RX-0 ユニコーンガンダム2号機 バンシィ

HGUC バンシィ(ユニコーンモード) 定価:1680円(税込)

HGUC バンシィ(デストロイモード) 定価:1890円(税込)

ROBOT魂 バンシィ 定価:4410円(税込)

RX-0 ユニコーンガンダム2号機 バンシィ
敵か味方か、黒いユニコーン現る!

あの黒いユニコーンは何だ!?
基本的にガンダムは白を基調としたトリコロールカラーになっているものが多いのだが、『機動戦士Ζガンダム』では黒いガンダムが登場した。ティターンズで開発されたガンダムMk-Uは、登場当初はティターンズのカラーに合わせた黒と紺を基調とした渋いカラーであった。白の反対は黒ということで、形状が同じ黒いメカを登場させることは、その対になるライバルメカという位置づけが容易に連想できる。純白のユニコーンガンダムにもその対となるべきもう一つの機体が存在する。それこそが、ユニコーンガンダム2号機、バンシィである。

バンシィは、地上運用を前提とした調整が施されたもう一つのユニコーンガンダムで、ユニコーンガンダムとは別の場所で開発されていたMSである。ユニコーンガンダムと同じくフルサイコフレームを採用したマシーンで、NT-Dも装備されている。この機体は、ラプラスの箱の権益を守るためにマーサ=ビスト=カーバインが用意したMSで、再調整したマリーダ=クルスをパイロットとしてユニコーンガンダムを奪還するための切り札としてバナージの前に敢然と立ちふさがる。今回はこの黒きユニコーン、バンシィを紹介しよう!

小説版のデザインは、まさに「黒いユニコーン」といえるもので基本的な構造や武装は全く変わらない。ただし、頭部の形状が変更されており、「一本角」と呼ばれていたユニコーンの角は鶏のとさかの様な複雑な形状に変更、さらにユニコーンモード時の顔も牙を模した意匠が追加されている。これは、ビスト家に伝わる「ユニコーンと貴婦人」のタペストリーに描かれている獅子を模したものである。この獅子はタペストリーの中のユニコーンと対をなす存在とされ、それゆえバンシィはその機体の色と出自から「黒き獅子」という二つ名を持っている。

小説版ではユニコーンとほぼ同じ形状で同じ武装だったのだが、OVA化で映像化されるにあたりアニメオリジナルのアクセントがほしかったのか多少の形状変更が施された。小説版では襟パーツがユニコーンと同じだったのが、OVA版では黄色の牙状の襟に形状が変更された。また、ビームマグナムとシールドはオミットされ、その代わりにアームド・アーマーが追加武装として両腕に装備されている。籠手状のアームド・アーマーが追加されたことにより、ユニコーンと違ったシルエットになっているのが特徴である。

バンシィ、二つの姿
特徴的な頭部と籠手のおかげで、ユニコーンと大きくシルエットが異なって見えるOVA版のバンシィ
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ユニコーンガンダムのビームマグナムは通常のビームライフルの4発分の威力があり瞬間的な威力は高いのだが、連射は5発までと限定されている。一方、バンシィのアームド・アーマーは連射性能に長け、ユニコーンガンダムに比べて継続性が上がっている。また、重力下での調整作業も施されているので完成度ではバンシィに一日の長がある。

劇中では、再調整された強化人間が乗る機体ということで、『Ζガンダム』に登場したサイコガンダムのようなポジションが与えられている。また、マリーダ奪還後はミネバに見放され、復讐の念に駆られたリディが乗る機体となり再びバナージの前に立ちふさがるという物語でも重要な役目が与えられている。

1ST MOV. HGUC BANSHEE
基本的な構成はユニコーンガンダムと変わらないため、このバンシィは非常に商品を展開しやすいメカである。まず、2012年1月にHGUCのプラモデルが発売された。こちらは、HGUC ユニコーンガンダムと同じく1/144サイズで変形機構をオミットしユニコーンモードとデストロイモードを別売する形でリリースされた。

このキットはユニコーンガンダムの成型色を白から黒に変え、バンシィを再現するための追加パーツが付属している。ユニコーンモードのバンシィには、展開前のアームド・アーマーVNヴァイブレーション・ネイルアームド・アーマーBSビーム・スマートガンが付属する。

HGUC バンシィ(ユニコーンモード) 前 HGUC バンシィ(ユニコーンモード) 後
ユニコーンガンダムのキットにバンシィ専用の頭部パーツとアームドアーマーのパーツが追加
ところどころの金色のラインはシールで再現している

減価償却の流用キットなので、可動範囲などはHGUCユニコーンガンダムと同じである。付属オプションとして、ビームサーベルの刃と両手の平手が付属している。ただし、バンシィの左腕はアームド・アーマーVNによって隠れているため、平手に交換しても目立たないのが難点である。

