40メートルと、通常の機体のそれを遥かに凌ぐ。

注2:カミーユがこれまで搭乗していたガンダムMk-Uにはエマ・シーンが搭乗する事になる。

可変MAと可変MSの違いについて
今回はΖガンダムのレビューに入る前にまず、可変モビルアーマー(MA)と可変モビルスーツ(MS)の違いについて言及しておこう。
まず、可変MAというのはMA形態での移動・戦闘が重視されている機体で、MS形態への変形は格闘戦などの際に行う程度である。MAがMSに変形する機体なのである。 また、変形するために大型化してしまっているのも特徴の一つと捉えることができよう。
作中ではアッシマーギャプランがこれにあたる。
逆に可変MSはMA形態に変形するMSの事で、運用方法はあくまでもMS形態が中心となっている。これにより、より自由度の高い作戦行動が可能となっている。 従来のMSと同等の大きさに変形機能を盛り込む事に成功しているのも特徴の一つである。
Ζガンダムガブスレイがこれにあたる。

なお、各陣営において可変MSが運用されていたこの時代、ΖガンダムのMA形態は他とは一線を画す性能を持たされていたので(注3)、便宜上ウェイブライダー(WR)形態と呼ばれている。

また、『Ζガンダムが宇宙世紀初の可変MSである』ということについて、「ガブスレイのほうが先に登場したのになんでやねん」と思う方もおられるだろうが、これはΖガンダムの方がわずかに先んじて完成したからだと言われている。
注3:ガブスレイなどのMA形態はMAとして格闘戦などを行えるように開発されているのに対し、ΖガンダムのWR形態は大気圏突入、大気圏内での飛行を念頭においている。
不完全変形Ζガンダム
牡牛座黄金聖闘士HUYU(「おのれバンダイ!! 6月発売予定のHGUC 陸戦型ガンダムはウェポンコンテナ+長射程ライフルを付属した上で1500円(税別)だと!? 何て良心的なんだ!! なら買うしかないじゃないか!!」と、大学構内で雑誌を読みながら叫んでしまった超ド阿呆 以下HUYU)「えー、今回はHGUCキットレビューシリーズ第4弾ってな訳でHGUC Ζガンダムをお送りいたします。」

電光勇者超特急ヒカリガイン(「『コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜』に登場するメカ、ランスロットがキット化するんだってな。個人的には紅蓮弐式をキット化してくれた方が嬉しいんだが。バンダイさん、わかってるよな?」と、バンダイに不快な手紙を送りつけようと企む下級イマジン。以下ヒカリ)「なんでマスターグレード(MG)じゃないんだ? Ζガンダムのレビューを書くんだったらVer2,0とかあるだろ。値段が高いから手が出し辛かったのか?

HUYU「そうだよ、その通りだよ!! 悪いかよ!!」

ヒカリ「なんでキレる?」

HUYU「でもたしかにΖガンダムとかの可変MSってMGとかになると他のキットよりも高くなるんだよ。」

ヒカリ「やっぱり変形させるからパーツ数が多くなるんだよな。」

HUYU「そうだねえ。その点HGUCは差し替え変形になっているからパーツ数の削減に成功している分、お安くなっているわけだ。」

ヒカリ良く言えば経済的悪く言えば手抜きだと。」

HUYU「言うな、言うな。とりあえずプロポーションから見ていこうか。」

Ζガンダム 前 Ζガンダム 後
完全変形を犠牲にした分、お安くなっております。

ヒカリ「肩が大きめに作っってあって、バランスは良いんじゃないか?」

HUYU「MGとかは変形させる手前、肩が小さめになるんだよ。HGUCは差し替え変形だから設定画に準じたプロポーションを追求できるわけだ。」

ヒカリ「なるほどねえ。可動とかはどうなってんの? 肩アーマーの形状からしてあんまり動きそうに見えないんだが?」

HUYU「肩アーマー自体も個々のパーツが可動するから、水平に開くようにはなってるぞ。」

水平に上げてみました。
それでもやっぱりこれが限界
HGストフリと同じ四十肩持ちのキットです。

ヒカリ「これじゃあ四十肩ですな。どうせ肘だって90度しか曲がらんのだろうし。」

HUYU「言わんといてあげて。この仕組みのおかげで肩アーマーは合わせ目が目立たない構造になってるんだから。
それに脚部の可動は凄いんだぞ。変形させる都合から二重間接になってるんだが、その結果180度近くまで曲げれるようになってるんだ。

