ULTRA-ACT ウルトラマンティガ
バンダイ ULTRA-ACTシリーズ
マルチタイプ定価:3570円(税込)
スカイタイプ・パワータイプ定価:3360円(税込)
平成特撮人気を切り開いた初代ヒーロー、ウルトラマンティガがアクションフィギュア化
光を継ぐもの
1990年代後半〜2000年代にかけて、特撮はキャラクター産業で大きな地位を復権したと言える。CG合成やVTR撮影などで映像技法が大幅に進化したことに加えて、昔子どもだった人たちが大人になり昔自分たちがなじんでいたヒーローに再び飛びつくようになったということが大きな要因と言えるだろう。
そんな特撮人気の立役者となった作品が1996年に放送された『ウルトラマンティガ』である。このシリーズは、1980年以降地上波での放送がなかったウルトラマンシリーズの人気をよみがえらせた立役者と言われる傑作である。子ども向けでありながら、大人の鑑賞に耐えられるSF考証やストーリーが受け、子どもの付き合いで一緒に見たお父さん世代を引き込むことにうまく成功したのである。大人の鑑賞にも耐えられるようにストーリーを作る手法は、平成時代の仮面ライダーや以後のウルトラマンシリーズに引き継がれた重大な要素であると言ってもよいだろう。
このほかにもウルトラマンティガは、主演のマドカ=ダイゴ役に人気アイドルグループ、V6の長野博を起用した。これは、イケメン主人公の走りと言える。また、ウルトラマンティガも状況に応じて3つの体色を持っている。これは最近の特撮のお約束であるフォームチェンジの走りである。特に、フォームチェンジの概念は翌年の『ウルトラマンダイナ』や『ウルトラマンガイア』にも引き継がれ、さらに仮面ライダーもこの手法を取り入れていくようになった。このように、ウルトラマンティガは平成特撮のお約束を1作目にして作ったと言っても過言ではないのである。
こうしたことから、ウルトラマンティガは平成ウルトラマンシリーズの代表的な扱いを受けているためなのか、バンダイの大人向けアクションフィギュアシリーズであるULTRA-ACTシリーズで昭和のウルトラマンが発売される中、力の入った形で発売された。CMにも、ダイゴ役の長野博を起用し、初回限定特典も用意しているという気合の入れようであった。というわけで、今回はこのULTRA-ACT ウルトラマンティガを紹介しよう。
BRAVE LOVE TIGA
ウルトラマンティガで作られたタイプチェンジは、ことに立体化の商業的にも様々なメリットを生み出した。まず、同一キャラクターであっても色を変えるだけで複数の商品が作れるようになった。番組だけでもウルトラマンティガは3タイプのフォームを持っている上に、最終回の最強形態であったり、後に公開された映画ではもう3タイプも追加されている。これらはすべて、ティガの色変えであり、色を変えるだけでおよそ7タイプも作れる計算になる。
商品化するときの形は全く一緒で色さえ変えてしまえばいいので、金型流用も楽である。基本的に金型を作るには膨大な予算が必要となるため、この同じ金型をいくらでも流用できるというのは企業側にとってはメリットが大きい。これにより、バンダイがスポンサーの特撮物は、大体タイプチェンジしていくわけである。
このウルトラマンティガの製作発表が行われた時は、ウルトラマンティガが変身する7タイプをすべて展示してあった。特に、人気のあるウルトラマンということで、「ここまで製品化するやる気があります」ということを見せるための処置であると考えられる。
製品はウルトラマンティガが放送されてから15年経過した2011年3月に発売された。さすがに15年経過しているだけあり、当時の視聴者も20代になりある程度自由にお金が使える年齢になった。それを見越してか、バンダイは今のところ4タイプのフォームを一般流通で発売した。このコラムでは、テレビ版で活躍したマルチ・スカイ・パワーの3タイプを紹介しよう。
体色が変わることで、能力も変わる
まず、一番最初に発売されたタイプは、マルチタイプである。このマルチタイプはスピード・パワーのバランスが取れた状態であり、変身した時は必ずこの状態となる。
パワー・スピードのバランスが取れたマルチタイプ
銀色・青・赤の3色が使用され、カラフルである
造形は、特撮のスーツ感を大事にしながら可動範囲を確保する方向で作られている。上半身には腹と胸の部分がボールジョイントで接続されており、幅広いポーズを取らせることができる。ただ、上半身の部分が少し不自然に見えてしまうのが難点である。可動範囲は聖闘士聖衣神話やS.H. Figuartsで培われた技術がフィードバックされており、非常に広い可動範囲を誇っている。変身時に現れたシーンの再現もできるし、腕を前にクロスさせることも可能である。
