RG エールストライクガンダム

バンダイ RGシリーズ

定価:2625円(税込)

RG エールストライクガンダム
過去のコラムをHDリマスター版放映に合わせてリニューアル!
リニューアルされたSEEDの世界を映像とプラモで体感せよ

ガンダムが、ただのロボットアニメでないというところを見せてやる
私は結構なガンダムファンなのでこのシリーズの魅力も徹底追究していきたいと思う。・・・が今回紹介する「機動戦士ガンダムSEED」は実はあまり好きでなかったりする。
各所でいろいろ言われているが、私の見解と一般論を模型を通して説明しようかと思う。

まず、私のガンダム観を言っておこう。私はこの作品を見るまではガンダム=高尚で哲学的な物と思っていた。ミノフスキー物理学や各種の設定など、徹底的にリアリティを追求し練り上げられた設定や格好いいMS(モビルスーツ)は当時中学生だった私を大いに魅了したし、その世界にどんどん取り込まれていった。

そして何より魅かれたのはニュータイプ論。これは人間が宇宙に上がると、脳などが活性化されテレパシーなどができるようになり、意思疎通が今までよりも容易になって人類は皆宇宙に上がってニュータイプとなって戦争もなく平和に生きようという感じの理論であった。(当然空想上のものである)ここで人類の可能性を示しているというわけなのだ。

もう1個特筆すべきは人間の暗黒面を描写しているということ。ガンダム世界の戦争勃発理由の多くはスペースノイド(宇宙に住んでいる人間)がアースノイド(オールドタイプとも言う。地球上に住んでいる人間)の地球汚染やスペースノイドに対する圧制などの横暴な振る舞いに反して戦争を仕掛けるというものである。「自治権確立」や、「粛清」を謳っている場合が多い。ただ、結局のところどっちもどっちで核兵器を乱用したり、はたまた宇宙での居住空間であるコロニーやら小惑星を落とし、人類の半数を死滅させたりして宇宙や地球を汚染しあっていくようなことばかりやっているのである。よく、「最大の環境破壊は戦争である」とよく言われているが、まさにそのとおりではないか。

こうした戦争の中で少年たち(大体は中立の立場から)は図らずもガンダムと名のつくMSに搭乗し、戦いを経て成長し、さらにはニュータイプに覚醒していき人間とは何かということに気づいていく・・・という話である。

ただ、世界観や時間軸が違っている作品もありパラレルワールドを形成しているというわけである。こういったところから、当然ニュータイプ論やミノフスキー粒子は存在しない作品もある。中にはニュータイプ論を否定した作品もあった。このように、20世紀の間でも世界が広がり続けたガンダムシリーズは、1999年に放映された∀ガンダムで人類の長い長い歴史上で起こったことということで、黒歴史として1つのまとまりになっていて、ここで完結している。

にもかかわらず、多くのファンが存在し、また新たなファン層を開拓したいというサンライズやバンダイの意向で2002年に始まったのが、このガンダムSEEDというわけである。旧来のファンは否定派が多いが(注1)、それまでの「ガンダム」というブランド名もあいまって思惑通りに大人気作品となった。ただ、後のコラムでも話をしていくつもりだが、私はこの作品の作品性はかなり低いものと思っている。

このようなコラムを書いてから、8年経過した2012年・・・。時の流れは残酷なものでこのようなコラムを書いたSEEDシリーズもついに10年前の作品となってしまった。このSEEDシリーズがガンダム原体験という世代も増え出しており、放映当時のネガティブな雰囲気はどこ吹く風、SEEDを見て育った世代もネット上で発言権を得ていきガンダムシリーズの中でもスタンダードな作品となった感がある。