取扱い説明書には書いていないが、構造はデストロイモードと同じためアームド・アーマーBSを展開することも可能である。この武器を展開する場合は、手首パーツをはずしフィンがまっすぐになるように差し替えて展開する。

アームド・アーマーBSの展開
OVAではユニコーンモードでもアームド・アーマーBSを使用していたので、展開を再現できるのはうれしいところ
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色自体もシンプルなため、ほぼシールのみで設定色のバンシィが完成する。塗装が必要な箇所は角の付け根の黒い部分と金色のラインだけである。これらの部分もシールが付属しているので、シールで満足できるのならば塗装はほぼ不要である。

また、金型流用品であるためHGUCに付属していたバズーカ砲などもそのまま付属している上に、通常のユニコーンガンダムの胸パーツも入っているのでやろうと思えば原作版のバンシィを組むことも可能となっている。

本来のコラムであれば、HGUCのデストロイモードも紹介しなければならないのだが、デストロイモードのバンシィはROBOT魂の方が圧倒的にクオリティが高いので筆者はプラモデルを購入せずにROBOT魂版を購入した。ただし、ROBOT魂ではユニコーンモードのバンシィが発売されていないため、ユニコーンモードはプラモデルを購入した。

また、2012年3月に発売されたMGは、MG ユニコーンガンダムに追加パーツが付属したものなので、ユニコーンモードとデストロイモードの変形も見事に再現することができる。今の筆者の状況ではとてもMGのキットを作成する余裕がなく紹介できないのが残念だが、変形までこだわる人はMGを購入しよう。

2ND MOV. ROBOT SPIRITS BANSHEE
ホビー事業部がいつもの分売方式で商品展開をする一方で、コレクターズ事業部はデストロイモード一本で勝負を仕掛けてきた。一本勝負を仕掛けた理由はデストロイモードにはフルアクションverという完成度が高い製品が先に出ていたことが大きいだろう。このころ、ユニコーンモードのフルアクションverは、参考出品はされていたもののまだ製品化にはこぎつけられてはいなかった。ということで、OVA発売に合わせて2012年5月に発売されたROBOT魂 バンシィはフルアクションユニコーンの構造をそのまま引き継いでいることにより最初から密度の高い製品として君臨している。

ROBOT魂 バンシィ 前 ROBOT魂 バンシィ 後
ROBOT魂 バンシィはフルアクションverのユニコーンガンダムに追加パーツを施したもの
角や露出しているサイコフレームは金色の塗装で再現されている

プラモデルとは少々色遣いが違い、全身の成型色は黒に近い紺色になっている。頭部の造形はユニコーンガンダムから一新されており、さらに磨きがかかっている。また、角パーツはPVC製とプラスチック製のものが両方付属している。バンシィはユニコーンガンダム以上に複雑な造形をしているため、アクションをさせたい人はPVC製に差し替えておくことをお勧めする。

頭部のアップ
設定どおり、アイセンサーが赤く塗装されている

二つ目のアイセンサーはユニコーンガンダムが緑色で塗装されていたのに対し、バンシィは劇中に合わせて赤色で塗装されている。この赤い目はOVA5話のオーディオコメンタリーで触れられているように、目が赤くなっていることで、ユニコーンガンダムに禍々しさを与えることに成功している。とても細かい部分だが、角以外形状が同じであるにもかかわらずバンシィを禍々しい「魔神」という印象を与える重要な部分である。

ユニコーンガンダムとの比較
角と襟以外形状が同じであるにも関わらず、まったく違った機体に見えるバンシィ

このROBOT魂の白眉な部分は、OVAオリジナル武装であるアームド・アーマーの再現度である。プラモデルでは手首を取り外して展開していたアームド・アーマーBSは差し替えなしで展開させることが可能となっている。劇中通りに軸部分でアームド・アーマーBSが回転し、手首を収納、さらにフィンの部分がスライドするギミックまで再現されている。

アームド・アーマーBSの展開@
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アームド・アーマーBSの展開A
HGUCでは変形を諦めていた変形ギミックをサイズが同じくらいなのにもかかわらず再現!
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このアームド・アーマーBSは、近い時代に活躍したνガンダムのフィンファンネルと後の時代に活躍することになるVガンダムの強化形態であるVダッシュガンダムのビームスマートガンをイメージソースとしている。この武装は、ビームマグナムほどの威力はないものの、正確な射撃と長時間のビーム照射が可能で、巨大MAであるシャンブロの装甲をやすやすと切り裂いた。

また、左腕に装着されているアームド・アーマーVNは、展開時と非展開時の両方のパーツが付属している。展開時のパーツは爪の根元部分がボールジョイントで接続されており、爪も関節が仕組まれているのである程度自由なポーズを取らせることが可能である。