ヒカリ「ほほう。これはなかなかすごいね。」

かなり動きます
正座だってできそうなくらい曲がる膝

HUYU「あと、バックパックの ウイングは展開できるし、中央のスタビライザーも動くぞ。」

バインダー&スタビライザー
しっかり展開できる

ヒカリ「いや、それは差し替えでも変形する以上は必須だろ。」

HUYU「キットではスタビライザーの中身が空洞になっていたので、パテで埋め、その上から波板状のパーツを貼ることでダクトっぽくしてみたぞ。」

ヒカリ「バインダーの各部に接着してあるダクト状のパーツはスタビライザーとイメージを統一するための物か。」

HUYU「まあね。次は付属品についてみていこうか。」

ヒカリ「ビームライフルとハイパー・メガ・ランチャー、ビームサーベルと一体成型の手首にシールド、あと、これなんだ?」

ゼータガンダム武器セット
武器も必要な物が揃っており、好印象。

HUYU「設定によると腕に内臓されているグレネードランチャーの予備カートリッジだな。でもまあグレネードランチャーの発射パーツが付いているわけでもないので、ポリキャップの穴隠しパーツって思っておけばいいんじゃない?」

ヒカリ「そうか。何か微妙だなあ。」

HUYU「ビームライフルはΖガンダムの1/144スケールキットでは初めて銃身の伸縮機構を再現しているんだ。(注4)その為に銃身が挟み込み式になっているので、カートリッジの部分以外の合わせ目は段落ち加工にしてみた。」

ビームライフルを分解してみました
片側のパーツからカートリッジ部分を切り取り、
合わせ目を消してから他の部分は段落ちにしている。

ヒカリ「ほほう。ビームサーベルのクリアパーツ化はもはや恒例だが、何か今回のは形が違うなあ」

HUYU「ああ、これね。いつもだったら他のHGUCのキットから流用してるんだが、今回はちょっと気分を変えてコトブキヤのスーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションのキットから流用してみたんだ。後、ビームライフルも銃剣のようにビームサーベルが出るから取り付けられるように改造したよ。」

銃剣ビームライフル
ビームライフルもビームサーベルになる

ヒカリ「別にどっちでも良いような・・・。そりゃそうと、ハイパー・メガ・ランチャーはでかいねえ。」

ハイパー・メガ・ランチャー
電撃ホビーマガジンなどの作例だったらグレーに塗装するのがセオリーみたいになってるが、
あえてアニメ版のカラーに忠実に塗ってみた

HUYU「ああ、俺の所有するキットの中では1番でかいんじゃない? 長さだったらクロスボーンガンダムX-1フルクロスに付属しているピ−コックスマッシャーにも負けてないんじゃないか? さらに伸びるし。」

ヒカリ「たしかにな。最後はシールドだな。ん? なんだこれ?」

HUYU「ああ、シールドが腕の可動に干渉するから、腕とシールドの間に補助パーツを付けてみたんだ。」

ヒカリ「それは大体判るんだが、このシールドの穴は何だ?」

HUYU「そっちのほうか。この穴はWR形態に変形した時にハイパー・メガ・ランチャーをマウントできるように空いてるんだ。また、HGUCのアッシマーやガブスレイに付属するスタンドの軸と径が同じなので、無改造で取り付ける事が可能になっている。

