RG フリーダムガンダム

バンダイ RGシリーズ

定価:2650円(税込)

RG フリーダムガンダム
新ブランド、RGでフリーダムガンダムが復活!

遺伝子組み換えで、彼女とガンダムを奪いました
ガンダムSEEDで賛否が分かれているもののひとつは、主人公キラ=ヤマトの存在である。女性には(一部そうでない人もいるが)人気があるのだが、男性には受けが悪い。まず、この主人公は前半では泣いてばかりなのである。敵機のジンを落としたら、人殺しをしてしまったと思い悩み(注1)、他の場面で問題出てきても、一人鬱々としていた。

さらに、捕虜であったラクス=クラインを勝手に逃がしても、「本当だったら死刑だよ」と簡易軍法会議で判決が出たのだが、実質お咎め0。これが他のガンダムなら、修正と称して殴られてるのに。
更に言うと、アイドル的存在で許婚もいたフレイ=アルスターとニャンニャンした挙句(オブラートな表現 子供も見ている番組なのにこれはありえないだろう)、結婚相手であるサイ=アーガイルにこのことがばれてしまい、突っかかってきた彼に発した台詞は「サイが僕にかなうわけないだろ」と、腕をひねって一方的にねじ伏せてしまった。

こんなキャラクターに共感しろと言うほうが土台無理な話である。ガンダムSEEDのまずいところが、基本的に話はキラにとって都合のよい方向に進んでいくという点で、キラを贔屓しすぎて話の整合性がおかしくなっている。脚本家(あえて誰とは言わない)の人は何を考えているのだろうか。

そんな彼であるが、第30話「閃光の刻」でアスランのイージスガンダムとの戦闘で激戦の末、イージスガンダムの自爆にあい、行方不明となってしまった。嫌な主人公が消えてせいせいしたと思ったら、その次の回の終盤でなぜかプラントのラクス=クライン邸のベッドにいて拍子抜けした。(注2)

その頃、オペレーションスピットブレイクで、ザフト軍が連合軍の本拠地アラスカに総攻撃を仕掛けようとしていた。アラスカにはアークエンジェルと仲間たちがいるので助けに行きたいということで、ラクスの手引きで新たなガンダムを入手した。それがZGMF-X10A フリーダムガンダムである。

この脱走劇もいい加減なものだった。ラクスは、ザフト軍でも有力者である政治家、シーゲル=クラインの娘なのだが、その権限が発動したのか警備している兵士は敬礼しながら彼女とザフトの赤服を着て変装していたキラをフリーダムの格納庫へと素通りさせてしまう。

格納庫内でフリーダムを見たキラは驚きを隠せなかった。自身が操縦していたストライクと同じガンダムタイプのMSがそこにあったからである。

格納庫内のフリーダム
キラ「・・・!ガンダム・・・?」

ラクス「ちょっと違いますわねぇ。」

その名はフリーダム!
ラクス「これはZGMF-X10Aフリーダムです。でも、ガンダムの方が強そうで良いですわねえ・・・。」

その名はフリーダム!
ラクス「奪取した地球軍のMSの性能をも取り込み、ザラ新議長の下開発されたザフト軍の最新鋭の機体だそうですわ。」

フリーダムの奪取を手引きした事を疑問に思うキラに、ラクスはキラにとって必要な力だと告げ、想いだけでも力だけでも駄目だと言う。キラはラクスに導かれ、フリーダムのコクピットに乗り込み、フリーダムを強制的に発進させる。

翔べ!フリーダム
キラ「想いだけでも・・・力だけでも・・・。」
ロールオーバーで画像が変わります

格納庫のエアロックからフリーダムを飛び立たせ、キラは仲間たちの下へと向かうのだった。

このとき流れていたBGMである「翔べ!フリーダム 」の格好よさに助けられた発進演出は最高なのだが、いかんせん素通りで強奪を許してしまうザフト軍の警備の甘さとご都合主義に萎えた視聴者も放送当時多かった。尚、この強奪を手引きしたことにより、シーゲル=クラインとラクス=クラインはザフト軍内で指名手配され、父親のシーゲルは誅殺されてしまうのだった。
注1 本当は第3話でミゲルの乗るジンを撃墜している。だから、このタイミングで思い悩むのは不自然すぎる。