アームド・アーマーVN(展開時)
爪の部分が振動することで相手の装甲を切り裂くアームド・アーマーVN
その威力はリディのデルタプラスの装甲をやすやすと切り裂いた

このアームド・アーマーVNにはビームコーティングも施されているため、シールドとして使用することも可能である。また、非展開時はその装甲強度を活かした打撃武器としても使用可能。このように、バンシィはユニコーンガンダム程の一撃の破壊力はないものの、長い戦闘継続時間と格闘能力を活かせる機体として描かれている。

これらの武装に加えて、元々ユニコーンガンダムに付属していた武器もすべて付属している。シールドやビームマグナムも付属しているので、原作版のバンシィも再現することが可能なのである。

原作版バンシィ 前 原作版バンシィ 後
襟の部分以外はほぼ原作版に準じた形にできる
マグナムだけでなくバズーカも付属する

また、ROBOT魂オリジナルのギミックとしてアームド・アーマーを含めた全武装を装着した状態にすることができる。シールドを取り付ける際にアームド・アーマーVNが干渉してしまうが、専用のシールドジョイントを介することで装着可能である。

フル装備
ゴテゴテ感がたまらないROBOT魂オリジナルフル装備バンシィ
さらに、ビームトンファーも展開できる

このように、元のフルアクションverが素晴らしい出来だったため、減価償却の金型流用製品であるにもかかわらずその完成度は非常に高くなっている。発売されていないユニコーンモードをプラモデルで補うことで両方の形態を気軽に楽しめるので、お勧めである。

今後の発売予定としては、バンシィの総合性能向上仕様であるバンシィ・ノルンがROBOT魂で発売予定である。こちらはユニコーンモードでの発売で、しかも同時期に発売されるフルアーマーユニコーンと同じくフルアクション仕様での発売である。このバンシィ・ノルンにはボーナスパーツとして、熊手状に展開したアームド・アーマーVNが付属する。これと以前の製品を合わせれば、ガルダ上での激闘を完全再現することが可能である。今後のラインナップにも期待しよう。

黒いユニコーン
ラプラスの箱をめぐる戦いは、旧ジオン軍残党のダカール襲撃を境に深刻なものとなっていった。。その規模は単なるジオン残党軍のテロ活動というには大きすぎ、第三次ネオ・ジオン戦争と呼称すべきという意見も連邦軍内で出てくるほどになっていった。事件の背後にはビスト財団の暫定当主、マーサ=ビスト=カーバインがうごめいていた。ビスト財団から政略結婚という形でアナハイムに嫁いだマーサは、ビスト財団の既得権益を維持するために箱の解放を望んでおらず、インダストリアル7に連邦軍を送りこむように仕向けた張本人だった。また、彼女は甥であるアルベルトをネェル・アーガマに送りこみ、ユニコーンと箱のありかを探っていたのだった。

OVA5話は、袖付きと連邦軍だけにとどまらず、ビスト財団も大きく話にかかわってくる。さらに、ユニコーンガンダムの2号機であるバンシィがバナージのたちの前に立ちふさがり、ミネバをめぐって成層圏の高高度で激闘を繰り広げる!その様子を見てみよう。

ガランシェール隊がマリーダを奪還する作戦に出た際に彼女に命を救われたアルベルトは密かにマリーダに惹かれていった。拘束されたマリーダは、マーサの差し金によってかつて強化人間の研究・開発がおこなわれていたオーガスタ研究所に連れて行かれた。そこでマーサは、彼女に量産型キュベレイの残骸を見せることでマリーダの精神を動揺させ、彼女に再調整を施した。再調整されたマリーダは、プルトゥエルブと自身を認識し、新たにアルベルトをマスターと認識するようになってしまう。

マリーダを再調整したマーサは、トリントン基地に彼女を差し向けユニコーンを捕獲する作戦を企てた。その際、彼女が操っていたのが黒き獅子、バンシィであった。ベースジャバーによって輸送されていたバンシィは、高高度から落下しその金色に輝くサイコフレームを露出させデストロイモードに変形した。

降下しながら変身するバンシィ
リディ「ああ・・・黒い・・・!」

バナージ「・・・ユニコーン!?」
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デストロイモードに変形したバンシィは、落下しながらアームド・アーマーBSを展開し、地上にいたデルタプラスとユニコーンガンダムに攻撃を仕掛けた。

落下するバンシィ
リディ「友軍・・・?」

アームド・アーマーBSをセットするバンシィ
リディ「・・・いや!」
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武装を構え、明らかに攻撃の意志を示すバンシィを見たリディは友軍機ではないと判断し、バンシィに攻撃を仕掛けた。しかし、バンシィは圧倒的な機動力でデルタプラスのビームをかわし、アームド・アーマーBSからビームを射出した。リディはその攻撃をかわしながらデルタプラスをシャンブロの残骸の下に潜り込ませた。しかし、バンシィのビーム攻撃は巨大なシャンブロの装甲を切り裂き、シャンブロはあっけなく崩壊してしまう。