10年前のネット普及時代のころを知る筆者としては時の流れを感じずにはいられないが、HDリマスター化に伴いSEEDの再評価が行われているようである。そこで、過去に書いたコラムのリニューアルを行い2012年現在の状況を踏まえた加筆・大幅修正を行う!
注1 いわゆる1st世代の人は、かたくなにほかの作品をけなす人が多い。やはり、ガンダムのインパクトがそれほど強いものであったというのも伺えるが、「自分たちは古株だ」というような変なプライドもあるのだろう。
遺伝子組み換え!種無しガンダム(HDリマスター版)
このガンダムSEEDにはニュータイプの概念はないのだが、代わりにコーディネーターという概念が存在する。これは過酷な宇宙環境の中で適応するため遺伝子を組み替え、不要部分を削除し超人的な身体能力と知識量を得たという、まさに人類の革新という位置づけであった。

ただ、全員が全員コーディネーターになっているわけではなく、ナチュラルと呼ばれる遺伝子をいじっていない普通の一般人も多数存在する。この違いからもっぱら宇宙側はコーディネーター、地球側はナチュラルというように対立をしていた。

地上への資源供給が主な任であるプラント側(宇宙側)は自治権確立などを謳い、地球側と交渉していたが地球連合側の過激派が「血のバレンタイン」(注2)を起こし一挙に戦争に突入したというわけである。

このように話をポンと聞いた感じでは、設定面ではほかのガンダム作品並のものがあるように思われる。にもかかわらず、スタッフ側の力量のなさから、結局のところ内容を掘り下げられずに終わっている。まず、個人的に思ったのだが、一言にコーディネーターやナチュラルと言われても、外見上見分けがつかないというのはまずいのではないだろうか。これでは「違い」とか「差別意識」云々といわれても、外見上見分けがつかないのならわけがわからないし、説得力に欠ける。

だから、思い切ってエイリアン見たく変異した人間をやってみれば面白そうなものだが、保守的な旧来のファンの批判をずらそうとしたのか、いわゆるキャラ萌えをねらいやすくしたのか、はたまた何も考えてなかったのか(これが個人的に一番有力)知らないが、そうなってはいない。

尚、HDリマスター版になってから、スペシャルエディションの映像を挿入することでナチュラルとコーディネータの能力差を描いているので、この問題はある程度解決されてはいる。

こうして、戦争が始まったのだが、当初地球側が有利と見られていた。何せ、物量面で圧倒的に有利だったからである。しかし、実際はそうではなく作業用ロボットから派生したMSジンの投入により、戦闘機からの派生したMA(モビルアーマー)メビウスと戦艦しかない連合はどんどん押されていき、戦局は膠着状態になった・・・というのがアニメの始まる前の世界観である。

この所謂ファーストガンダムと設定の共通部分が多いことからわかるように、初代ガンダムのオマージュをやろうというのがこの作品の基本コンセプトである。実際にアニメのキャッチフレーズは「21世紀のファーストガンダム」であった。ただし、ファーストガンダムと大きく違う点は、ガンダムが5機存在し、そのうち4機は敵側に奪取されているということ。そのただ1機残ったMSが主人公、キラ=ヤマトの駆るGAT-X105 ストライクガンダムなのである。

ストライク、大地に立つ
爆炎の中、ゆっくりと立ち上がるストライクガンダム!
今ここに、新たなガンダム伝説が始まる
ロールオーバーで画像が変わります

「21世紀のファーストガンダム」という目論見は何とか実現できたようで、めちゃくちゃなところがあったとはいえ、このSEEDシリーズは今となってはガンダムの一つの大きなシリーズという位置づけになっている。

このコラムを2004年に書いてからおよそ8年後の2012年1月に、放映後10周年を記念して『機動戦士 ガンダムSEED』は、SEED HD化プロジェクトのキャッチフレーズを掲げて新たに作り直された。これは、近年の地デジおよびBlu-Rayに対応した画質でSEEDシリーズをリバイバルしようという企画である。当時の作画を描き直したり、総集編で無駄に回数を重ねていた箇所を削除し、後の『SEED DESTINY』に繋がる伏線やスペシャルエディションなどで使用された場面も追加し、新たに48話で再構成されたシリーズである。