注2 至近距離からの自爆で助かった理由が誌上展開の「ガンダムSEED ASTRAY」にて語られてている。コクピットのむき出しになってる部分が、自爆直前にセーフティーシャッターなる物で閉じられ助かったとのこと。その後、ASTRAYの主人公であるロウに助けられ、マルキオ導師の家に引き取られたらしい。その後、宇宙に用事のあったマルキオ導師とともに救急カプセルに入れられ宇宙に渡ったそうだ。修道院で治療するよりそっちで治療したほうが良いと導師が判断したためだそうで。・・・ご都合主義バリバリで萎える。更にセーフティーシャッター云々は整合性の前に、本編で語られるべき物なのに。これもガンダムSEEDのまずいところで、重要な描写がされていなくて話のつじつまがあっていない

ぼくのかんがえた、さいきょうがんだむ
このガンダムのデザインを最初に見た時、何だこれはと思ってしまった。翼はなんだかウィングガンダムみたいだし、腰にはガンダムF91のヴェスバーそっくりの武装が、胸のデザインや翼にある武器のデザインもガンダムダブルエックスのそれにそっくりなのだ。更に名前がダサダサ。メカデザイナーの大河原氏もついにネタが切れたか、疲れたか、発狂したかのどれかとしか言いようのない投げやりな物であった。

更に、こいつに備え付けられた設定もかなりまずい。この機体の動力源は何と原子力!ニュートロンジャマーがあるはずなのになぜ原子力エネルギーが使えるのかと思う人もいるだろうが、これを無効にしてしまうニュートロンジャマーキャンセラーを装備しているからなのである。この核エンジンにより、落ちないフェイズシフト装甲(注3)、ランチャーストライクのアグニ並みの威力を誇る高出力ビームの連射を実現させた。さらに、マルチロックオンシステムにより、一度に10機以上の敵機に狙いを定め、これらの強力な武器を一斉射撃して多数の敵をなぎ払うこともできる。まさに無敵とも言える機体となった。

もはや何から突っ込んで良いのかわからないほどのご都合主義な設定で唖然とし、ガンダムもここまで堕ちたかと思ってしまった。ネットでのSEED議論やバンダイのあざとい商売で、私は自分の持っていたガンダム像がどういった物なのか見えなくなっていった。
注3 GATシリーズのガンダム5機はバッテリーで動いているため、バッテリーが切れるとフェイズシフト装甲が機能しなくなる。ちなみに装甲が落ちると、機体の色が灰色になる。
朝まで生激論!ガンダムのどこが面白い?
ガンダムSEED嫌いが加速する中、夏の時に私は某匿名掲示板である面白いスレッドとめぐり会った。そこでは「ファーストガンダムのどこが面白いのか?」と言う題目で議論がされていた。
私がこれに答えを出すなら、「(古くなったのは否めないが)兵器すなわちMSのリアルな描写」、「人間のエゴの鋭い描写(これはガンダム作品全般になるが)」、「ニュータイプ論や戦争とは何かと言った哲学的な点」になる。

だが、それはSEEDにも言えるのではないかと言う話の進行だったのだが、後半の書き込みで非常に心を動かされた物があった。

アニメはアニメに過ぎず、それを超えようとすると破綻する

この言葉を解説しよう。ガンダムの成功でアニメも語れる物になったと富野監督は思った。それがダンバインやイデオンに現れている。・・・がなかなか成功しなかった。更に、Ζガンダムでのアニメファンの反応(注4)やバンダイの商売主義に失望し鬱状態になった。Vガンダムのあたりから富野監督はある事に気づいた。それが「エンターテイメント(娯楽)がエンターテイメントを超えると破綻してしまう」ということ。
視聴者はアニメに娯楽を求めているのであって、高名壮大な哲学と言った物は決して望んでいない。要は面白ければそれで良いということ。そんな物を求めてしまうとかえってつまらなくなるすなわち、破綻してしまうんだと。

