HGUC リ・ガズィ

バンダイ HGUCシリーズ

定価2980円(税込み)

HGUC リ・ガズィ
5thルナの攻防!
シャアの隕石落下作戦を阻止せよ!!

君は終局の涙を見る
HGUCシリーズは、宇宙世紀のモビルスーツを1/144スケールのプラモデルで立体化しているシリーズであるが、2007年末のHGUC ヤクト・ドーガを皮切りに『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場したモビルスーツがラインナップされだした。この作品は、総集編ではないガンダムシリーズ初の完全新規の映画で、一年戦争でガンダムに乗り活躍したアムロ=レイと赤い彗星と恐れられたシャア=アズナブルの長きにわたる戦いの決着を描いた作品である。

宇宙世紀0093、クワトロ=バジーナを名乗り、宇宙市民を弾圧するティターンズと戦ったシャアはグリプス戦役の折行方不明となっていたが、ハマーン亡き後のネオ・ジオンを掌握し、新興コロニーのスイートウォーターを占拠し、独立宣言を行った。更に、資源衛星である5thルナを連邦軍の議会が置かれているチベットのラサに落下させる作戦を行った。

シャアの隕石落下作戦を阻止すべく、連邦軍の外郭新興部隊ロンド・ベルに所属していたアムロは、かつてのホワイトベース艦長のブライト=ノアとともに部隊を率いて出撃するのだった。しかし、ロンド・ベルの健闘むなしく5thルナは阻止限界点を突破してしまう。

このときの作戦時に使用していたアムロの機体が今回紹介するリ・ガズィなのである。

情けないモビルスーツを買って作る意味はあるのか?
リ・ガズィは、グリプス戦役時に八面六臂の活躍をした傑作機であるΖガンダムの量産型として開発された機体である。量産型と言っても、UC0093年時の最新技術を導入して開発されているため、性能的にはΖガンダムとほぼ同等である。リ・ガズィとガンダムにしては一風変わった名前をしているが、これはリファインド・ガンダム・ゼータの略称で、その名のとおりΖガンダムの再設計機なのである。

位置づけ的にはティターンズと似た組織であるロンド・ベル部隊は、グリプス戦役時にティターンズが反乱を起こした反省を踏まえて軍備が縮小されており、十分な戦力が整っていなかった。更にこのときの地球連邦政府は、グリプス戦役と第一次ネオ・ジオン戦争のときに活躍したガンダムタイプのモビルスーツを秘匿しており、シャアが反乱を起こしたときにその禁が解かれてやっと支給された機体なのである。

この頃、アムロは自身の専用機であるνガンダムの建造に着手していたが、シャアの隕石落下作戦が予想以上に早く行われたため完成が間に合わず、やむを得ずこのリ・ガズィを使用しなければならない状況であった。理論上のスペックはΖガンダムと同等の機体であるが、ネオ・ジオン軍のニュータイプ専用モビルスーツに比べると見劣りする性能で、ネオ・ジオンの強化人間のギュネイ=ガスの乗るヤクト・ドーガはともかく、シャアのサザビーには遠く及ばない機体である。

こういった事情もあって、劇中での言われ方は敵味方ともに悲惨である。小説版の逆襲のシャアにおいて、5thルナ攻防戦前にブライトには「あの機体は良いものではない」と言われ、ギュネイには「ガンダムもどき」と呼ばれ、シャアには「その機体では話にならんな!」、「情けないモビルスーツと戦って勝つ意味はあるのか?」などと罵られてしまっている。

このような言われ方をしているかわいそうなガンダムではあるもの、アムロが使用したときはギュネイの乗るヤクト・ドーガを手玉に取るなどそれなりの活躍を見せた事は言及しておく。

リ・ガズィはMGで2001年にリリースされてはいたものの、当時のMGのコンセプトは変形に焦点が置かれており、プロポーションや可動は今の目で見てしまうと微妙なものだった。しかし、7年経った後にHGUCとして発売されたリ・ガズィは過去の反省点を生かしたキットとなっている。まず、全体のプロポーションを見てみよう。