このリマスター版は、バンダイチャンネルで無料放映された後、TOKYO-MXやBS11などの衛星テレビで放送後に、12話分まとめたBlu-Rayボックスをリリースする販売形式をとっている。

このリマスター化に伴い、当時矛盾してた描写が直されていたり、戦闘シーンのアニメを徹底的に描き直したりした上に、ストライクガンダムの新たな姿であるパーフェクトストライクが登場したりなどのサプライズが用意されている。当時のSEEDはバンクの使いまわしが激しく、古参のファンから毛嫌いされていたが、このHDリマスター化により、メカの描写が強化されたため、メカ好きな人間も堪能できる作品に生まれ変わった。
注2 自給自足の難しいプラント側に兵糧攻めしようということから、農業用プラントのユニウス7に核弾頭ミサイルを撃ちこんだ。結果、住民は全滅し、これに激怒したザフト軍(プラント側の軍隊)は地球に報復としてニュートロンジャマーを打ち込んだ。これは、核分裂を停止させる装置でこれにより地球は深刻なエネルギー不足に陥った。ガンダムシリーズのMSは原子力で動くのだが、こういう事情によりガンダムSEEDのMSの大半は燃料電池で動くことになっている。
21世紀のファーストガンダム
さて、ここから模型の話をしていこう。まず、このストライクガンダムだけとっても、かなりの種類が発売されている。換装タイプが3つもある上に、バリエーションキットが随時追加されバンダイ側としても減価償却しやすい主人公機だからである。

まず、サイズの面から話をしていこう。ガンダムのプラモデルのサイズは大きく3つに分けられる。例外も存在するが大体は1/144、1/100、1/60と3段階の大きさが用意されている。大きさが増すごとに値段も高くなり、その分作りも細かくギミックも多くなっていく。また各サイズにもブランドが振り分けられている。

SEEDのプラモデルにおいて1/144は、コレクションシリーズHG(ハイグレード)に分けられている。コレクションシリーズは、1つ300〜600円と安めに作られており、組み立ても簡単である。しかし、その分膝や肘のなど、本来なら動くべき可動軸がオミットされており、ほとんど動かない。なので、ポーズを付けたりして遊べないのだがその分、アニメの設定画に一番近い形のモデルが作れ、果てには雑誌の付録にもできるというのが利点である。バクゥ、ストライクダガー、M1アストレイなどマニアックな量産機がこのシリーズで出ているのも魅力の1つである。模型を作ったことがない人はこれを勧めたい。

HGのほうはどうかというと、こちらは普通のプラモデルで1000〜1500円というところ。小さいサイズの割にはガシガシ動かせるし、色も整っている。HDリマスター化に合わせて、成型色をアニメ寄りに変更し、さらに近年のアクションスタンドに対応できるようにパーツを追加し再販されている。コレクションシリーズでは物足りないという人はこちらを買うようにしたい。

1/100は値段も2000〜3000円近くするのだが、そのまま組み立てただけで箱の写真に限りなく近いように作れるし、細かいところも再現されているのでお金に余裕があって作る暇のある人は買ってみてはどうだろうか。

また、1/100の中にはMG(マスターグレード)というブランドがある。これは内部フレームを設定どおりに再現し、変形するMSは手首を除いた部分のすべてが差し替えなしの完全変形を実現した上級者向けのプラモデルである。また、幅広い可動範囲を実現し、劇中のポーズも取らせることもできるので、なかなかすごい。その分ほかの1/100シリーズより割高で、3000円以上がざらのブランドだが、十分値段に見合っていると思う。

コラムを書いた当初は、ストライクガンダム、カラーバリエーションのストライクルージュ、フリーダムガンダムが発売され、続編のSEED DESTINYのMSが続々リリースされていき、主要なMSをこのコラムシリーズで紹介していった。2012年11月現在、当時MGで発売されなかったイージス、デュエル、バスター、ブリッツもすべてMG化された。