富野監督が実際にそう思ったのかは定かではないが、私はこれにかなり納得した。私はガンダムに矛盾のない高尚な設定、ストーリーをのぞんでいるが、そんなのは誰も求めてはいない。ロボットがテレビで暴れてるのが見たい。それで楽しみたい。誰も哲学や文学をしようとは思ってはいない。別にレベルの高い物がなくったってアニメは楽しめるし、恥じる事はない。

これで私は楽になれた。リアルな設定云々は置いておいて、フリーダムガンダムを見ると格好良いじゃないのと思えるようになったし、演出もバンクの使いまわし過多は否めないが格好いい。

こうして私のアニメ観が、「作品」として語られないと駄目というものから変わった。割り切ることで、大体のアニメは楽しめるようになったのである。
注4 リアルを叫ぶガンダムファンだが、変形するMSが出てきてもリアルだリアルだと言い、監督的には主人公贔屓な話の流れにしているのにリアルな人物描写がどうのとか言っているさまを見て失望したとの事。この作品の主人公カミーユ=ビダンは最終回で精神崩壊を起こしているのだが、それはこれに対する監督の警告だそうだ。
プラモデルで舞い降りる剣
主人公機であるフリーダムガンダムのプラモデルはPGを除いたすべてのブランドで発売されている。ストライクと同じく、MGでリメイクされて発売されたのが2004年7月であった。このMGについては、発売前に試作原型が発表されたときの評判は少し低めであった。なぜかと言うと、胴体が少し長く感じられ格好悪く見えるからである。この意見が反映されて、急遽手足が伸ばされたらしい。

ロボットのイメージは、設定画や劇中で異なってくる。劇中では、作画担当者やいわゆる作画の「ウソ」で見る人によってイメージが異なってくるからだ。だから、設定画のデザインが好きな人がいれば、○○と言う人が作画担当の時のデザインがすきと言う人もいる。このように、見る人によって好みが分かれてくる。

MGのデザインは、そのようなイメージの最大公約数を狙って作られている。だから、大体の人は納得できるシルエットなのだが、細かい点が気になる人は改造をしている。このモデルでは、胴体を縮めている人が多い。高い工作技術が必要になってくるが、「自分のイメージに合うガンダム」を作れるのがガンプラの魅力の一つ。

フリーダムガンダムは、翼を展開したハイマットモードとすべての武装を展開したフルバーストモードになることができる。これはHGや1/100のプラモデルでも再現できる。

ハイマットモード フルバーストモード
翼の展開と多彩な折りたたみ武器が特徴のフリーダムガンダム

しかし、福田監督の突然の思いつきにより、この翼と全武装を展開したハイマットフルバーストが劇中では追加された。この形態は元からプラモデル用にデザインされたものではなかったため、1/100とHGでは到底再現することは出来なかった。そこでアニメ放送が終了した後に発売されたMGでは、翼に収納されているバラエーナプラズマ粒子砲の根元を独立可動させることでこの形態を再現した。

MG ストライクガンダムの時は、ネジを止めで可動部分が磨耗しないように配慮されていたのだが、このキットではそれがオミットされABS同士の接続になっている。ネジ止めだったストライクのときは、関節が緩くなってもネジを増し締めすることでテンションを調整することができたが、フリーダムでは磨耗で関節がゆるくなると、ポーズが固定されなくなるのが不便な点だった。

これと同じ問題が、肘とシールドの部分にも言える。ここは、六角形のパーツがあってシールド接続面を隠しているのだがこれがはずしにくい上に、シールドを付けるときの位置では取れやすい。更にシールドの接続もABS同士なので、摩擦でへたれる上に外そうとすると軸が折れてしまう心配がある。デザインの都合上、ポリパーツを使えなかったのだろうが、これは大きなマイナスと言える。