リ・ガズィ 前 リ・ガズィ 後
HGUC リ・ガズィ前身画像
MGに比べて頭や太ももが小型化された

MGのリ・ガズィは、頭が大きく変形時のシルエットを重視したのか足が太く作られていて、劇中のスマートさが損なわれていたが、HGUCは劇中のイメージに近づきスマートなプロポーションとなっている。

ディティール面では、頭部の角も非常に細く造型されており、非常に好印象である。この細いアンテナでも折れないように他のパーツよりもやわらかく設計されている。これを利用してか、パーツそのものを折り曲げて取り付けるようになっており、組み立てるときには注意が必要である。

頭部の造型
非常に細かいアンテナパーツ
パーツそのものを折り曲げて取り付ける乱暴な仕様

色分けもかなり細かくされており、肩の黄色い部分も色分けされている。今回筆者が塗装した箇所は、バーニア内部とグレネードランチャーの赤、コクピットハッチのヒンジ部分の黒色、フロントアーマーの四角い部分と脛パーツの四角いノズル部分のグレーのみである。この細かい部分を塗ってしまえば箱の写真とほぼ同じリ・ガズィが手軽に完成する。

可動範囲もABS関節とポリキャップが同時に使用されているため、非常に広い。このキットで特筆すべき点は、首パーツの可動である。こちらは従来のポリキャップを使用したものとは異なり、ABS関節を用いて首を接続している。ABSの首関節とボールジョイントを併用することにより、見上げたポーズが綺麗に決まる。

首の可動 首の可動
劇中の見上げたポーズも容易に取れる

このキットは、別売りのバンダイアクションスタンドベース2に対応しているので、これを利用することで劇中に見せた様々なポーズを再現することが出来る。肩も前後に可動し、更に平手の左手首も標準で付属しているので、ライフルに手を添えさせたり、見得を切ったポーズを取らせたりすることができる。

武装としては、Ζガンダムのそれとほぼ同じである。まず、接近戦用の武装としてはビームサーベルが2基設けられている。これは背中のバックパックに装備されており、ビーム刃が出るときは4つの鍔が展開するようになっている。ただし、1/144という大きさの影響で鍔の展開ギミックは再現されていない。本キットでは展開時と収納時のビームサーベルが付属しているが、収納時のものはバックパック中に固定され取り出すことは出来ない。サーベルラックの展開ギミックもカバーを取りはずすだけになっており、収納時のサーベルはどちらかというとディティールパーツという扱いである。

ビームサーベル(展開形態) ポーズをつけたところ
鍔が細かすぎて展開させることが出来ないので別々の状態のサーベルを付属させている

射撃武器はおなじみのビームライフルと、Ζガンダムから受け継いだグレネードランチャーが装備されている。ビームライフルの保持は専用の手首パーツを使用し、MGと同じくピンで固定することになっているのでガッチリと固定される。グレネードランチャーは腕の四角いパーツをスライドさせることで連動でせり出してくる。

グレネードランチャー
1/144という大きさながら、グレネードランチャーの連動ギミックも再現
ロールオーバーで画像が変わります。

ただ、グレネードランチャー射出口のカバーパーツは中途半端にしか展開されないので、手動で全開にする必要がある。また、グレーネードランチャーをスライドさせる都合でスライドさせる部分とグレネードランチャーは一体成型で作られており、このパーツは色分けされていないので、ミサイル本体は前述のとおり赤で塗装する必要がある。

このほかにも、腰サイドアーマーに4門のグレネードランチャーが追加で装備されている。こちらは射出することは不可能だが、アーマーを動かせば射出形態を取ることができる。

MS形態においては、頭部のアンテナパーツを取り付けるのが少し大変ではあるが、可動範囲や色分け、ディティール面は非常に高水準でまとまっている。

飾りをやられただけなんだから!
Ζガンダムの流れを汲むMSの大きな特徴は、航空機形態への変形であるが、このリ・ガズィも航空機形態になることが出来る。航空機への変形は非常に複雑なプロセスを経る必要があり、パーツ構成も複雑化するうえに整備も難しくなってしまった欠点があった。そこで、リ・ガズィの場合はBWS(バック・ウェポン・システム)と呼ばれるパーツを艦内で取り付けることで航空機形態になる。