SEEDのMGとして初めて発売されたMG ストライクはMG ゴッドガンダムの技術をフィードバックし、当時としては幅広いポージングが可能であるのがキットの特徴である。特に、肩関節は引き出せたり、上に上がったりするおかげで、アニメのアイキャッチでストライクがコンバットナイフを構えているところを再現できる。さらに足の関節もなかなかの物で、つま先が動いたりひざアーマーの可動で膝立ちもできる。

色分けも見事なもので頭のイーゲルシュテルン(注3)の部分などを灰色で塗ってあげて、スミ入れを施してあげればほぼ箱の写真そのままのストライクが製作できる。私が組んだものも、イーゲルシュテルンとシールドの裏の部分とコンバットナイフ格納部分をガンダムマーカーで灰色に塗っただけのものである。

更にうれしい事に、このキットではカタパルトを模したスタンドが付属している。カタパルトのパーツがスライドする上に、バッテリー充電用のプラグパーツとチューブも付属していており、エールパックの翼も出撃前の倒した状態に出来るので、出撃の雰囲気を完全に再現できるのだ。

これらの仕様はコラムを書いた当時においては、非常に魅力的でありがたい物だった。しかし、8年の歳月が経過してしまった今となっては、これらの仕様は「当たり前」の物となってしまったどころか、可動範囲はガンダム00シリーズを経てさらにグレードアップした。しかも、8年の間に完成品フィギュアの出来も壮絶な進化を遂げているわけで、自分の手を動かさなくても同レベルの製品が簡単に手に入る時代となった。時の流れというのは残酷である。
注3 正式名称「75mm対空自動バルカン砲塔システム」要は、頭についているバルカン砲のこと。至近距離のミサイルや航空機を打ち落とすためにもっぱら使われている。目標の発見・追尾・射撃まで全部自動化されている。
売れ残りの壁をぶち壊せ!
このストライクガンダムはバックパックを換装することで、あらゆる場面に対応できるように設計されている。劇中では機動性に長けたエールストライカー、接近戦用のソードストライカー、砲撃戦用のランチャーストライカーが登場した。

ソードストライクガンダム ランチャーストライクガンダム

エールストライクガンダム
状況に応じてバックパックを換装し、機体特性をかえることができるストライクガンダム
同じ時間帯にやっていた『ZOIDS/0』のチェンジングアーマーシステムをイメージしているとか

ここがストライクの売りで、飾るときはどれかひとつはしょわせておきたい。バックパックなしだとビームサーベルさえ使えない状態で、もともとあるコンバットナイフ2本で戦わなければならないし、何よりもシンプルすぎてぱっとしないのである

だから、1/60を最初に買った人はかなり悲惨であろう。5000円もするこの商品は当初、ストライカーパックなしで発売されたのだが、後になってストライカーパック全種と一緒に発売された。当然ながら、単体よりも高いため大手の店では壁を築いていたのだが。

これと同じく1/100の売り方も少々いただけない。これはエール・ランチャー・ソードと1体ずつ発売されたのだが、全種そろえるとストライクガンダムを3機も作らなくてはならなくなる。これは顧客や小売店にとっては迷惑な売り方だろう。だから、これらが発売されていた当時、ソードやランチャーストライクの1/100モデルが壁を築いてるのを見るたびに、なんだかなと思ってしまった。

じゃあ、パーツのみで出せばいいじゃないかという人もいるだろう。しかし、∀ガンダムで武器セットを出したところまったく売れなかったという話もあるので、そこのところが難しかったのだろう。ゾイドでも似たようなことをやっていたが、武器セットの入荷自体少なかったしやはり単体で遊べるようにしたのではないかと思う。ここらが売り方の難しいところだろうか。我々としてはパーツ単体で売ってくれたほうが、無駄な出費をせずにすむのでありがたいのだが。

さらに、これら全種買った人の最大の不幸は今までのものよりできのよいMGのキットが出てしまった点であろう。私は暇がなくて1/100のストライクは2004年3月に入ってやっと手に入れたMGしか持っていないので被害は0だが、全部持ってる人は相当悔しがってるだろうな。