バンシィは砂ぼこりとともに地上に降り立った。バンシィの眼光はバナージの乗るユニコーンガンダムに向けられていたが、ロニを失い傷心のバナージは反応しきれずにいた。リディが逃げるようバナージに警告を送った。

地上に降り立ったバンシィ
リディ「逃げろ、バナージ!」

しかし、その声もむなしくバンシィはユニコーンに体当たりを食らわせ中に乗っていたバナージはコクピット内の衝撃で気絶してしまう。

パイロットが気絶してしまったユニコーンガンダムは、バンシィとともにロンド・ベルの旗艦、ラー・カイラムに収容された。ラー・カイラムの中で意識を取り戻したバナージは、ユニコーンの隣に屹立していたバンシィを見て驚いた。さらに、マリーダがバンシィのコクピットから出て来るのを見て愕然としてしまう。

モニターがマリーダの姿を映し出した直後、La+プログラムが起動し、全天周囲モニターに最終座標が表示された。バナージはその表示された最終座標のデータをロックした。バナージの認証がなければシステムは起動しない上に、当のバナージも尋問を受けても口を割るようなことはしなかった。そんな彼の強固な態度に手を焼いたアルベルトを見かねたマーサは、バナージを説得するためにミネバを差し向け説得させることにした。

バナージに興味を持ったラー・カイラムの艦長、ブライト=ノアは、独房に入れられたバナージに接触した。ブライトのフランクな態度に心を少し開いたバナージは、指定座標を戦場にしないために座標をロックしたことをブライトに伝えた。それを聞いたブライトは、バナージに箱のありかは秘匿しておいて良いと告げる。そして、悩む彼をこのように激励した。

ブライトあきらめるなよ。君の目には力がある。困難を糧にできる強い目だ。あきらめずにいれば必ずチャンスをものにできる。

傷心のバナージはブライトの話を素直に聞き入れられず、力なくこのように返した。

バナージそんな力、俺にはありませんよ。全部偶然なんです。ユニコーンに乗ったのも、ここでこうしているのも・・・。

そんな彼を、ブライトは過去自分が接してきたガンダムのパイロットたちのことを絡めながら、激励する。

ブライト本当にそうかな?その時、君の目の前にガンダムがあったことは偶然かもしれない。これまでガンダムに乗ってきた者たちも、皆そうだった。だが、ガンダムに乗るかどうかは自分で決めたことであって、偶然ではないはずだ。違うか?その時、君にガンダムに乗る決意をさせたのは何だ?

ブライトの言葉を受けて、バナージはオードリーのことを思い出し、自らを奮い立たせた。

バナージ助けたい人がいるんです。オードリー=バーン、みんながミネバ=ザビって呼んでいる女の子です。

バナージの話を聞き、参謀と結託し、軍を欲しいままにしているビスト財団のやり方を面白くないと思っていたブライトは、グリプス戦役を共に戦ったベルトーチカ=イルマに密かにコンタクトを取った。ネェル・アーガマを密かに撃沈するため、新造戦艦ゼネラル・レビルが動き出したことを知ったブライトは連邦とネオ・ジオン双方にコネクションを持つルオ商会を通じて、ガランシェールと連絡を取ることをベルトーチカに持ちかけた。そして、かつてのホワイトベースクルーで今はフリーのジャーナリストをしているカイ=シデンを仲介役とし、ガランシェール隊にミネバとユニコーン奪還作戦を持ちかけたのだった。

ユニコーンガンダムは、マーサの乗る巨大飛行空母ガルダに移送されることとなった。ブライトはバナージに、空中輸送中の隙をついてガランシェール隊が攻撃を仕掛けることを告げ、彼らと共闘してミネバを連れ出すように持ちかけた。そして、救援に来るネェル・アーガマと合流するように告げた。

ユニコーンを起動させるバナージを遠くで見ながら、彼の姿にかつてのガンダムのパイロットたちの面影をブライトは重ねるのだった・・・。

ユニコーン、起動!
ブライト(絶望を退ける勇気を持て・・・。君がガンダムのパイロット、ニュータイプであるなら!)

