ROBOT魂
XM-X3 クロスボーンガンダムX3

バンダイ ROBOT魂 SIDE MSシリーズ

定価:3150円


ROBOT魂 XM-X3 クロスボーンガンダムX3
「クラックス・ドゥガチ! あんたがどう思っていようと・・・
俺のほうは、戦争をやってるつもりなどなぁーいっ!!

怒れるX3
ザビーネ・シャルの反乱の際、トビア・アロナクスは敵の総統クラックス・ドゥガチの娘、ベルナデット・ブリエット(本名:テテニス・ドゥガチ)を連れ戻そうとするかつての恩師にして木星帝国の工作員・カラスに敗北し、木星軍の母艦・ジュピトリス9へ捕虜として捕まった。

トビアは自分の公開処刑に用いられたクロスボーンガンダムX2を奪い、ベルナデットを伴って脱出を図る。しかし、彼女は「自分にしか父を止めることは出来ない。」と、ジュピトリスに残る事を決意。

「もし、私が怖い目に遭うことになったら・・・その時はもう一度、助けに来て!・・・信じてるよ。」

ベルナデットと口付けを交わしたトビアは、X2の機体を囮に、コアファイターで脱出していった。ジュピトリスを脱出したトビアは数日後、海賊軍の母艦・マザーバンガードに無事回収された。

マザーバンガードへの補給物資を持って、艦長、ベラ・ロナの従姉妹、シェリンドン・ロナが同型艦であるエオス・ニユクス号でやって来た。物資の中にはクロスボーンガンダムの3号機も含まれており、久方ぶりの補給に艦内は沸き立っていた。

しかし、シェリンドンは補給物資を渡すつもりはない、という。彼女が来た真の目的は、木星帝国との戦いをやめさせて、話し合いで解決させる為、だったのである。しかし、それは『ナイフを持って迫る強盗に命の尊さを説く』のと同じ事。到底容認できる話ではなかった。

シェリンドンの手引きにより、マザーバンガードは地球連邦軍に包囲され、また、これに協力するという形で、木星帝国軍も出撃してきた。

その頃、トビアはエオス・ニユクス号に軟禁されていた。海賊として捕まれば極刑は免れない。ベラはトビアだけは巻き込むまいと、彼の身柄をシェリンドンに預けたのであった。船室内に備え付けられたモニターで、海賊軍の掃討に木星軍が出撃した事、そして、ベルナデットがMAに乗って出撃するという事を知ったトビアは、彼女を救い出すために脱走を図るが、自身も高いニュータイプとしての力を持つシェリンドンにその行動を察知され、追い詰められてしまう。

『戦いを続ける愚か者はその内勝手に滅びるから、NTである我々はそんな連中の事は放っておけばよい。』という論調のシェリンドンに対し、トビアの怒りが爆発。「俺は人間だ! 人間のままで十分だ!」―NTであるならば仲間や大事な人を救い出す事ができない。自分の道を歩めぬのなら、人間のままでいい―と、言い残して彼女の元を去った。

X3発進!
「待っていろ、ベルナデット! 今・・・約束を守る!!」

クロスボーンガンダムX3を強奪したトビアは、『ベルナデットを助ける』―その約束を守る為、戦場へと飛び出していった。

「ベルナデットは返してもらう! いや、海賊らしく、いただいていく!!」―クラックス・ドゥガチのバイオ脳を搭載したMA・エレゴレラを苦戦の末に撃破し、ベルナデットを救出したトビアは、クロスボーンガンダムX1(キンケドゥ・ナウ)とX2改(ザビーネ・シャル)が激闘を繰り広げる、マザーバンガードへと機体を向かわせる。

駆けつけるX3
トビア「キンケドゥさんッ!!」

しかし、一歩間に合わず、X1は撃破され機体は大気圏へと墜落していく。トビアはベラが乗るコアファイターを伴い、マザーバンガードの大気圏突入用カプセルで地表へと降下していった・・・。

