MG フォースインパルスガンダム

バンダイ マスターグレードシリーズ1/100キット

定価4860円(税込み)


MG フォースインパルスガンダム
インパルスガンダムのコラム新生!
連合に奪取された新型ガンダムを奪還せよ!!

このコラムは10年近く前の放送時期に執筆されたコラムに加筆・修正しています。当時の空気感を残すために、結構過激な言動がありますがご了承ください。

はだしのシン
1年の間をおき、ガンダムSEEDの続編『機動戦士 ガンダムSEED DESTINY』が放送されているわけであるが、今回の種ガンダムは違う方向で楽しめているのでプラモデルのレビューをやってみようかと思う。今回はその初回ということで、結構売れ残っている主人公機フォースインパルスガンダムのお話。

この作品の第1話は、連合軍によるオーブ解放作戦のさなか、主人公シン=アスカが家族を失うシーンから始まる。避難途中に、妹が携帯電話を落としたので拾いに行ったら、戦火に両親と妹が巻き込まれ、吹き飛ばされるという恐ろしいシーンなのだ。冒頭で「妹萌え〜 」とか思った人は、次の瞬間にその妹と両親の無残な死体と、吹き飛ばされた妹の腕を見てどう思っただろうか。種ガンダムの特徴として、このように残酷なシーンが流される。それはそれで良いだが、この作品の場合それを深めることが出来ていないので、結構非難の的になっている。これなら、史実を元にした「はだしのゲン」 とかを読んだほうが良いと言うことだろうか。

と言うわけでシンに残されたのは、妹の携帯だけ。すべてを失った彼は、プラントに渡りザフト軍のアカデミーで訓練を受け、エリートパイロットになった。
1話のラストで3分ほどつぎ込んで愛機であるインパルスガンダムで颯爽と登場し、2話でもそこそこ活躍していたのだが、その後の彼の扱いは主人公とはいえないほど扱いが悪い物であった。

ソードインパルスの決めポーズ
「また戦争がしたいのか、あんたたちは!!」
序盤ではこのシーンが一番かっこよかったですね。

たとえば、第6話「世界の終わる時」では元パトリック=ザラ派だったゲリラ部隊がユニウスセブンを地球に落下させるいわゆるコロニー落とし作戦を行った。このとき、ミネルバに乗船していたアスランがザクウォーリアーに乗ってシンらとともに出撃したのだが、シンそっちのけでイザークやディアッカとの巧みな連携プレイで連合側3機のガンダムを圧倒した。そのときのシンは呆然と彼らに見とれているだけ。インパルスも一応、敵を撃墜しているが影がやっぱり薄い。その後も主人公なのに8秒しか登場しなかった回もあったりする。更には、フレッツスクエアのSEED120%では司会の人に「良かったダイジェストにシンが登場しないことにならなくて」と言われる始末。
監督は公式サイトのインタビューで新しい主人公を置いて、旧キャラクターと絡めてあたらしい味を出すと言っているが、主人公を逆に食ってしまっていると気づかないのだろうか。

効率の良いシステム?
さて、こんな影の薄いインパルスガンダムであるが、インパルスと名の付くだけあり衝撃的であった。ただし、悪い方向で。まず、そのフォルムを見てみよう。

HGCE フォースインパルスガンダム 前 HGCE フォースインパルスガンダム 後
2016年に発売されたHGCE フォースインパルスガンダムをもとに
どこかのガンダムとコンセプトとシルエットが似ていないだろうか

このデザインどこかで見たような気がしないだろうか?そう、ストライクガンダムとそっくりなのである。コンセプトも、フォースシルエットを装備して機動性に長けたフォースインパルスガンダムに。ソードシルエットを装備して、接近戦に長けたソードインパルスガンダムに。ブラストシルエットを装備して砲撃戦に長けたブラストインパルスガンダムに・・・と言う風にコンセプトまでも一緒。更に、腰にはフォールディングレイザーという折りたたみナイフが入っており、いよいよ二番煎じというのは否定できない。
ただ、今回はバックパックが変われば機体の色が変わるので、同じキットが余ると言う失敗を克服しているように思える。


ソードインパルスガンダム ブラストインパルスガンダム

さらに、悪い意味での衝撃は続く。このインパルスガンダムはコアスプレンダーという小型戦闘機を中心にレッグフライヤーとチェストフライヤーが合体しインパルスガンダムになると言うシステムを取っている。
この合体システムはコアブロックシステムと言って、初代ガンダムに始まり、ΖΖ(ダブルゼータ)ガンダムV(ヴィクトリー)ガンダムなどを先祖に持つ由緒正しいシステムなのだが次の図を見てみよう。