バナージ「オードリー・・・。行くよ!」

THE BATTLE
武装をすべて解除されたユニコーンガンダムは、バンシィとともにベースジャバーに乗せられガルダを目指した。ユニコーンガンダムの護衛としてリディのデルタプラスとトライスターのジェスタ3機がそれぞれラー・カイラムのカタパルトから射出される。

ユニコーンには、バンシィのアームド・アーマーBSが付きつけられ身動きが取れないようにされていた。バナージはバンシィに乗るマリーダに必死に語りかけるが、マリーダは聞く耳を持たなかった。

ベースジャバー上の二機
プルトゥエルブ「武装はすべて解除してある。無駄な抵抗はしないことだ。」

バナージ「マリーダさん!」

プルトゥエルブ「私はプルトゥエルブ。マリーダなどという名ではない!」

バナージ「!?何を言っているんです?どうしてそんなMSに乗っているんですか?キャプテンやみんなも心配して・・・。」

プルトゥエルブ「気安く話しかけるな。」

二人の通信にアルベルトが割って入ってきた。アルベルトはマリーダにバナージの言うことを気にするなと告げ、マリーダのことを気にかけた。

こんなやり取りをしている間に、ベースジャバーはガルダを目視できる距離に入った。バナージがモニターのズーム機能でガルダを確認したその直後、雲海をかき分けてガランシェールが出現した。ガランシェールの内部からアームで固定されたギラ・ズールが出現し、攻撃態勢に移った。

ガランシェールの出現を受けて、ガルダからアッシマーの発展機であるアンクシャが発進し、ガランシェールと交戦を開始した。ガランシェールには高出力のスキウレが搭載されており、アンクシャを次々と撃破していく。

その様子を低空飛行をしていたラー・カイラムも確認したが、ブライトはあくまでユニコーンの移送が主任務だと判断し、トライスターのジェスタには攻撃命令を出さなかった。むろん、これはブライトの差し金であり、バナージのオードリー救出作戦を支援するためのものであった。

ガランシェールから、1機のベースジャバーがガルダに向けて飛び立った。ベースジャバーには、ジンネマンが乗っており、ミネバを奪還するためにガルダに取りつこうとしていた。そのベースジャバーを確認したマリーダは、アームド・アーマーBSをジンネマンの乗るベースジャバーに向ける。しかし、ジンネマンの思念を感じ取ったマリーダは再調整前の記憶が錯綜し混乱してしまう。

バンシィが混乱している隙をつき、バナージはユニコーンガンダムをバンシィに組みつかせた。バナージはマリーダとジンネマンを戦わせたくはなかったのである。

バンシィに組みつくユニコーン
バナージ「キャプテンとマリーダさんを戦わせるわけには・・・!」

バナージはバンシィの拘束をうまく解くと、ベースジャバーからユニコーンを降ろさせた。落下するユニコーンをバンシィはアームド・アーマーBSで攻撃するが、ユニコーンはバーニアをうまく吹かしてその攻撃を回避する。

バンシィの攻撃をかわすユニコーンガンダム
ロールオーバーで画像が変わります

バーニアをフルスロットルさせ、上空に舞い上がったユニコーンガンダムは、ワッツの乗るジェスタを足蹴りしてベースジャバーを奪った。ベースジャバーを奪ったユニコーンにアンクシャがビームサーベルで切りかかるも、ユニコーンガンダムはアンクシャに組みつきアンクシャのマニピュレーターを破壊して、アンクシャからビームサーベルを奪った。

ベースジャバーでガルダに接近したバナージは、ジンネマンのベースジャバーがガルダに張り付き、ジンネマンがガルダに飛び移ろうと試みているのを確認した。一方、先にガルダ内に到着していたアルベルトはマリーダに張り付いているベースジャバーを撃墜するよう指示を出した。

ジンネマンをかばうためにバンシィの前にユニコーンガンダムを滑り込ませたバナージは必死にマリーダに語りかけた。マリーダは彼の言葉を無視して、ビームサーベルでユニコーンに切りかかった。バナージはアンクシャから奪ったビームサーベルを展開し、その剣戟を受け止めた。

切り結ぶ両機
プルトゥエルブ「マスターはパイロットとコクピットが確保出来ればいいと言った!」

バナージ「目を覚ましてくれ!あなたのマスターは・・・キャプテンはそんなこと・・・!」

プルトゥエルブ「うっ・・・!」

再調整前の記憶と再調整後の命令が錯綜し、マリーダは苦しみ出した。そんな彼女にアルベルトは必死に語りかけ、指示を出す。バナージの声とアルベルトの声が混ざり合うのにいら立ちを感じたマリーダは、絶叫し、その叫びに呼応するかのようにバンシィのNT-Dが発動、金色のサイコフレームを展開して再びデストロイモードに変形した。

デストロイモードへの変形@
プルトゥエルブうるさい!
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デストロイモードへの変形A
ロールオーバーで画像が変わります