胸のアーマー部分は前後でボールジョイントで接続されているため、ポーズに合わせて可動させることができる。これにより、肩の可動に装甲部分が干渉することがなく、見栄えと可動を両立させている。ただ、筆者のティガは後ろ側のボールジョイントが癒着しているのか動かすことができなかった。
頭部には通常のボールジョイント接続に加えて可動軸が仕込まれており、真上を向くことも可能である。これにより飛行ポーズを取らせたときに前を向かせることも可能となった。
ウルトラマンの特徴である飛行ポーズも再現可能
しっかりと、飛行する方向に頭を向けることもできる
ウルトラマンティガが昭和のウルトラマンと大きく違う点は、頭部のデザインである。昭和のウルトラマンは丸みの帯びた頭部にトサカや角などを「追加」していくというデザインがなされている。これは、頭部にシンボルが追加されていくことでパワーアップしたことや別のキャラクターであるということが視覚的に分かりやすくなるという利点を持っている。
一方、ウルトラマンティガは丸みの帯びた頭を「削減」する方向でデザインされている。これは昭和の時代の逆の発想だが、これにより新しいウルトラマン像が誕生したのである。以降、平成ウルトラマンの頭部デザインは基本的に削減の方向で作られている。
昭和のウルトラマンと一線を画すようになった頭部デザイン
頭部は、クリアパーツの上に銀色の塗料を吹きかけることで色を再現している。ただ、額のクリスタルの部分も塗料で覆われてしまっているため、こだわる人はその部分だけの塗料は剥がした方が良いだろう。ちなみに、後述するパワータイプではこの欠点が克服されている。
さらに、体の色遣いも平成と昭和で大きく変更された。昭和のころは「赤色でないと子ども受けしない」という不文律から、昭和のウルトラマンは銀色と赤色が使用されていた。一方、ウルトラマンティガは銀色・金色・赤・青というカラフルな色遣いとなり、非常に派手になった。
このマルチタイプはスピード・パワーのバランスが取れているということで赤と青の両方を使用している。商品でもその色遣いはマスク塗装で美しく再現されている。ただ、色遣いが複雑になっているためかほかのタイプに比べて値段が少し高くなっている。
S.H.Figuartsと同じく、豊富に手首パーツが付属している。特に平手はウルトラマンティガのファイティングポーズを再現するために必要な要素となってくるためか、表情が付いた平手があったり親指を曲げているかまっすぐにしているかと言った微妙にデザインが違う平手が付属している。また、別売りのULTRA-ACT ウルトラマン
と握手させる手首も付属している。
ウルトラマンティガのファイティングポーズも再現可能
初代ウルトラマンは、M78星雲の光の国からやってきた宇宙人なので環境の違う地球に3分間しかいることができないという設定で、時間が迫ると胸のカラータイマーが音を出しながら赤く点滅する。ティガの場合は、超古代文明の光の巨人がよみがえったという設定なのにもかかわらず、しっかりとそのお約束は守っている。ULTRA-ACTではカラータイマーの部分を別パーツにしており、赤くなっているカラータイマーと差し換えることができる。これで、ピンチの状態の再現もすることができるというわけである。
ティガも3分間しか変身することができないという設定になっております
仮面ライダーシリーズを主に展開しているS.H. FiguartsとULTRA-ACTが一線を画している部分は、光線技のエフェクトが付くと言う点にあると言える。ウルトラマンはプロレスよろしくの格闘戦のみならず、光線技も駆使して闘うので必要不可欠なものであるとバンダイは踏んだのであろう。これまで様々な製品で培ってきた造形から、クリアパーツをうまく使用して見事に光線を再現している。
まず、ウルトラマンティガが使うけん制用の光線であるハンドスラッシュの手首パーツが同梱されている。これは、威力こそ低いものの中距離からの攻撃にうってつけの技で敵の動きを止めるために使用されている。
けん制用の光線技
先端部をクリアブルー、中間部をクリアパーツにすることで発射のイメージになる
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このハンドスラッシュは、手首を丸ごと交換することで再現されている。クリアパーツの使用の仕方が非常にうまく、光線技と言う実体のないものをうまく立体化できているのがバンダイのすごいところである。