「俺は人間だ! 人間で十分だッ!!」
トビア・アロナクスは宇宙海賊クロスボーン・バンガード(海賊軍)と木星帝国軍の戦闘に巻き込まれ、帝国の陰謀の一端を知り、なりゆきから海賊軍に参加した少年である。キンケドゥをはじめ、歴戦の猛者揃いの海賊軍にあって新入りの少年という事で、読者視点の導入役として本作の第二の主人公と呼べるキャラである。

長谷川氏曰く、「初期のストーリー案ではキンケドゥ(シーブック)とベラ(セシリー)の活躍がもっと前面に押し出されたモノだったが、掲載誌が少年誌であるという事で、富野 由悠季監督にトビアのキャラ案を提出。主人公として採用された」「『ガンダム』シリーズでは主人公は最初からガンダムに乗っていなければならないとされているが、キンケドゥとの二枚看板になったおかげでトビアの成長物語を丁寧に描く事ができた」と、語っている。

スペースコロニーの開発事業に従事していた両親を事故で失いながらも、彼を引き取った叔父夫婦は実の息子と分け隔てなくトビアを愛していた為、暗い過去を感じさせない、明るく活発な、少年漫画の主人公のお手本のような性格に育つ。「肝っ玉が据わっており行動力に優れている。」とはキンケドゥの評価である。

物語の開始当初は素人同然であったトビアだが、木星軍との戦いに身を投じていく度、その才能を急速に開花させていき、たった数ヶ月の間に、キンケドゥらと行動をともにできるまでに成長した。しかし、自分の実力に過信や驕りは一切ない。が、周囲の人間はトビアの能力を高く評価しており、カラスは敵でありながら、自らの手で育てたいと考えているし、また、『第2次スーパーロボット大戦α』に参戦した際には、ネオ・ジオン総帥となったシャア・アズナブルをして、「彼には素晴らしい素質を感じる」と、言わしめている。あの赤い彗星に認められるとは、なかなかニヤリする演出ではないか。

アムロ・レイしかり、カミーユ・ビダンしかり、彼らのように急速に力に目覚めていく者を、ガンダムシリーズでは【ニュータイプ(NT)】と呼んできた。しかし、トビアは自分の事をNTだとは思ってはおらず、むしろ、その存在自体にも懐疑的なようである。

NTの能力だといわれる、先読みができたり、勘が鋭かったりする力を、トビアは《人が宇宙という環境に適応する為に身につけた力(つまり適応能力の一種)》だと捉えており、結局はNTと呼ばれる人も人間とは変わらないのだと、持論を展開している。ニュータイプ論の提唱者でもある富野監督を原作に迎えながら、なんとも大胆な事を仰るものである。

女性関係には超オクテで、ベルナデットとの関係は遅々として進まない。木星戦役の終結から(=2人が付き合いだしてから)3年経った宇宙世紀0136年時点でようやく「キスしそうな雰囲気になった」という。

最初はMSもまともに操縦できなかったヒヨッ子が物語の進行と共に成長し、ついにはガンダムという力を手にする! 下積み時代を経てパワーアップというパターンはガンダムでは滅多にないが、だからこそ、強く印象に残る。そのうえオクテと、親しみも持ちやすい。トビア・アロナクスをキャラクター的、人間的に超えるガンダム主人公は、キャラ萌え路線に走り気味な昨今では絶対に生まれないだろうと断言できる。

若き力! 目覚めるX3
X3は実験機として少数が生産されたクロスボーンガンダムの3号機で、ほぼ同一仕様であったX1、X2と違い、新機軸の武装を持たされた、実験機的な意味合いが強い機体である。

X3正面 X3背面
実験機という事で、ガンダムのお約束とも言える白・青・赤・黄のトリコロールカラー。
伝統ある、主役機っぽいカラーリング。

「プラモデルじゃあるまいし、そうヒョイヒョイと新型ができてたまるけぇ。」(byウモン サモン)と、いうわけで、武装が一部改修されている以外、機体性能に変化はなく、ビームサーベルやヒートダガーといった共通武装はそのまま装備されている