デストロイモードへの変形B
バナージ「マリーダさん・・・。」

プルトゥエルブガンダムは・・・敵!
ロールオーバーで画像が変わります

バンシィをデストロイモードに変形させたマリーダは、ガルダの上にバンシィを降ろしガンダムに対しての敵意をむき出しにしてユニコーンをにらみつけた。その敵意に呼応するかのように、ユニコーンガンダムのNT-Dも起動した。しかし、NT-Dのシステムに呑まれることを恐れたバナージは変形するユニコーンのコクピットシートを力づくで押さえつけ、デストロイモードへの変身を止めようとした。

ユニコーンの変形を阻止するバナージ
バナージ「駄目だ、ユニコーン!引っ張られるな!こらえろ!!」

力づくでシステムを押さえている最中のバナージをガルダの上に降り立ったバンシィは狙撃した。

ユニコーンを狙撃するバンシィ

バナージはベースジャバーの機動力を巧みに使って、バンシィの攻撃をかわしていった。しかし、アームド・アーマーBSのビームがついにベースジャバーの底面を捕えてしまったため、バナージはバンシィと同じくガルダの上に降り立ちバンシィと組み合った。組み合った両機のサイコフレームが共振し、二機の周囲に力場が発生した。この力場は、サイコ・フィールドと呼ばれるもので、かつてアクシズを押し返したνガンダムから発生した光と同質のものだった。

組み合う両機
プルトゥエルブ「光・・・。私を救ってくれる光・・・。誰にも奪わせはしない!」

バナージ「違う!これは違うよ、普通じゃない!これは危険な光だ!」

二機から発生したサイコ・フィールドは近づいてきたアンクシャをいとも簡単に吹き飛ばし、ガルダの尾翼にぶつかったアンクシャは爆発四散してしまう。その力にオードリーが巻き込まれないか心配するバナージ。そんな彼の事情など構うことなく、マリーダはバンシィの近接専用の武器、アームド・アーマーVNを熊手状に展開してバナージに襲いかかった。

アームド・アーマーVNを展開するバンシィ
バナージ「これじゃあ、オードリーが!」
ロールオーバーで画像が変わります

バンシィの武器の威力にいち早く気付いたバナージは、バンシィの腕を掴んでその攻撃を受け止めた。システムに屈服されることなく、ユニコーンを自在に操る様子を見たマリーダは、またしても過去の記憶を錯綜させた。

記憶が錯綜するマリーダ
プルトゥエルブ「完全に制御している。あの子がこんな風に・・・。あ・・・あの子・・・?」

バンシィの腕を押し戻し、ユニコーンガンダムはバンシィから離れた。

AUDREY
一方、デルタプラスで護衛に出ていたリディは、一連の戦いの様子を見てブライトを含めた自分の周囲の人間がグルになって、バナージを支援していることに気づき、腹を立てていた。彼はデルタプラスを上昇させ、バナージよりも早くミネバを連れ戻そうと、デルタプラスを上昇させガルダの中に侵入させた。

ガルダに向かうリディ
リディ「そういうことか。みんなグルかよ!させるかっ!!」

一方、交戦が始まってしまったことでマーサらはミネバの移送を予定より繰り上げることに決めた。シャトルに乗るためガルダのMS格納庫内のキャットウォークを移動しているミネバ達の前に、デルタプラスが現れた。

デルタプラスをお得意の変形着地により、ガルダの中に入れたリディはコクピットから出てミネバを連れ出そうとした。当然護衛の者がリディに対して銃を向けるが、リディはマーセナス家の家柄を盾に取り、マーサらを脅すのだった。ユニコーンガンダムとバナージはくれてやるが、ミネバだけは返してもらうというリディに対して、ミネバは自分を連れ出してどうするのかと問いかける。 しかし、リディは連れ出した後の展望は全くなかった。そして、リディは箱の真相を知ってしまった苦悩を吐露する。そんな彼に対し、ミネバは箱の真実を話すように促したが、リディは黙っているままであった。

彼らの会話に割って入るかのように、ジンネマンが上の階から自動小銃で銃撃を仕掛けてきた。リディはミネバをかばおうとするが、ジンネマンが放った閃光弾の閃光をまともに見てしまい、目がくらんでしまう。ジンネマンの意図を汲んだミネバは、ジンネマンが放った煙幕にまぎれて走り出し、ジンネマンと合流するのだった。

護衛の人間と銃撃戦を繰り広げながら、ジンネマンはミネバに降下用のパラシュート付きのノーマルスーツを手渡し、ミネバに先に降下するよう告げた。ミネバはその言いつけを守り、キャットウォークを進んだがバンシィとユニコーンのサイコフィールドに巻き込まれたアンクシャの爆発により、降下用のパラシュートが破損してしまう。

幸い、ミネバはけがを負わなかったが、崩壊したキャットウォークにつかまっているという危険な状態だった。そんな彼女を助けようとリディは彼女に手を差し伸べる。しかし、ミネバはリディの手を掴もうとはせず、彼にこう告げた。。