ヒカリ「ふーん。じゃ、お次はこのキット最大のガンとも言える変形ですな。

HUYU「ガンとか言うな。ま、実際に評価が分かれるポイントだから、しょうがないか。変形はこの専用のフレームに各パーツを取り付けて行うんだ。」

専用フレーム 表 専用フレーム 裏
ある人曰く画期的、ある人曰くただの手抜き


HUYU「このフレームパーツに背中のバインダーとスタビライザーと足と胴体アーマーと腰サイドアーマーとリアアーマーとシールドやビームライフルなどの武器類を取り付けるわけ」

変形に使うパーツ類
これだけのパーツをフレームに張り合わせます

ヒカリ「で、これが変形後と。」

WR形態
流石に差し替えなので、プロポーションだけはいい。

余剰パーツ
ただし、コレだけのパーツが余る。

HUYU「ハイパー・メガ・ランチャーの各部にランディングギアを取り付けれるようになっているので、装着しても立たせることができるぞ。」

ヒカリ「ほとんどスタンドみたいな扱いだな、この武器。まあ、しょうがないか。そろそろ総評と行こうか。」

HUYU「必要な武器はほぼ完璧に付属しているので問題は無いな。
それよりもこのキットを語る上で最大の焦点になるのはやはり『差し替え変形は是か非か』に絞られるだろうね。

ヒカリ「ほほう。確かになあ。」

HUYU「そりゃあやっぱり完全変形した方が遊び甲斐があって良いんだろうが、それをとると値段が跳ね上がる。
変形にこだわらないならMGではなくHGUCの方でも良いんじゃないか。と、思うね。かくいう自分も変形にはあまりこだわらないからねえ。やっぱHGUCの方かな。ちなみに、HGUCはそのままではスタンドには対応していないので注意。

ヒカリ「おおー、珍しくまともに終わったな。今回はオチ無しか?」

HUYU「そういえばオチとか何も考えてなかったな。じゃあ、『坊主が屏風に上手にジョーズの絵を描いた』とか言っとく? 途中で舌噛む方向で。」

ヒカリ「いやー・・・、ちょっと厳しいだろそれ。それよりさあ・・・。」

(以降、グダグダな感じで対談終了)
注4:Ζガンダムの1/144キットはコレまで3回発売されている。TV版の放送当時に発売されたいわゆる旧キットは、変形機構をオミットしていたのでライフルの伸縮も無し。続くHGキットでは差し替えで再現されていた。
宇宙を駆ける
エゥーゴとティターンズの武力衝突は、木星帰りのニュータイプパプテマス・シロッコや、ザビ家の忘れ形見ミネバ・ザビの宰相ハマーン・カーン率いるアクシズの介入により、さらに激しさを増してゆく。 エゥーゴの旗艦アーガマの艦長ブライト・ノアはティターンズより奪ったコロニーレーザーグリプス2の発射を決意する。コロニーレーザーを発射させまいと抵抗するティターンズとアクシズ。ここに一年戦争に匹敵する大規模な戦争グリプス戦役の幕が切って落とされた。

戦闘は苛烈を極め、敵味方双方で多くの命が散っていく。ガンダムMk-Uのパイロット、エマ=シーンも例外ではなかった。

エマ死亡
朽ち果てたMk-U

カミーユは戦いの連鎖に終止符を打つべく、この戦いの元凶となった男シロッコに対峙する。
シロッコは自身も強力なニュータイプであり、パイロットとしての技術も高い、まさに強敵であった。しかし、戦場で散り逝く命を感じ取り、Ζガンダムの性能をフルに発揮(注5)できるまでに成長したカミーユの敵ではなかった。 そしてカミーユは散っていった人々の意志の力を結集し、シロッコに最後の戦いを挑む。