ビームサーベル ヒートダガー
X1、X2の時は微妙に足りないと言われていた、ビームサーベル&ヒートダガーが今回は2本ずつ付属。

アンテナの形状が変化しているが、デザインのみで、性能的には変化はないようである。

X3:頭部
今回はABS製の硬質アンテナも付属。フェイスオープン時の交換用頭部にセットされているので、付け替えておきました。
ツインアイをメタリックカラーで塗装。耳部分のバルカン砲口もしっかり再現。
ロールオーバーで画像が変わります

クロスボーンガンダムの脚部は、それ自体が大推力のスラスターとなっており、膝アーマーを展開すると、内部のメカニックが見れるようになっている。・・・と、いう説明を本来ならばX1の時にやるべきだったのだが、これまで忘れていた。

膝アーマーAfter
かと思ったら、何の手抜きか、内部の塗装が省かれていた!?(X1・X2の時はちゃんと塗装されていたのに・・・)
と、いうわけで、ここはモデラーらしく、自分で塗装してやりました。

胸部装甲は厚みを増すと同時に、新たにバルカン砲を二門追加。より接近戦を意識した構造となっている。

胸部バルカン砲
ドクロの目の中のバルカン砲口もしっかり再現。

最大の変更部分である腕部にはビームシールドに代わり、小型化されたI-フィールド発生装置を内蔵している。

I-フィールド:掌 I-フィールド:腕側
どこぞの『ヒゲガンダムのお兄さん』や、『ぼくのかんがえたさいきょうガンダム』
装備されているような、シャイニングフィンガーもどきの武装ではありません。

強力な磁場でビームを湾曲・無効化するI-フィールドはビーム兵器に対する有効な防御手段として古くは一年戦争の頃より研究されていた技術である。掌に発生器を搭載する事によって、ビームサーベルも白刃取りのような要領で止める事が可能となっており、格闘戦を意識したクロスボーンガンダムらしい配置となっている。

ビームに対して無敵の防御力を誇るI-フィールドであるが、小型化による弊害か連続して使用は出来ず、105秒の使用の後、120秒の冷却が必要となる。左右あわせて210秒の間はビームに対して完全に無敵だが、15秒間の、完全に無防備な隙ができるのである。これに対してトビアは、「試作機だからっていい加減なモンをーッ!」と、憤慨していた。

X3と同時に渡された装備として、ムラマサ・ブラスターが存在する。

ムラマサ・ブラスター:表 ムラマサブラスター:裏
「ドクロの目が黒く塗られていない」「裏側のドクロの周りが青く塗られていない」という手抜き仕様だったので、

ムラマサ・ブラスター:アフター
ここはモデラーの意地という事で、塗装してやりました。
コミックス表紙準拠という事で、濃い目のブルーで塗装しております。

武装の基本は、いかに最強の矛と盾を持たせるか、である。盾はX1やX2に装備されたABCマント、X3のI-フィールドがそれであり、矛として開発されたのが、このムラマサ・ブラスターという訳である。

海賊軍への支給品としてX3とともにエオス・ニユクス号に積まれていたが、トビアが機体を強奪同然で持ち出した際、「その辺にあった武器を適当にひっつかんできた」モノである為、安全装置が解除されておらず、初登場時には「(ビーム)サーベルだろうが! なんで光らねー!?」とぼやきながら、敵機体を殴るのに使われていた。・・・無茶苦茶である。

片側7本、計14本のサーベルを側面のヘリに搭載し、先端にはビームガンを内蔵。これで斬れぬ物はありえない。

サーベルモード ライフルモード
【ザンバスター】のように分離/合体を行わなくても使い回しが利く。
一見すると使い勝手が良さそうだが・・・?