私の場合、左翼のABS同士接続されている可動軸が、なぜか硬すぎてうまく動かなかったので分解しようと3時間ほど悪戦苦闘したのだが、ボッキリ折れてしまった。更に、腰のレールガンを展開させたら左のレールガンのH10パーツが壊れてしまい、またしてもパーツ請求をしなければならない羽目になった。悔しかったのでパーツ請求(注5)したが。

この様に私とフリーダムガンダムはかなり相性が悪い。最初にあれだけ叩いたせいなのか。放映中では壊れにくかったくせに。

このキットにはザフト仕様とキラ仕様のフリーダムガンダムを再現できるようにデカールが付属しているのだが、初回生産分のデカールの文字がすごい事になっていた。"Phase Shift"が"Phase Shit"になっているのである。なんだか、笑えるミスであるが、これはものすごくマイナスである。
注4 取扱説明書にパーツ注文用紙があって、それを切り取って必要事項を記入し、料金分の定額小為替を同封してバンダイに送ればパーツが送られてくる。正規の物でなくても、スケールとプラモデルの名前とパーツの指定番号・数量を記入すればOK。ちなみに取り扱い説明書も請求できてマニア心をわかっている。
RGでよみがえる翼
『SEED』放送から9年経過した2011年11月に、フリーダムガンダムがRG エールストライクガンダムに続いて発売された。このころはガンダムSEEDのHDリマスタープロジェクトが発表された後のことだったので、そのテコ入れという位置づけでもあったのだろう。フリーダムは、後半の主人公機であるにも関わらず、続編の『SEED DESTINY』において後継機であるストライクフリーダムが発売されてしまったため、PGで発売されることはなく、プラモデルではMGがフリーダムの最上位のキットであった。今回のRGは過去のキットができたすべてのギミックを1/144のサイズで再現し、さらにオリジナルのギミックも取り入れられた意欲作となった。それらを見ていこう。

RGのコンセプトの切り取るだけで完成するフレームパーツ、アドヴァンスドMSジョイントを引き続き採用している。このフレームパーツはフリーダムガンダムに合わせて新しい物が作られている。

フレームパーツ 実際に組んだ本体との比較
エールストライクの流用はせず、新規造形されたフレームパーツ

エールストライクのフレームとの違いは、まず腰パーツの形状にある。エールストライクのときは、ボールジョイントに丸ジョイントが付いた板状のパーツが接続されていた。このジョイントが小さいせいで、腰パーツが外れてやすいという欠点があった。フリーダムでは、軸状のパーツにCの字型のジョイントが伸びる構造になっているため、腰パーツが外れにくくなっている。

肩関節の引き出しも構造が見直され、人間ができる以上に腕を前に出すことが可能となった。

肩関節の前方への引き出し
ここまでの可動は不要というくらい前方に出る肩関節

また、幅広いアクションを実現するために股間パーツをスライドさせることができるようになった。これにより、太ももパーツの可動範囲をさらに広げることができる。このギミックは昨今のMGで採用されているが、組み立てを不要としたうえでロック機構まで備えているという恐ろしいパーツとなった。

股関節のギミック
MGで採用されいてたギミックを組み立て工程を経ずに1/144で実現
アドヴァンスドMSジョイントの底力が見える
ロールオーバーで画像が変わります

ただし、装甲を付けてしまうとロックの上げ下げが装甲に邪魔されてやりにくいという欠点もあったりする。

このフレームパーツに装甲を貼り合わせていくと、フリーダムガンダムが完成する。

RG フリーダムガンダム 前 RG フリーダムガンダム 後
1/144のサイズでMG以上の密度を実現したRG フリーダム
MG以上に細かい色分けを実現している

プロポーションはMGと比べて顔が小さく造形されているのがポイントである。最新技術を駆使し、1/144のサイズでも合わせ目が目立たないようなパーツ分割がされている。また、MGでは塗装しなければならなかった頭部のバルカン砲や、ビームライフルの青いラインも別パーツにすることで色分けを再現している。これにより、塗装をせずに設定どおりの色を再現することが可能となった。