ミネバリディ、私とあなたの行く道は違う。私はザビ家の女です。この目でラプラスの箱の正体を見極めます。ゆがんだ秩序でも戦争よりはマシだと信じてきましたが、それが人を窒息させるだけの物なら・・・。父や祖父のように大罪を犯すことになるのかもしれない。でも私は・・・。

そのようにいう彼女に対し、リディは激昂しながらこう切り返した。

リディ一人で世界と戦うつもりか!?誰も世界が変わるなんて信じちゃいない!みんな自分のいない百年後の世界なんか、どうでもいいんだ!!そんな奴らのために、そいつらを敵に回してそうまでして何の意味が・・・?

これは現実を変える力のないことを自覚したリディの絶望であった。そんな彼に対し、ミネバは・・・。

ミネバ一人ではありません。さようなら、あなたのことは忘れない。

そういうと、ミネバは掴んでいた手を放し、成層圏を浮かぶガルダから身を投げた。かくして、ミネバに惚れていたリディは彼女に完璧に振られてしまう。落下しながらミネバは祈るように手を組んでユニコーンに乗るパイロットの名を呼んだ。

ミネバ受け止めなさい・・・。バナージ!

その声を聞いたバナージはユニコーンガンダムの操縦かんを握り、ユニコーンをガルダから落下させた。

バーニアを吹かして飛び降りるユニコーン
バナージ「・・・!?オードリー!!」
ロールオーバーで画像が変わります

アームド・アーマーVNを構えるバンシィすれすれを横切り、バナージはあれだけ拒んでいたユニコーンのNT-Dを発動させた。バナージは、ユニコーンガンダムに語りかける。

NT-Dを発動させるバナージ
バナージ「やれるな・・・?ユニコーン!!
ロールオーバーで画像が変わります

バナージの想いに呼応し、ユニコーンガンダムはNT-Dを発動させた。禍々しい赤色を発するNT-Dの起動時のモニターが、いつもと違い優しい緑色の光を発していた。ユニコーンガンダムは落下しながら装甲部をスライドさせサイコフレームを露出させた。デストロイモードに変形したユニコーンは、背面のバーニアを吹かしながら落下するオードリーの下へと向かった。

オードリーの下へと向かうユニコーン
ロールオーバーで画像が変わります

落下する白亜の機体が目の前に現れたことにより、ミネバは安堵の息を漏らした。デストロイモードに変形し、バナージの意志が直接反映されるユニコーンガンダムの巨体は落下するミネバとの相対速度を微調整しながら、ミネバを優しく受け止めた。

落下するミネバを受け止めるバナージ
ミネバ「ああ・・・。」
ロールオーバーで画像が変わります

ミネバを受け止めたバナージは、コクピットハッチを開けマニピュレーター上の彼女に手を差し伸べた。ミネバはその手をしっかりと取り、バナージはミネバをユニコーンガンダムのコクピットに引き入れた!ミネバを救出したバナージだったが、飛行能力のないユニコーンはただただ落下するだけだった。再び操縦かんを握ったバナージは、ミネバに対し力強くこういった。

バーニアを吹かすユニコーン
バナージ「何とかする!
ロールオーバーで画像が変わります

その言葉は、インダストリアル7で落下するミネバを受け止めプチモビの中で発したものと同じだった。しかし、その口調はインダストリアル7のときよりも力強く、頼りがいのあるように聞こえた。デストロイモードに変形したユニコーンガンダムのGはミネバの顔をゆがませた。ミネバの身を案じるバナージの前にガランシェールが現れた。ユニコーンの下を飛ぶガランシェールにバナージはユニコーンを着地させる。ついに再会を果たした二人はその喜びをユニコーンのコクピットの中で分かち合った。

バナージ君の声、はっきり聞こえた。うれしかった。自分がなんでここにいるのか、わかった気がした・・・。君が呼んでくれたから。

ミネバ私だって・・・。

バナージこの感覚が本物なら、マリーダさんにも俺の声が届いているはずなんだ・・・。必ず連れ戻すよ。君はここで待っていて。いいね?

ミネバはい!頼みます、バナージリンクス!