先端のビームガンからはロングビームサーベルを発生させる事も可能である。

ロングビームサーベル@ ロングビームサーベルA
あまりに長いので、シャッターの範囲内に収まりません
・・・と、見せかけて、ビーム刃自体はX3本体と同程度の長さ。

最強の矛としての威力を遺憾なく発揮する武装だが、エネルギーを喰い過ぎるので長時間の使用には向かない。この設定の為か、『第2次α』内でもかなりのエネルギー(EN)消費量を誇る。X3はENを10段階改造して240。必殺技の【ムラマサ・ブラスター(連続)】は、EN消費が60もあり、補給等の対策無しでは最大4発しか使えない。X3は飛行可能ユニットなので、移動するにも毎回5ずつENを消費するうえに、他の武器でもENは消費するので、実際に使用できる回数はもっと減る。

ムラマサ・ブラスター・全部乗せ
ゲームではすっかりお馴染みとなった、出力全開モード。
・・・EN消費が多いだけですね。

これで攻撃力が高ければ、まだ文句はないのだが、残念ながらX1の【ビームザンバー(連続)】の方がENの消費量は多いながらも攻撃力は高く、しかも、効率よく雑魚散らしに使える武器も追加されるので、どう考えてもX3に勝ち目はないのであった・・・。

閑話休題

最強の矛はエネルギー消費が大きすぎて多用できず、最強の盾はそれ自体に使用制限がある。まさに矛盾(注1)なのであった・・・。

ムラマサ・ブラスターはグレネード弾の発射装置としては使えない為、最終決戦では作戦のためにムラマサを右腰にマウントした状態で、ザンバスターを装備して出撃した。

X3・フル装備状態
ゲームでも、ザンバスター使えたら良かったのに・・・あ、それじゃあムラマサの意味が無いか。

I-フィールドに15秒の隙ができる弱点といい、ムラマサ・ブラスターのEN消費が多すぎる弱点といい、実験機らしいトホホな弱点が満載だが、キンケドゥのような腕利きをパイロットとして想定していたので、開発中は特に問題にされなかったようである。パイロットとしてはまだまだ未熟なトビアが乗り込んでしまったのが、この機体の不幸・・・ということなのかも知れない。

3年後となる『鋼鉄の七人』の頃にはトビアもパイロットとして成長しているので、I-フィールド等もより効果的に使えるはず! と、いうワケで、ROBOT魂 クロスボーンガンダムのバリエーションとしては大本命である、クロスボーンガンダムX1 フルクロス の発売が、今から楽しみでしょうがない、のだが、今のところ(2010年6月現在)何のアナウンスも無いが、いつ発売されるんでしょうねぇ〜?

注1『矛盾』:とある商人が、「この矛は最強の矛、貫けぬ物は何もない!」と、言い、また、「この盾は最強の盾、防げぬ物は何も無い!」と、言って武器を売っていると、「じゃあ、最強の矛で最強の盾を突いたらどうなる?」と質問され、商人は困った挙句答える事ができなかった。と、いう中国の故事が元となっている言葉。物事の辻褄があっていないことを指す。
敵意という名の隣人
海賊の掃討を餌に、地球圏へとまんまと近づく事に成功した木星帝国軍はその本性を顕わにし、地球連邦への総攻撃が開始された。何の躊躇もなく核ミサイルを使う相手に、連邦軍は手も足も出ないといった有様であった。

水も、酸素も、食料も・・・すべて自分たちで生み出してきた木星人ジュピトリアンに、地球など必要はない。ドゥガチは地球そのものを核で焼き尽くそうと考えていた!

地球に降りたトビア達は、3機のアンチ・クロスボーンガンダムMSを駆る死の旋風デス・ゲイルズ隊の襲撃を受ける。X3で応戦するトビアであったが、リーダーのギリを倒しきれず、窮地に立たされる!・・・そのピンチを救ったのはクロスボーンガンダムX1であった。

再会
トビア「キンケドゥさんでしょ? べ、別の人ってことはないですよ・・・ね! キンケドゥさん! 返事をして!」

顔に包帯を巻き、右手は義手となっていたが・・・トビアの言うとおり、X1に乗っていたのはキンケドゥ・ナウ、その人であった。ザビーネに敗北し地球へ落とされた時、なんとキンケドゥはビームシールドを使って大気圏突入をやってのけたのであった!!