デザイン上の変更点は腰部のクスィフィアスレールガン色分けである。設定では砲身が薄いグレーだったのに対し、RGでは砲身の上部が紺色で造形されている。これは上下に分割することで、どうしても目立ってしまう合わせ目を極力目立たなくするようにするためのオリジナルの解釈で、コンセプト自体は努力のたまものだが、アニメ設定を大事にする人にとっては違和感が出てしまう場所である。

クスィフィアスレールガン
合わせ目を隠すため、砲身のカラーがアニメと違うレールガン

武器の保持は、ストライクガンダムと同じく武器側にジョイントが仕込まれており、指が可動する手首に持たせることが可能である。また、ストライクガンダムのときに付属しなかった武器持ち手パーツを利用すると、ストレスなく武器の保持が可能になる。武器持ち手の構造はHGと同じく、プラスチックの分割方式の物を採用しており、保持の面では可動指よりも信頼性が高い。また、左手首用の平手パーツも同時に付属している。

持ち手&平手

フリーダムの大きな特徴である翼は設定どおりに展開させることができる。HGのときは青一色だった翼パーツは、設定どおり分割されており、塗装する必要がなくなった。

ウイングの展開 前 ウイング展開 後
MGでできていた翼の色分けも再現
翼の基部はアドヴァンスドMSジョイントを使用しているため、組み立て不要

さらに、この翼パーツにはRGオリジナルギミックとして紺色を展開させることができる。これによりさらに翼を巨大化させることが可能となった。

翼のさらなる展開
フリーダムの翼は設定上では排熱板も兼ねているので、この展開ギミックは排熱用の物と捉えることもできる

MGから採用されたバラエーナの独立可動は当然再現されている。これにより、RGでもハイマットフルバーストモードが再現することができる。

ハイマットフルバースト
劇中の動きを完全にトレースすることができるので、ハイマットフルバーストがばっちり決まる
ロールオーバーで画像が変わります

このほか、MGでも再現されていたコクピットハッチの開閉も再現している。

コクピットの開閉
MGで再現されていたコクピットハッチの開閉が1/144サイズでも実現!
ロールオーバーで画像が変わります

ラケルタビームサーベルは、可動手首に固定できるようにジョイントが追加されている。また、MGと同じくビームサーベルを連結するためのジョイントが設けられている。アニメのデザインにあった紺色のラインはオミットされている。これは、パーツ分割やシールを使うことを避けたかったからだろうか?

ラケルタビームサーベル
ビームサーベルの刃はMG用の物を使っているからか、かなり長め


このように10年間の技術蓄積で1/144にして最上位だったMGと同等以上のギミックと可動範囲を備えた逸品に仕上がった。私はアニメのイメージを重視したいので使用していないが、付属のリアリスティックデカールを使用すれば、さらなる密度の機体になるので、より情報量の欲しい人はぜひデカールを貼ってみよう。

終わらない明日へ?
勇者シリーズと違い、ガンダムにおける2号メカは前のメカと合体したりする事はなく、完全に取って代わってしまう。そのおかげで、前のメカが活躍しなくなって陳腐化してしまうのだが

フリーダムガンダムに乗り込んだキラは、おとりとしてアラスカ基地で残されてしまい、撃沈寸前にまで追い込まれたアークエンジェルの危機を救った。この時の登場シーンの演出は最高に格好良い。

かけつけるフリーダム

フリーダム、降臨!
ムウ「なんだ!?」

イザーク「あのMSは!?」
ロールオーバーで画像が変わります

仲間の危機を救ったキラは、アラスカ基地が自爆することを知るとフリーダムのマルチロックオンシステムを駆使し、複数の敵機を単機で次々と撃墜していった。しかも、連合・ザフト両軍に撤退の勧告をしながら、敵の武装とメインカメラのみを巧妙に撃ち抜いていき、不殺を貫いたのだった。