また、怪獣に止めを刺す必殺技であるゼペリオン光線用のエフェクトパーツも付属している。こちらは、手首に取り付ける形で再現されている。手首を平手に変更して腕をL字型に交差させて、光線エフェクトパーツを取りつける。幅広い可動範囲を利用して、ゼペリオン光線を発射するプロセスを完全に再現することができる。
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ウルトラマンティガの必殺技、ゼペリオン光線
イーヴィルティガとの戦いで見せたプロセスを再現してみました
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ティガが出るまでのULTRA-ACTでは手首と光線部分が一体成型であったため、手首の色が変わってしまうとほかのキャラクターへの流用ができなかった。一方、ティガは取り付け方式になったためほかのウルトラマンに光線技を使わせることも可能となった。尚、劇場版で登場したティガダークにはこのゼペリオン光線を発射する前に出る閃光を再現したエフェクトパーツが付属している。腕を水平に開いたときに出るこのエフェクトパーツを使えばさらに光線の再現度が上がるわけなのだが、筆者は予算の都合上ティガダークは購入していない。
また、ウルトラシールドを再現したエフェクトパーツも付属している。こちらは、怪獣の光線技を防ぐバリアだが、PET仕様の薄い円をシャボン玉のような虹色のグラデーション塗装を施したものになっている。この円形パーツを専用のスタンドで立てかけることで、このバリア技を再現している。
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バンダイお得意のPETバリア
シャボン玉の膜のようなグラデーション塗装が施されている
基本的なエフェクトがそろっているので、この商品単品だけでも結構遊べる仕様となっている。また、初回特典としてガッツウイング1号が付属している。これは、ダイゴが所属している科学特捜チームが所有する戦闘機で、劇中の比率を見事に再現している。魂STAGEと組み合わせて遊べるので、ティガと一緒に飛行させることも可能。
劇中に登場するGUTSの戦闘機
これと言ったギミックはないが、サイズの割に色分けもばっちり
縮尺サイズは一緒なので、ティガと合わせてディスプレイしよう
この初回特典が入っている箱は、同時期に発売されたUMWシリーズのパッケージを模して造られていて、このシリーズの宣伝も兼ねている。こういった戦闘機の類は、ディスプレイするときの味付けとなるので今後も是非とも付属させていってほしいところである。
ティガ、お金が今足りなーい♪
ウルトラマンティガは、時と場合に応じて自分の体の体色を変化させ、能力を特化させる。それに応じて、ファイティングスタイルや放てる光線技も変化するのである。ティガがフォームチェンジするときは、額の前に腕を交差させ額のクリスタルにエネルギーを集中させる。そして、腕を振り下ろすのと同時に体色が変わるのである。
CG技術がそこまで発展していなかったので、今の目で見れば非常にシンプルな変身を行う
ただ、当時としては画期的な闘い方だった
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まず、ULTRA-ACTで発売されたのは、体色を紫色に変化させたスカイタイプである。これは、マルチタイプが発売された1ヶ月後の2011年4月にリリースされた。
スピードと飛行能力に長けたスカイタイプ
マルチタイプの体色をそのまま変更させただけ
このスカイタイプに変身するとスピーディーな戦いが可能となる。飛行能力とジャンプ力も強化されるので、空を飛ぶ怪獣や素早い動きの怪獣が相手の時に変身する。スピードが強化されるが、その分パワー不足と撃たれ弱さが欠点となる。劇中では、このタイプに変身すると、飛び蹴りを多用するようになる。
持ち前の跳躍力を武器に、飛び蹴りを相手に喰らわせる
フィギュア本体は、マルチタイプの色をそのまま変更しただけにとどまっている。ただ、マルチタイプと比べると色遣いが非常に単純化されているため、値段が安くなっている。手首パーツもマルチタイプと同じで、変更点と言えば握手パーツがなくなっているくらいである。
スカイタイプに変身すると、ほかのタイプに比べて光線技が増える。ハンドスラッシュはもちろんのこと、ティガフリーザーという冷凍光線も放てるようになるのである。このティガフリーザーは専用の手首で再現することが可能。