大気圏突入の図
トビア「ええっ?? バリュートやウェイブライダーの代わりに、ビームシールドを使ったんですか?」

キンケドゥ「理論上は可能だとは言われていたんだが、試した奴は歴史上、初めてだったろう・・・。」

ビームシールドで大気圏突入ができるなら、その逆も可能というのが理屈というもの。キンケドゥは連邦軍基地から奪った固形燃料式ロケットでガンダムを打ち上げ、木星軍が想定していない母艦の下方向からの急襲作戦を発案。既にその準備を進めていた。

ベラ、そしてベルナデットが見守る中、キンケドゥとトビア、海賊軍の仲間たちは決戦の宇宙へと飛び出していった・・・

「神よ・・・もし本当におられるのでしたら、決着は《人間》の手でつけます。どうか手を、お貸しにならないで・・・」

木星軍のMSの動きが想像以上に速く、危うく敵機に捕捉されそうになるが、クロスボーンガンダムの制式生産機・フリントを駆る仲間たち、海賊軍の意図に気付いた連邦軍が援護に回り、トビアとキンケドゥの二人は木星軍母艦・ジュピトリス9への接近に成功する!

可能な限り接近する
トビア「キンケドゥさんッ!」

キンケドゥ「振り返るな!この一撃に勝負をかけるしかない!
可能な限り接近する!」

トビア「うおおおッ!!」

死の旋風隊の一人、バーンズ(注2)がトビアに教えた、「第8、第9ブロックの間が構造上弱くなっている。」というジュピトリス9の弱点を、X1とX3は小型の核爆弾を使い爆破。ジュピトリスは轟沈し、連邦軍不利のまま進んでいた戦場の流れが変わり始めようとしていた。

「あ、ああ・・・やった、やりましたよ!キンケドゥさん!!」

「いいや、まだだ! 感じないか?トビア! 奴の憎悪を! まるで憎しみの塊だッ!」


ドゥガチはまだ、地球の破壊を諦めてはいなかった! そして、それを現すかのごとく、ドゥガチの破壊衝動が形を成したかのような7機の巨大MA・ディビニダドが姿を現す!

ディビニダドへ立ち向かうキンケドゥ
キンケドゥ「おそらく一匹でも十分に地球を死滅させられる毒虫だ! 絶対に地球に入れてはならない!

混戦の中、トビアとキンケドゥは離れ離れとなってしまうが、キンケドゥはディビニダドの姿を確認するや、これを止める為、機体を走らせる! しかし、その眼前に飛び込んできた、黒い機体があった!

ザビーネ出現
キンケドゥ「何ッ! ザビーネ!?」

ザビーネ「キンケドゥ? どうしてここにいる? キンケドゥゥッ!!」

激闘再び
ザビーネ「お前は死んだんだぞ? ダメじゃないか、死んだ奴が出てきちゃあ!
死んでなきゃあッ!

交差する刃
キンケドゥ「てごわいっ!」

7機もの巨大MAを止めるには戦力が足りず、このままでは防衛線の突破も時間の問題かと思われた。しかし、トビアの説得を受けてシェリンドンがコロニー軍を動かし、連邦軍の援護に入る。これで戦局は完全に覆った・・・ハズなのだが?

7機の巨大MAが暴れまわる光景を目にして、トビアはある事に気付く。ドゥガチは9基のバイオ脳におのれの人格の全てをコピーした。その内の2基はこれまでの戦いで失われている。だから7機のMA。キンケドゥは言った、「奴は憎しみの塊だ」と。しかし、機械は憎しみを表さない。と、いうことは、憎しみの根源であるドゥガチ本人が乗る、8機目のMAが存在するはずだと!