次々と敵機を戦闘不能に追い込むフリーダム
キラ「ザフト、連合両軍に伝えます!」

ザフト兵「何だ・・・?」

キラ「アラスカ基地は間もなくサイクロプスを発動させ、自爆します!」

一同「!?」

キラ「両軍とも、ただちに戦闘を停止し撤退してください!」
ロールオーバーで画像が変わります

フリーダムの活躍により、アークエンジェルはアラスカ基地より撤退した。連合でもザフトでもない勢力としてアークエンジェルは行動する。そして中立国であるオーブ首長国連邦と協力状態になり、アスランも父親パトリック=ザラとザフトのあり方に疑問を持ち同じく核エンジン搭載のジャスティスガンダムを駆り、キラと行動を共にするようになった。

宇宙に再び進出したい連合軍は、マスドライバー目当てでオーブに協力を求めたが、あくまで中立を守ろうとするオーブに対し、武力行使を行った。キラたちの奮戦むなしく、勝ち目なしと判断した前代表ウズミ=ナラ=アスハは、島を放棄する事を決めアークエンジェルと残存兵力を宇宙に逃し、マスドライバーごと本拠地とともに自爆した。しかし、後でマスドライバーのあるビクトリア基地を連合軍が奪還したので彼らは犬死にとなってしまった。

その後、両軍ともいきなり全滅戦争に突入。クルーゼにより、ニュートロンジャマーキャンセラーのデータを入手した連合軍は核ミサイルを使用して要塞ボアズを陥落させる。 調子付いた連合軍は核ミサイルで今度はプラント郡を核ミサイルで攻撃を試みた。この攻撃は間一髪のところでミーティアユニットを装備したフリーダムとジャスティスに阻止されたが、両軍は要塞ヤキン・ドゥーエで総力戦を開始。アークエンジェル、クサナギ(注5)、エターナル(注6)もこの戦闘に介入。三つ巴の戦いがここに始まったのだった。

核ミサイルの報復として、ザフト軍は大量破壊兵器ジェネシス(注7)を使用。2度のジェネシス照射で連合軍は壊滅的な被害を被る。その戦いのさなか、連合軍を指揮していたブルーコスモス盟主ムルタ=アズラエルは、アークエンジェルのローエングリンの直撃で死亡、ザフト軍もパトリック=ザラが3度目のジェネシスで地球を撃とうとしたが、その暴走に見かねた一兵卒の銃弾の前に彼も命を落とした。指導者を欠いた両軍は、この攻防戦の後に停戦協定を結んで戦争は終結した。

この様に書けば、なかなか面白そうな流れなのだが、自治権確立のために始まった外交戦争がいきなりナチュラル皆殺しのための全滅戦争になった。この辺の描写がいい加減で唐突さが否めない。更に両軍の指導者の「敵を皆殺しにすれば戦争終了」という考えのせいで、稚拙な戦争になってしまった。戦争の残忍さをセンセーショナルに描きたかったのだろうが、背景がおおざっぱで詳細な積み重ねがなかったのがこの作品のまずいところである。

最終回ではクルーゼの駆るプロヴィデンスガンダムとキラのフリーダムガンダムの戦いがメインなのだが、こちら側も何とも言えない物となってしまった。遺伝子にまで手を伸ばし、命をもてあそぶ人間の愚かさを主張するクルーゼに対し、キラは何も反論できなかったのである。「違う、人間はそんなものじゃない」、「それでも守りたい世界があるんだ」とか言っているが、その主張の根拠となる理由や根拠が作品の中で描かれてはいなかった。

富野作品では、主人公が過酷な経験の中それでも人類への可能性を見出していくプロセスが描かれていたので、最終回も盛り上がっていたのだが、SEEDではそのような積み重ねがないため、完全にクルーゼ側の意見が立ってしまっていたのだ。

それでも守りたい世界があるんだ!
キラ「それでも、守りたい世界があるんだ!
単体で見れば感動のシーンなのだが・・・

最後、フリーダムの特攻で同士討ちに持ち込んだのだが、クルーゼは笑いながら死んでいった。まるで、キラが反論できなかったのを喜んでいるかのように。戦闘面ではクルーゼの負けであったが、ディベートにおいてはクルーゼが完全に勝っていた。キラは「自分は力だけではない」と言っていたが、結局力でねじ伏せることしか出来なかった。何と情けない主人公なのだろう