リディのときとは対照的に、ミネバは顔に笑みを浮かべた。バナージはミネバをガランシェールに預け、上空を飛ぶガルダに再びユニコーンを向かわせた。

MARIDA
ユニコーンガンダムが再びやってきたことを感知したマリーダは、ガルダからバンシィを降ろし、再びアームド・アーマーVNを展開した。空中でユニコーンガンダムと組合い、両機は再びガルダの中へと入っていった。ガルダの中でも両機はみ合い、キャットウォークを潰していった。キャットウォークにいたジンネマンは両機のもみ合いに巻き込まれそうになったが、ジンネマンに気付いたマリーダは無意識に彼をかばった。

組み合う両機

ミネバに振られ傷心のリディは、デルタプラスのコクピットに再び乗りこんでいた。そんな彼の前に再び2機が現れたことで、リディはガンダムに対する怒りを爆発させ、影からこっそりガンダムを狙撃しようとした。

影からこっそりガンダムを狙うリディ
リディ「忌まわしいガンダムどもが・・・!」

その様子に気づいたマリーダは、今まで組み合っていたユニコーンを無視してデルタプラスのところへ機体を駆けよらせた。バンシィは、デルタプラスの首を掴み、締めあげた。

締めあげられるデルタプラス
プルトゥエルブお前もガンダムか!?

リディはとばっちりを受けた形でバンシィの圧倒的な力の前にねじ伏せられてしまう。

殴られるデルタプラス
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切り刻まれるデルタプラス
プルトゥエルブガンダムは敵!たおすべき敵!
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デルタプラスをボコボコにするマリーダにバナージは必死に呼びかけるが、マリーダは攻撃の手を休めなかった。かくしてデルタプラスは完全に大破し、その残骸をガルダのデッキの上にさらしたのだった。

デルタプラスを痛めつけたマリーダは再びユニコーンに機体を向けた。

ユニコーンをにらむバンシィ
プルトゥエルブ「いちいち頭に響く声を出す!」

バナージ「頭が痛いのは本当のあなたが抵抗している証拠だよ・・・。」

キャットウォークから降りたジンネマンは、マリーダの乗るバンシィの下へと駆けより、マリーダに呼びかけた。

マリーダに呼びかけるジンネマン
ジンネマン「マリーダなら聞け!俺だ!ジンネマンだ!!」

プルトゥエルブ「何だ!?ジンネマン・・・マスター・・・?」

ジンネマン「財団のやつら、再調整しやがったな。マリーダ、戻ってこい!お前が戻ればみんな元通りだ!!」

プルトゥエルブ「マスターは・・・私のマスターは・・・。」

ジンネマンの声は、マリーダの記憶を揺さぶり起こした。マリーダは、「ゴミ溜め」からジンネマンに救われた際に彼から見せられた彼の娘の写真を思い出していた。その記憶からマリーダは頭を抱えて、片目には涙を浮かべていた。そして、尚もジンネマンの魂の叫びがこだまする!

ジンネマンそこ開けて降りてこい、マリーダ!一緒に宇宙そらへ帰るんだ!俺と来い!!俺を独りにするなぁぁぁぁっ!!!

バナージは、ジンネマンとマリーダの様子を固唾をのんで見守っていた。そこに、デルタプラスのコクピットから負傷を負ったリディが這い出てきた。頭部から出血しているにもかかわらず、リディは怒りの表情でうめきながらガンダムに手持ちの銃を連射していた。その様子に気づいたマリーダは機体をリディの方に振り向かせた。

振り向くバンシィ
リディ「このガンダムめが!ガンダム・・・ガンダム・・・ガンダム・・・ガンダム・・・!ガ・・・」

プルトゥエルブ「!?私がガンダム・・・?私が・・・敵!?」
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リディはうわごとのようにガンダムの名を叫びながら、その場に倒れ意識を失った。そのリディの声で、マリーダの中のすべての記憶がよみがえり、施されていた再調整が解けてしまった。再調整が解けたと同時に、マリーダは意識を失いバンシィのNT-Dの光も消えた。バンシィは機体を変形させながらその場に倒れ、バナージは倒れるバンシィをユニコーンガンダムで受け止めた。

元に戻り、倒れるバンシィ
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倒れたバンシィのコクピットハッチが開き、気圧差から中にいたマリーダがバンシィのコクピットから投げ出された。まるで、異物を排除するかのように・・・。落下するマリーダをジンネマンは受け止め、彼女を抱きしめた。そして、彼は自分の娘の名前を口にする・・・。

ジンネマンとマリーダを見つめるバナージ
ジンネマン「マリィ・・・!」

ユニコーンのコクピットから二人の様子を見ていたバナージは、安堵の息を漏らした。一方、シャトル内でマリーダがバンシィから排除されたことを確認したアルベルトは放心状態になってしまう。

かくして、成層圏の高高度で繰り広げられた激闘は、袖付きがミネバを奪還する形で幕を下ろした。しかし、バナージとミネバにさらなる試練が訪れることを誰も予想だにしていなかった。

・・・待て、次回!

人は弱くて・・・不完全で・・・。だから託すんだ!(ROBOT魂 フルアーマーユニコーンガンダムのコラムへ)

バンシィのことですな・・・。一言では言えない事情があるのですよ。(もどる)