Ζガンダム、最後の戦い
シロッコ「私の知らない武器が内蔵されているのか!?」

カミーユ「わかるまい、戦争を遊びにしているシロッコには。この、俺の体を通して出る力が!!」

シロッコ「体を通して出る力・・・?そんなものがMSを倒せるものか!!」

これまで出会い散っていったカミーユゆかりの者たちの思念がカミーユの下に集結した。カミーユのΖガンダムはシロッコの駆る重MSジ・OにWR形態で突撃。シロッコに止めを刺す。

WRで突撃するカミーユ
フォウ「カミーユはその力を表現してくれるマシーンに乗っている・・・。」

ロザミア「Ζガンダムにね!!」

シロッコ「女の声!?」
ロールオーバーで画像が変わります

取りこんだ思念により、シロッコの駆るジ・Oはコントロールを失い動けなくなってしまう。身動きの取れないジ・OのコクピットにWRの機首の先端が突き刺さった!!

特別出演アドバンスドへイズル
シロッコ「うおおおおおおおお!!!」

カミーユ「ここからいなくなれ!!

シロッコ「私だけが・・・死ぬわけがない・・・。貴様の心も一緒に連れていく・・・。カミーユ=ビダン・・・。」

カミーユ「シロッコ・・・。やったのか!?・・・!光が広がっていく・・・?」
隠し腕繋がりでジ・Oの代わりにアドバンスド・へイズルに体当たりしてみました。

しかし、シロッコは最後の力を振り絞り、カミーユに精神攻撃をかける。結果、カミーユは自我崩壊してしまう・・・。

自我崩壊を起こしたカミーユ
カミーユ「大きな星が点いたり消えたりしている・・・。彗星かな・・・?
違う・・・違うな・・・。彗星はもっとバーッッって動くもんな!」

ファ「ああ・・・。艦長・・・ブライト艦長、カミーユ=ビダンが・・・。聞こえますか、アーガマ!!」

その「点いたり消えたりする星」が、戦場の爆発の光であることをカミーユは全く判断することができなかった。さらに蒸し暑いからとコクピットを開けて宇宙空間に出ようとするカミーユは完全に精神に異常をきたしており、今で言うところの統合失調症状態になってしまったのである。その様子を見た幼馴染のファは思わず叫び、魂の抜け殻となってしまったカミーユとΖガンダムを乗機のメタスでアーガマへと運んで行ったのだった・・・。シャアはハマーンのキュベレイとの激戦の末行方不明となり、ニュータイプとして覚醒したカミーユを欠きグリプス戦役は幕を閉じた。

このあまりにもハッピーエンドとは言い難いラストは放送当時話題を呼び、一部のファンに受けたのだった。これは「アニメばっかり見ているとお前たちもこうなっちまうぞ!」という富野監督のメッセージだったのだが、そのメッセージを受け取れないファンもいたわけである。
注5:Mk-Uのパイロット、エマ・シーンはカミーユに「Ζは人の意思を吸い取り、自分の力にできる」と告げる。
この機能はΖガンダムのコックピット周辺に取り付けられたバイオ・センサーによってもたらされた副産物的なモノであると推定されるが、如何せんガンダム知識の薄い筆者にはこれ以上のことは判らない。

星の鼓動は愛
しかし、2006年に公開された劇場版Ζガンダムでは、新訳と言うだけあって別の展開が待っていた。大まかな流れはテレビ版と同じなのだが、結末が違うのである!

同じく、Ζガンダムの特攻を受けたジ・Oはシロッコの戦艦ジュピトリスと共に爆散。また、コロニーレーザーの発射によりティターンズ艦隊の大部分が消滅。アクシズ艦隊は撤退していった。

大まかな流れは同じだが、この時の細かいセリフ回しは大幅に変更されている。まず、テレビ版ではシロッコの存在自体を全否定していたカミーユだったが、劇場版ではやや穏やかにシロッコに諭すように語りかける。