コアスプレンダー チェストフライヤー
レッグフライヤー フォースシルエット
上から時計回りにコアスプレンダー、チェストフライヤー、フォースシルエット、レッグフライヤー

このチェストフライヤーとレッグフライヤーのデザイン。やる気を微塵も感じられない。特にレッグフライヤーは変形していると言えるだろうか?これで、空を飛んでいるから不思議な物だ。
初代ガンダムを除いて、他のコアブロックシステムを採用したMSは大体航空機型に変形している。特にVガンダムは面白かった。富野監督は合体シーンを敵に妨害させて緊迫感を与えていた。合体中に妨害が入ってくるのは普通に考えると当たり前で、グラヴィオンと言った最近の合体するロボットは合体中にバリアを貼るようになっている。
このほかにも、Vガンダムは下半身をぶつけるブーツ攻撃と言った面白い演出がなされている。

Vガンダムの航空機形態
この可変機構を知っている人にとってはインパルスの変形機構は手抜き以外の何物でもない

この様に、コアブロックシステムは面白い演出につなげることが出来るのだが、序盤のインパルスガンダムの合体シーンのそれは単なる尺伸ばしにしか見えない。連合側ガンダムのパイロットの声優である方々もSEED120%のトークで合体シーンを見ると、「これ、うちらチャンスだよねー。」、「合体誘導レーザーを鏡で反射して合体阻止だ!」、「どこが効率が良いんだろう?」などと身も蓋もないないことをのたまっていた。

旧HGのキットの出来であるが、HGということを差し引いても、塗りわけが前作と比べると少々難がある。たとえば、角。HGフリーダムガンダムの場合、角の黄色の部分が白色の部分よりすくないと言うことで白成型されている。が、インパルスの場合、黄色成型に戻っている。この上から白塗装をしなければならないので塗装難度は高めである。

盾も、HGカラミティガンダムは見事に塗り分けられていたのだがインパルスガンダムは赤色一色に戻っている。反面、サブキャラのHG ザクウォーリアー(1000円)の塗りわけはほぼ完璧だっただけに、適当に作ったとしか思えないのが残念だ。この様に主役機でありながら、どの面から見ても「不遇」と言うのがなんとも言えない。

ただ、この変形システムはポージングに一役買っている。肩を引き出すことが出来るので怒り肩にする事が出来るのだ。腕の良い人はフォールディングレイザーを自作するのもありかもしれない。可動もHGの水準は満たせている。別に駄目駄目なところばかりではないので、見かけたら買ってあげよう。主役機なのにまったく売れていないのは不憫すぎる

今後のインパルスガンダムの評価は2号メカである、デスティニーガンダムが登場するまでにいかに活躍できるかにかかっていると言っても過言ではない。テレビでみんなもインパルスガンダムを応援してあげよう。

これが・・・HG発売から3年経ったキットの実力かよ!?
このように、放送当時は散々な扱いを受けていたインパルスガンダムを面白可笑しく皮肉たっぷりに紹介していたのだが、劇中で主人公らしい活躍もそこそこ与えられるようになった。特に、放送から8年経過してから放送されたHDリマスター版では作画が大幅に修正されより格好良い戦闘シーンを拝むことができる。また、さんざん揶揄した変形・合体シーンも重田智氏の作画による迫力のあるもので、これがロボットアニメを知らない世代に受け、人気を博したということは今となっては否定できない。

そんな重田氏の監修を受けて発売されたのがMG フォースインパルスガンダムである。このフォースインパルスガンダムのコンセプトは、アニメ作画のイメージを重視したディティール、プロポーションを再現するというものである。MGのオリジナル解釈を交え、ダサいと揶揄した合体シーンを完全に再現させることができる優れモノなのである。その詳細を見ていこう。

MG インパルスガンダム 本体 前 MG インパルスガンダム 本体 後ろ

まず全体像であるが、細部にモールドが追加されており間延びした感じはなくなっている。本体に関しては塗装をしなくても色分けが完全にされている。また、ポージングを決めた時にシルエットがよくなるように脚部は非対称になっている。これは前に発売されていたMG デスティニーガンダムからフィードバックされたもので劇中のケレン味のきいたポーズを取らせることが可能となっている。

こちらにフォースシルエットを取り付ければ、フォースインパルスガンダムが完成する。

MG フォースインパルスガンダム 前 MG フォースインパルスガンダム 後
空戦・宇宙戦に対応するインパルスの基本形態

フォースシルエットの翼には、立体的なディティールが追加されよりリアルな航空機感が出ている。また、この翼は格納形態を再現するために折りたたむことも可能になっている。