崩落するジュピトリスのヘリウムタンク。その中の一つにドゥガチの存在を察知したトビアがこれを追う。

一方、互いにほとんどの武器を失いながらも続くキンケドゥとザビーネの戦いには、終結の時が迫っていた。互いに構える武器はヒートダガーのみという状態で、X1とX2改が激しくぶつかり合う!

X1対X2改
キンケドゥ「ザビーネッ!」
ザビーネ「キンケドゥッ!」

X1対X2改A
ズガアァァァッ!!

秘技・フェイスガード白刃取り!
フオォォ・・・

X1の頭部を狙ったザビーネの一撃を、キンケドゥはX1のフェイスガードを展開し、ダガーを咥えさせる様にして防いでいた。逆にキンケドゥの一撃は、X2改のコックピットに深々と突き刺さっていた!

「ドゥガチ様が・・・私に世界をくれても良いと・・・おっしゃったのだよ! わ、私の手で、素晴らしい未来を! 正しき貴族の支配する、美しい世界を・・・」

「お前がもっとも支配者に相応しいといった女性はな、支配など正しいとは思ってはいない!
支配をよしとしない者が支配者に相応しいのなら、それを望むものは支配に相応しくない事になる!

貴族主義は、はじめから間違っていたんだよ。ザビーネ・・・」


X2改、爆散
ドグワァァァァ・・・!!

かつて「感情を処理できん人間はゴミだ!」と言って裏切った部下を手にかけた男の、感情を処理しきれなかったが故の哀れな最期であった・・・。

キンケドゥがトビアに気を向けた、丁度その時。トビアのX3は地球へ降下するディビニダドに追いつき、そのカプセルに取り付いていた・・・!

注2『バーンズ・ガーンズバック』:トビアに亡き息子の面影を見る木星軍将校。息子は酸素採掘基地の事故で死亡しており、「地球圏であればこうはならなかった。」と地球と連邦政府を恨む。息子の死に報いる為、MSのコックピット内ではヘルメットを被らない。
人と継ぐ者の合間に
コロニー軍の参入によって、連邦軍と木星軍の戦いに決着がつくのも時間の問題と思われていた、その頃。トビアはたった一人、ドゥガチに対峙していた。


対峙
ドゥガチ「邪魔をするな。わしの邪魔を。そこをどけ、小僧ぉッ!」

トビア「クラックス・ドゥガチ! アンタもう・・・本当に人間じゃなくなっちまったのか?
ベルナデットの父親じゃないって言うのかッ!

ドゥガチ邪魔だと言っているゥゥゥッ!!

※巨大なMSの敵ということで、ROBOT魂 レグナントにご登場いただきました。

振り上げられた巨大な爪を回避するX3。そうこうしている内にカプセルは大気圏内に落着し、2機は決戦の場を洋上に移した。

X3
「もう・・・やめろ!ドゥガチ! 何故そうまでして地球を滅ぼそうとする!!」

「貴様如きに何がわかる! わしはたった一人で木星圏を大きくしてきたのだぞ!」

X3対ディビニダド
ドゥガチ「何も無い世界を! 吸う空気ですら作り出さなければならぬ世界を! 70有余年をかけて、人の住処にしてきたのだぞ!
それを地球連邦は・・・地球の周りでぬくぬくとしていた連中は何をしてくれたッ!

ドゥガチは攻撃の手を緩めずに、地球連邦に対する恨みを語り始めた。

水を切り詰め、食料を切り詰め、過酷を極める木星圏での生活。しかし、地球連邦は何の援助もしてこなかった。どうにか木星圏が自立し、国と呼べるほどの力を備えるようになると、連邦はドゥガチに対し政略結婚を申し出る。

ドゥガチの怒り
ドゥガチ「齢80歳に手の届く老人に、地球の良家の娘をくれてやるから、「これで地球とは親類だから仲良くしましょう」と言いおった・・・
尻尾を振れと言われたのだぞ! わかるか?この屈辱が!?