BWS 前 BWS 後
航空機形態にするためのオプションパーツ

このオプションパーツを取り付けることで、本体の変形は脚部と肩パーツを下げるだけとなりΖガンダムと比べて非常に簡略化された。映画放映当時のキットにはこのパーツは付属しなかったが、MGがリリースされてからは大体の製品に付属するようになった。HGUCでも変形自体は、設定での狙い通りに簡略化されているのでこのパーツを取り付けることで簡単にスペースファイター形態にすることが出来る。

リ・ガズィ(BWS) 前 リ・ガズィ(BWS)後

リ・ガズィ(BWS) 横
スペースファイター形態
リ・ガズィ(BWS)と表記するゲームや文献もあります

MGとは違い、BWSを取り付けるには一度ウイングのカバーパーツを取り外して再びつける必要があるが、元々戦艦の中で整備中に取り付けることとになっているのでこの差し替えはほとんど気にならない。尚、シールドを取り外した状態で下から見ると次のようになる。

下から見た図

スペースファイター形態になると、武装がビームキャノン2門とメガ・ビーム・キャノンになる。これらを利用して艦隊に対して一撃離脱攻撃を行えるようになる。シールドは、機体底面に取り付けられておりABS製のパーツで盾を固定する。このとき、ビームライフルはシールド裏に取り付けることになっている。

ビームライフルの取り付け
シールド裏に取り付けられるのでBWS装着時は使用不能

基本的に、BWSは使い捨てが前提であるので一度取り外してしまうと戦艦に戻るまでは航空機形態になることが出来ない。劇中でも真っ先に破損するのはBWSで、破損したら適宜パージしてモビルスーツ形態になって通常の戦闘に入る。ロンド・ベルの女性エースパイロットのケーラ=スゥも、単なる飾りとしか思ってはいなかったようで、使い捨てが前提であるということがわかる。

スペースファイターおよび、BWSはバンダイアクションスタンド2に取り付けることが可能なので、スペースファイター状態からMSになるところもスタンドを2つ用意すれば再現することが可能である。

BWSのパージ
スタンドがなくても、上手く配置させれば変形が再現できます
ロールオーバーで画像が変わります。

しかし、BWSで変形を簡略化させたが、出撃が度重なればそのたびにBWSを用意しなければならないことになる。これは、同じ機体が複数存在する前提がなければ成立しない。劇中ではνガンダムが登場するまでのアムロ専用機という位置づけだったわけで、その前提は満たされていない。ということで、結局のところ割高な機体になってしまっているわけである。

更に、一度BWSを捨ててしまえば戦場ではもう変形できなくなるというデメリットも付きまとう。そもそもΖガンダムなどの可変MSは状況に応じて変形できるのが売りなのだから、このリ・ガズィはその柔軟性にかけてしまうのである。量産機なのに割高な機体である事と、柔軟性の低さから結局リ・ガズィは少数が生産されるだけに終ってしまい、歴史の闇に葬られてしまう。このことから、可変MSの量産はどういう方法を取ってもろくな結果にならないということがわかる。

また、プラモデルの上では妙な現象が起っている。量産が前提のはずのリ・ガズィであるが、巨大なBWSが付いているせいで、本家本元のHGUC Ζガンダムよりも値段が高いのである。それも、HGUCなのに3000円近い値段と割高な印象を与えてしまう。原油価格が高騰して材料費が高くなっているのも理由の一つであろうが、「情けないモビルスーツに3000円払う価値があるのか?」とシャアのような台詞がよぎってしまった。

と言っても、量販店では2000円程度で買えるので、安値で購入できるのならば損はないキットである。ヤクト・ドーガとあわせて劇中再現をぜひ行おう!

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