一応、監督的には「非戦」がテーマらしいが、作品内でこれを考えた場合「悪いやつを倒せば良し」になってしまっている。まったく持って説得力がない。これが、このアニメの作品性がかなり低いと思う最大の理由である。面白くなる要因が多かっただけに、これは残念であった。

なお、京都大学で監督の講演会があったのだが、この監督「アニメの戦争はファションです」などと言っており、更に「戦争をとめる方法は?」「差別意識をなくすには?」という命題の答えを出すと放映中の雑誌インタビューで言っておきながら、いざ終わった後は「自分は馬鹿だからわかりませんね」と言っていたようで。やっぱり何にも考えてなかったようだ。まじめに見ていた視聴者を裏切るような事はやめて欲しい物である。
注5 オーブの戦艦。オーブが開発した量産型MS、M1アストレイを搭載し、アークエンジェルとともに宇宙に脱出した。艦長はカガリ=ユラ=アスハなのだが、最終戦ではストライクルージュで出撃しているので実質上の艦長は彼女の御付のキサカになる。

注6 ザフト軍の新型戦艦。フリーダムとジャスティスを運用するために建造された高速戦艦。ラクス=クラインとクライン派のザフト兵により強奪される。艦長はアンドリュー=バルトフェルド。

注7 γ線を照射する超大型兵器。1回の照射で艦隊が消し飛ぶ威力があり、地球に直撃すればその熱線により地上の半数以上の生命が失われる。ちなみに、人体への影響は体が破裂して死んでいくという恐ろしいしろもの。以前に連合側も似たような兵器であるサイクロプスを使用し、アラスカ基地に総攻撃をかけたザフト軍を味方もろとも吹き飛ばした。

よみがえる翼
なんだかんだと言って、ガンダムSEEDはアニメファンの心をがっちり掴んだらしく、DVDの売れ行きが絶好調の上、ストライクとフリーダムのプラモデルはことごとく売れて行っていた。放送中にHGのフリーダムを買いに行ったらどこも売り切れていたし、何だかんだでガンダムの力はすごい物である。

10年経った今の冷静な視点から作品を考えると、このときSEEDがブレイクしたのはビジュアル面が受けたのだと考えられるようになった。前後のつながりを無視して場面だけ切り抜けば、相当格好良い話に見える。毎回テレビを見ずに、パッとテレビを付けたときにこのようなシーンを見てはまった人が多かったのかもしれない。いずれにせよ、このSEEDあたりから作品の内容よりも「売れれば良い」というアニメが増えだしたような気がするのは間違いない。

経緯はどうあれ人気を得たため、1年の間をおいてガンダムSEEDの続編、『機動戦士 ガンダムSEED DESTINY』の放映が始まったわけであるが、どういうことかヤキン・ドゥーエ攻防戦で大破したフリーダムが、第13話「よみがえる翼」で勝手に復活した。(注8)

この作品、新しい主人公のシン=アスカをさしおいてアスランが活躍しまくり、ただでさえ影の薄い新型のインパルスガンダムを食ってしまっているまずい状態な上に、まことしやかに主人公交代説が浮上して来ている。

MGフリーダムガンダムのキットも発売直後はかなり売れていたし、13話放送後ヨドバシカメラでMGの山積みされていたキットが跡形もなく消えてしまっていた。3クール目のオープニングの頭とエンディングのトリを飾っているのも、フリーダムガンダムの新型のストライクフリーダムであるし、まだまだフリーダムガンダムはバンダイのドル箱になるようだ。

この当時に書いた予想は大当たりし、キラは元々主人公だったシンを完全に食ってしまった。また、上位機種であるストライクフリーダムはSEED世界最強のMSとなり、すべてのブランドで発売されバンダイのドル箱になったのだった・・・。
注8 公式サイトによると、オーブの秘密のドックでアークエンジェルとともに修理されていたそうだ。この回ではラクスを暗殺するために送り込まれたザフト特殊部隊のアッシュをなぶり殺しにしていた。特殊部隊哀れ。
アスラン=ザラ、ジャスティス出る!(RG ジャスティスガンダムのコラムへ)

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