シロッコを諭すように説教するカミーユ
カミーユ「あなたはいつも傍観者で、人をもてあそぶだけの人ではないですか!」

シロッコ「私にはそういう資格がある!」

カミーユ「その傲慢は人を家畜にすることだ!人を道具にして・・・。」

シロッコ「子どもが、ほざくか!!」

カミーユ「それは、一番人間が人間にやっちゃいけないことなんだ!」

このとき、カミーユはテレビ版と同じく精神を追いやられつつあった。その証拠に、MSのコクピット内とはいえ、宇宙空間で戦っている最中にノーマルスーツのバイザーを再び開いていることからもうかがえる。そしてテレビ版と同じくカミーユが巡り会い、散っていった者たちの思念がカミーユの下に集結する。しかし、その魂のやり取りもテレビ版とは異なり、他者を受け入れようとしないシロッコを憐れむような会話に変更されている。死者の思念を取り込んだΖガンダムは、テレビ版と同じくシロッコに特攻を仕掛ける。

Ζガンダム、最後の戦い
シロッコ「私の知らない新兵器か!?」

カミーユ「わかるまい!戦争を手段にしているシロッコには、この僕を通して出ている力が!!」

シロッコ「フン・・・力だと?」

カミーユ「そうだ!」

WRで突撃するカミーユ
フォウ「カミーユはその力を表現できるマシーンに乗っているんだよ!!」

カミーユ「うおおおおおおおおおおお!!」

シロッコ「ジ・O、なぜ動かん!?」
ロールオーバーで画像が変わります

特別出演アドバンスドへイズル
シロッコ「うおおおおおおおお!!!」

カミーユ「女たちの下に戻るんだ!!

シロッコ「女だと・・・?」

カミーユ「シロッコ・・・やってしまったの・・・?」

テレビ版と同じく、シロッコはカミーユに強烈な念を送ったことが映像の演出でうかがえる。しかしながら、特攻の衝撃とジ・Oの爆発でΖガンダムの機首だけが外れ、Ζガンダムはジ・Oから離れた。爆発で吹き飛ばされたWRは、ゆっくりと人型に変形していき、最後はバインダーの部分を強制的に取り外し、カミーユはシロッコの呪縛から脱したのであった!これにより、カミーユは自我崩壊することなく生還したのである。

テレビとは違うラスト
カミーユ「はああああ!動いた!!!
絶望的なラストからの脱出!

お互いの無事を確かめ合ったカミーユと幼なじみのファ・ユイリィは、宇宙空間を漂いながらお互いをしっかり抱き締めるのだった。

富野監督の希望的なラストは、男女が宇宙空間で抱き合う以外のネタはないのだろうか?ついでに言うと、カミーユの最後の台詞は、萌え萌え言ってるだけの二次元ヲタに対しての警告なのだろうか?さらに、ΖΖガンダムという作品を丸ごと黒歴史にする気か? 

・・・とか色々突っ込みどころがあるが、まあ、感動的だったのでよしとしよう。

このラストの意図は、鬱状態にあった富野監督の鬱からの脱出を描いているとのことである。テレビ版のカミーユは、理不尽に対して切れ、決して他者を受け入れようとはしなかった。しかし、劇場版のカミーユは目の前の理不尽を冷静に観察し、うまく受け流しながら自分の成長につなげていった。それがカミーユが自我を崩壊させることなく生還できた理由で、この事を富野監督は「半歩ずらして物を観察する」と表現している。

また、最後に心を通わせたのはニュータイプ能力で感応した「死者の思念」ではなく、自分の身近にいたファであった。これは富野監督を支え続けていた「妻」のメタファーである。これにより真のニュータイプとは「隣人を大切にする」人間のことであると監督は述懐している。

20年の歳月を経て、「殺しの富野」が鬱状態から脱出したその心境の変化が劇場版Ζガンダムでは読み取れる。テレビ版と劇場版を比較してみると富野監督の経験に基づいた「教訓」の奥深さに舌を巻くことになる。

ファだけは、幻覚でもなければ意識だけの存在でもない。こうやって抱く事ができるんだから・・・。(戻る) HGUC Ζガンダム