この後、ストライクガンダムはMGでもソードストライカーパックとランチャーストライカーパックが発売したものがリリースされた。ただし、上記の失敗から学んだのか、ソードストライカーとランチャーストライカーはセットで同梱されており、同じストライクを2回も組む必要はない。

さらに、SEED人気を受けてストライクガンダムは1/60の最高峰ブランドであるPG(パーフェクトグレード)でも発売された。このPG ストライクではストライクの可動をとことん追求したものでオリジナル武装であるグランドスラムが付属している。その代わり、またしてもエールストライカーが入っていないという現象が起きたが、これはPG スカイグラスパーがリリースされたことで解消され、同製品に付属しているエールストライカーを背負わせることができるようになったのだった。

このように、ストライクはガンプラのすべてのブランドを8年かけて制覇した。しかも、その間にIWSPなどの追加パックも発売されており、ガンダムの中でもかなりの種類がプラモデル化されるに至っている。

RG ストライク出撃
SEEDが放送されてから9年後の2011年に、ストライクは新たなブランドで蘇った。それが1/144の新ブランド、RG(リアルグレード)である。

このRGは、2009年に作成された1/1ガンダムで培われた経験をもとに、「実際にMSが1/1で作られたら・・・」という仮定を徹底的に考察して新たにデザインされたブランドである。これらの考証を基に、整備性を意識したパネルラインやでカールが付属しており、実際の兵器としてのMSという側面が強調されている。このRGでは、1/144にしてMG並みの高密度のギミック、デザインを実現しており、今後のガンプラの次世代のブランドである。

このRGで特筆すべきはアドヴァンスドMSジョイントである。これは、多重インサート成型という特殊な工程を経たパーツが同梱されており、何と、ランナーから切り取るだけで可動するパーツが完成してしまうという優れものなのである。このアドヴァンスドMSジョイントはフレームパーツにおもに使用されている。また、手首パーツはジョイントを成型段階で埋め込んでしまうため指の可動までも1/144にして実現している。 これらの箇所は1/144ではこまごまとしたパーツを組まなければならなくなり、キットの組み立て難度が上がってしまうところを、ぐっと簡単にすることが可能となった。

アドヴァンスドMSジョイント
ランナーからパーツを切り取るだけで可動するフレームパーツが完成してしまう
技術の進歩のすごさが見える画期的なシステム

このフレームパーツに通常のパーツを貼り合わせていくことで、組み立てていくことになる。MGではもはやスタンダードになった装甲のスライドギミックまで再現することができ、フレームパーツは物の数分で完成させることが可能である。

パーツを貼り合わせる工程
このようにパーツを貼り合わせていく

エールストライクガンダムは初代ガンダム、シャア専用ザクに続いての3体目のRGとしてリリースされたのだが、初期のキットということだけあり、試行錯誤している点が見て取れる。特に腰のアドヴァンスドジョイントのボールジョイントの受け軸になぜかまったく用途の違うシールドの接続ジョイントが使用されており、腰パーツを組む時はこの工程には関係ない部分のパーツを取り外さなければならない。こういった不思議な構成は後続商品では是正されたが、なぜこのような仕様にしたのかがいまいち謎である。

このアドバンスジョイントに装甲パーツをすべて取り付けるとこのようになる。

ストライクガンダム 前 ストライクガンダム 後
MG並みに複雑なモールドが施されたストライクガンダム
MGで出来たことはすべて再現することが可能

考証により、各パーツに複雑なモールドやパネルラインが施されている。PS装甲の展開を再現するため、白いパーツでも部位によって白の色合いを変えているのが特徴である。また、MG並みのパーツ量を使用して各部の色分けを完全に再現している。このため、パッケージの写真でも「墨入れをほどこしトップコートを吹いただけ」という状態で写真が撮影されている。MGでは塗装が必要だったイーケルシュテルンも塗装が不要になるくらいに完全に色分けされているところが大きいポイントである。