格納状態
翼が折りたためるので発進シークエンスを完全に再現できる

インパルスガンダムは先に述べたように、3パーツに分割した状態で出撃する。出撃時に本体とシルエットが合体し、戦場に向かうわけである。MGでは、この変形・合体プロセスを完全に再現させることができる。

母艦のミネルバから、コアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤーが射出される。これらが射出されると並走しながらコアスプレンダーがまず変形する。翼下部に取り付けられたミサイルが分離し、機種が折りたたまれ、翼が収納される。

コアスプレンダーが飛行する図
ここからはBGM、「出撃!インパルス」を流しながらお楽しみください。
ロールオーバーで画像が変わります

コアスプレンダーの変形
ロールオーバーで画像が変わります

続いて、変形したコアスプレンダーにレッグフライヤーが接続される。

レッグフライヤーとの合体
ロールオーバーで画像が変わります

続けてチェストフライヤーが合体したレッグフライヤーに接続、腕を展開することでインパルスガンダム本体が完成する。

チェストフライヤーの合体
ロールオーバーで画像が変わります

インパルスガンダムの完成
劇中ではディアクティブモードになっています。
ロールオーバーで画像が変わります

完成したインパルスガンダム本体にシルエットフライヤーが合体すれば、インパルス本体の色が灰色から青色に変わり、フォースインパルスガンダムが完成する。盾を展開してポーズを決めるところまでも再現することが可能である。


分離シーン
ロールオーバーで画像が変わります

シルエットフライヤーの接続
ロールオーバーで画像が変わります

シールドの展開
ロールオーバーで画像が変わります

加速をかけるフォースインパルス

分離状態へのさほど難しい変形ではないので完全変形する。それぞれのパーツを見ていこう。

チェストフライヤー 前 チェストフライヤー 後ろ

チェストフライヤー 横

チェストフライヤーにはHGではなかった見た目を重視するギミックも追加されている。胸パーツのアーマーを上げることで顔を隠すことが可能なのである。

顔を隠すギミック
航空機に見えなくともせめて人の時の顔を隠そうという配慮

続いてレッグフライヤーを見てみよう。

レッグフライヤー 前 レッグフライヤー 後
レッグフライヤーには連動ギミックが追加されている

チェストフライヤーには連動ギミックが追加されており足を折り曲げると膝アーマーが連動してスライドし展開する。この技術はMG ストライクフリーダムガンダムなどからのフィードバックによるもので、これにより変形時のスタイルがよくなっている。

コアスプレンダー 前 コアスプレンダー 後

コアスプレンダー 横
小さい機体にたくさんのギミックが詰め込まれたコアスプレンダー

コアスプレンダーは小型ながら、ギミックの塊である。ここはHGでは別パーツの差し替えで再現していたところだが、MGでは機種の折り畳みから翼の折り畳みをすべて劇中通りに再現させることができる。

ただし、色分けに関しては不完全で尾翼のイエローと主翼のブルー、そしてミサイルポッドの先端をグレーで部分塗装する必要がある。こちらは塗装面積が小さいのでガンダムマーカーなどでさっと塗ってしまえばいいだろう。2017年現在の小さいパーツに至るまで色分けしているキットを見た後だと、少し物足りない箇所である。

フォースシルエットは、アニメのイメージを再現するためにビームサーベル基部を前に倒すことができる。

フォースシルエット 前 フォースシルエット 後
アニメのイメージそのままのフォースシルエット
もちろんシルエットフライヤーも取り付けられる
これは後年に発売されたHGCEでは再現されていない貴重なギミックである。

フォースインパルスの武装はオーソドックスなビームライフルとビームサーベルが付属する。また、腰内部に格納されているフォールディングレイザーも付属している。

フォールディングレイザー
ストライクと同じコンセプトの武器が付属

また、フリーダムとの対戦を再現するためにエクスカリバーが一本付属している。これはもちろん手に持たせることが可能で、フリーダムガンダムとのバトルを再現させることが可能である。

エクスカリバーを構えたところ 二刀流

このように、MGのフォースインパルスガンダムはシンプルながらギミックが充実しており大変お買い得なキットになっている。後年発売されたHGCEは変形がかなり簡略化されているので変形を楽しみたい人はMGを購入するようにしよう。

ミネルバ、メイリン!デュートリオンビームを!!(HGCE インパルスガンダムのコラムへ)

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