トビア「だけど! ベルナデットはその人との間の子だろう? アンタの子、だろう!?」

ドゥガチ「さぁ? 医者はそうだと保証しておったがなっ!?」

もしもベルナデットの母が卑しい女であったなら、彼女だけを憎んでいればそれで事は済んでいたかもしれなかった。しかし、彼女は優しい女性であった。優しさとは豊かさの象徴・自然な心の余裕。それを見せ付けられる度、ドゥガチは自身の惨めさに身を引き裂かれるような思いを味わい続けていた。彼女の優しさはドゥガチにとって、彼の全てを否定されるに等しかったのである・・・。

ドゥガチの怒り
ドゥガチ「だからワシは滅ぼすのだよっ! ワシを否定しようとする全てを! そして・・・
世界の全てを木星と同じにしてやるのだよ!

トビア「それじゃ・・・それが? たったそれだけの事で、こんな戦争を起したのかッ!」

ドゥガチ「そうだとも! わしが真に願って止まぬものは唯一つ・・・」

核発射!?
「紅蓮の炎に焼かれて消える、地球そのものだァぁぁッ!!」

核ミサイルの発射体勢に入ろうとするディビニダド。これに対し、X3はムラマサ・ブラスターの先端部からロング・ビームサーベルを発生させ、ミサイルの弾頭部分のみを切り離すという離れ業をやってのける!

一閃!
「うおおおぉぉぉぉッ!!」

ドゥガチ「なぁにぃッ!? 弾頭だけを?切り落としただとぉ!?」

ロールオーバーで画像が変わります

トビアはこれまで、木星人やドゥガチ自身の事を、「地球を必要としなくなった、ある意味でのニュータイプ」「SF映画に出てくるのと変わらない、異星からの侵略者」と、聞かされてきた。しかし、目の前にいるドゥガチに対して、トビアは一つの結論に辿り着く。

アンタはまだ、人間だ!
トビア「安心したよ!ドゥガチっ! あんた・・・まだ人間だっ
心の歪んだだけの、ただの人間だっ!!

ドゥガチ「若造の言うことかああっ!!」

結局のところ、ドゥガチにここまでさせたのは、豊かな地球に対する《嫉妬》という、あまりにも人間くさい感情だったのである・・・。

不意に放たれた一撃により、武器を失うX3。ドゥガチはトドメとばかりに、ディビニダドの大型メガ粒子砲を放とうとする!

最後の突撃
「(もう武器がない・・・だけど!)
うおおぉぉぉぉっ! I-フィールド・全開!!

「脱・・・出ッ!!」―すべては一瞬の判断であった。トビアはX3の機体を砲口に突っ込ませると、I-フィールドを発生させ、メガ粒子砲を暴発させたのであった!

再びビームシールドで大気圏突入してきたX1がX3のコアファイターを拾い上げ、爆風からトビアを庇う。

「フハハハハ・・・見ろ! ち、地球が燃えるぞっ! 全てが消えてゆく・・・」―それはドゥガチが最期の瞬間に見た、幻であったのかもしれなかった。そんなドゥガチに対し、キンケドゥは最後のトドメを下す!

最後のトドメ
「たとえ幻でも・・・あなたにそれを見せるわけには、いかない!!」

コックピットを貫かれ、ディビニダドは静かに海中へと没していった・・・。

こうして戦いが終わり、キンケドゥとベラの二人は《本当の名》を取り戻し、地球の自然の中へと去っていった。海賊軍の生き残りはキンケドゥが残していったガンダムとともに宇宙へと上がっていく。トビアはベルナデット―少年と少女の記録は残されていないが、クロスボーンガンダムの名が、民間の間に伝承として語り継がれるのみである・・・。

「もうできることと言ったら、宇宙海賊ぐらいしかありませんよ。みんなともう一度、宇宙へ出ます。」(戻る)