ただし、こだわる場合は額のセンサーとビームライフルのスコープ部分のクリアパーツにクリアグリーンなどで色を施さなければならない。

ガンダムではおなじみの顔のへの字スリットは、元から溝が掘られた状態になっているため、墨入れしなくてもガンダム顔の特徴的なスリットを再現することができる。

顔のアップ
顔のスリットは墨入れ不要

この色分けができているストライクに付属のリアリスティックデカールを施せば、さらに情報量が増すが、細かいシールが多いためピンセットの使用が必須である。ちなみに、筆者はアニメのイメージを大切にするためほとんどリアリスティックデカールは使用していない。その代わりにパネルラインを際立たせるためガンダムマーカーで墨入れを施し、リアリスティックデカールを使用した箇所は、目に当たるカメラアイの部分のみである。これまでのシリーズと違い、目のパーツは金色のメッキシールが使用されており、目が光っているイメージをよく再現できている。

このRGでは1/144にしてMG ストライクガンダムができたことがすべて再現することが可能である。まず、単体のストライクガンダム時の武装であるアーマーシュナイダーは折りたたんで腰の装甲に収納することが可能である。これは旧製品の1/144では、サイズの都合からか再現されていなかったところであった。

アーマーシュナイダーの収納
ロールオーバーで画像が変わります

アーマーシュナイダー
アーマーシュナイダーの折りたたみ、腰パーツへの収納も1/144の大きさながら完全再現!

本体の可動ギミックは先述のアドヴァンスドMSジョイント製のフレームパーツにより、装甲のスライドを再現している。スライドギミックが採用されているのは大きく可動することが求められる腕パーツと脚部パーツである。MGのキット同じく、腕の動きに合わせて筋肉が収縮するかのごとく装甲がスライドし可動範囲を広げる手助けをしている。

腕の装甲スライド 脚部のスライド
1/144の大きさにして装甲パーツがスライドする
ロールオーバーで画像が変わります

また、肩の関節はガンダム00などで培われた引き出しギミックを採用している。これでアイキャッチのアーマーシュナイダーを構えるシーンが1/144の大きさにして再現することが可能となった。

アーマーシュナイダーを構えたポーズ
MGで出来たアーマーシュナイダーを構えるポーズもお手の物
10年間の技術の進歩を感じさせる部分である

このよく動く本体のおかげで、アニメで取っていたリアルロボットにあるまじきスーパーロボットの様なポージング、通称種ポーズを自由に取らせることが可能となった。昨今、可動ギミックが充実しているROBOT魂シリーズにも引けを取らない可動範囲を見事に実現しているのが驚きのポイントである。

可動ギミック以外では、1/144にしてコクピットハッチの開閉が可能になった。コクピットの展開は1/100の特権だったものだが、ABSのジョイント技術の発達により1/144でも展開させることが可能となった。

コクピットハッチの展開
コクピットの開閉も劇中に忠実に再現されている
ただし、サイズの都合上パイロットは座っていない
ロールオーバーで画像が変わります

コクピット内に座らせるパイロットパーツが付属しない代わりに、1/144サイズのキラの立ち姿が付属している。

パイロット

肩のパーツは後のストライカーパックに対応するためにグレーの部分が上に跳ね上がるようになっている。これもMGからのフィードバックだが、RGでは肩に取り付けるパーツのためにジョイントが仕込まれているのが特徴である。

肩パーツの展開
ロールオーバーで画像が変わります

これまでのストライクガンダムとは違い、キットには元からエールストライカーが付属している。エールストライカーを装着することで、ストライクガンダムはエールストライクガンダムになる。

RG エールストライクガンダム RG エールストライクガンダム
宇宙戦で高速機動の戦闘を得意とするエールストライカーを装着した状態
SEEDの時代では、地上では滑空するのみにとどまっている

このエールストライクは、『DESTINY』の時代も含めるともっとも多様されたストライカーパックと言え、ストライクガンダムと言えばこの状態がデフォと言っても過言ではない状態である。

こちらの色分けも完ぺきで、HGの時代ではシールで済ませていた翼の赤い部分は別パーツで色分けされており、そのまま組み立てれば良いだけになっている。また、HGでは主翼は固定だったが、RGではマスターグレードと同様に翼の角度を調整することが可能である。

翼の折りたたみ
このように翼を折りたたむことも可能。
ただし、MGとは違って90度に折り曲げることができないのが惜しいところ

エールストライカーを装備することで、ストライクガンダムはガンダムのオーソドックスな武装であるシールドとビームライフルが使用可能になる。

ビームライフル&対ビームシールド
ガンダムのオーソドックスな装備であるシールドはエールストライカー付属の武器である
ZAFTに先駆けて、連合側がビーム兵器の小型化に装甲した点は初代ガンダムと同じである

アクセントをつけたかったのか、これまでのキットとは違いビームライフルはグレー一色ではなく一部の装甲が白色になっている。この部分が気になる人は、塗装しておいた方が良いだろう。

ビームライフルはフォアグリップが可動するので両手持ちが可能である。

ビームライフルの両手持ち ビームライフルの両手持ち

この点はHGのキットでも可能だった点であるが、ライフル側のコネクターをマニュピレーターに接続することで機体からエネルギーを得ているという設定を踏まえてメイングリップには手首とのジョイントパーツが仕込まれている。これは設定の再現のためと、手首が可動指になったため武器の保持力が持ち手よりも落ちることへの配慮である。普段は折りたたんでおくことができるのだが、回転軸の接続が緩すぎるためマニピュレーターのジョイントにはめ込みにくい。この点はRG スカイグラスパーに付属する武器持ち手を使用すれば保持力の問題は解消される。

シールドは、HGの時代は赤一色で塗装しなければならなかったところだが、RGでは完全に色分けを再現している。特に白色のパーツを塗るのは結構な技術が必要だったところなのでこの仕様はありがたいところである。

このシールドはビーム攻撃を防ぐために開発されたものである。連合が開発したガンダムはフェイズシフト装甲により、物理攻撃をエネルギーの消費と引き換えに無効にする装甲を採用しているのだが、光学兵器であるビーム攻撃までは無効にすることができない。そのビームを防ぐため、シールドはラミネート装甲でできており、特殊な振動によってビームを拡散し無効化する。ビームサーベルでつばぜり合いする時も、このシールドで剣戟を受ける。これは、SEEDの世界ではビーム同士の物理的な干渉が起きないという設定になっているからである。

エールストライカーには接近戦用の武器であるビームサーベルが付属している。これもガンダムシリーズのオーソドックスな武器で、接近戦を行う時は必ずこの武器を使用する。SEEDの世界ではミラージュコロイドでビームの固定化を行っているという設定である。

過去のHGのキットでは持ち手とビーム刃が一体になった物が付属しており、興ざめだったところだが、RGのキットではビームの刃をクリアパーツで再現している。

ビームサーベルを抜くところ
ガンダム世界のオーソドックスな武装であるビームサーベル
初代ガンダムからにのっとり、肩から抜き出します。
ロールオーバーで画像が変わります

ビームサーベルはバックパックに取り付けるためのものと、腕に持たせるための物が付属している。後者には柄にダボがあり、それを可動手首のジョイントに取り付けることで保持する。ただし、ビーム刃の取り付けパーツが1組しか付属していないため、どちらか一方を選ばなければならないのが残念である。

このように、過去の失敗や技術を活かして1/144のサイズでここまでのディティールと可動範囲を実現した良キットになっている。このストライクに加えて、RG スカイグラスパーを購入すれば他の2形態も再現することができるようになるので、両方そろえてSEEDの生まれ変わった世界を立体模型で楽しもう!

よっしゃ、出るぞ!(RG スカイグラスパーのコラムへ)

キラ=ヤマト、フリーダム行きます!(RG フリーダムガンダムのコラムへ)

キラ=ヤマト、行きます!(もどる)