相手の頭上に冷凍光線を放ち、その冷気で相手を氷漬けにする
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また、必殺技もゼペリオン光線からランバルト光弾に変化する。こちらは、ゼペリオン光線よりも素早く打つことが可能である。
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専用の手首で再現されるランバルト光弾
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ゼペリオン光線と違い、こちらのエフェクトパーツは専用のエフェクトパーツになっている。ハンドスラッシュと差別化を図りたいのか、エネルギーの流れが細かく再現されている。派手になっている分、エフェクトパーツが重くなっているので左手を平手にしておいて支える必要がある。
このスカイタイプにも初回特典としてスノーホワイトが付属する。これは、マキシマオーバードライブと呼ばれる次世代エンジンのテスト機であり、ヒロインのヤナセ=レナの愛用機である。
翼を閉じたガッツウイングに追加エンジンを施したいでたちのスノーホワイト
このスノーホワイトは番組終盤で超高速で飛行する怪獣、ゾイガーを迎撃するため使用され、スカイタイプとも絡みがあった戦闘機である。スカイタイプに脇に抱えさせ、その時のシーンも再現可能である。
そしてもっとも遅く発売されたのが赤いカラーリングのティガ、パワータイプである。このパワータイプは劇中でもスカイタイプよりも変身回数が多く、多用されたフォームである。
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パワーと防御力にたけたパワータイプ
目に見えてわかりやすいパワーアップのためか、劇中でもしばしば変身した
このタイプに変身すると、スピードとジャンプ力が犠牲になる分、パワーと防御力が増す。おもに重量級の怪獣と戦うために変身する。そのパワーを生かした格闘戦が得意である。
特筆すべき点は、このパワータイプに変身するとスーツアクターも変わる。ウルトラマンティガは権藤俊輔氏と中村浩三氏の二人が演じており、パワータイプに変身すると太めな中村氏が演じることになる。この体制は後のダイナやガイアにも引き継がれているが、中村氏が演じるウルトラマンガイア スプリームバージョンは中に人が入っていて非常に重くなっている怪獣のスーツを軽々と何度も投げ飛ばしたことで有名である。
ULTRA-ACTシリーズでもこの特性を忠実に再現するために、マルチタイプに比べて太めな造形の素体が使用されることになった。パワータイプ専用に金型を作り起こしたと考えられる。そのためなのか、このパワータイプの発売は2011年8月上旬にずれ込んでしまったのだった。
腕足が少しだけ太くなり、上半身も力強い造形となった
素体の変更に伴い、胸のアーマー部分が一体成型となった。これにより、胸のアーマーパーツが肩と干渉してしまうようになったので、肩の可動がほかのタイプに比べて若干狭くなったのが難点である。
ただ、4か月の期間を置いて発売しただけあり顔の造形も合わせて変更されている。全体的に顔の造形がシャープになり、クリスタルの部分もしっかりとクリアパーツで再現されているのである。
この部分はユーザーの声を反映しての変更と考えられる。これにより、このパワータイプは実質上のウルトラマンティガver2と言ってもよいだろう。
手首パーツもほかのタイプと比べて変更され、表情の違う平手が付属している。
パワータイプの必殺技はデラシウム光流である。これは赤いエネルギーのボールを形成し、それを相手に投げつける技である。ゼペリオン光線より若干威力は劣るものの、パワータイプに変身した時はこの技で怪獣に止めを刺している。
デラシウム光流を再現するために、エネルギーをボール状に集中させたときの手首と、技を放った時の手首が用意されている。
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パワータイプの必殺技であるデラシウム光流
厳密には光線技ではないらしい
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デラシウム光流の発射前のエフェクトパーツは、ボール状のエフェクトパーツは右手に接着されたままなので取り外すことはできない。このほかに、ゼペリオン光線のエフェクトパーツも付いている。こちらはマルチタイプとは違い、オレンジ色のエフェクトとなっている。
邪神ガタノゾーアとの戦いのときに使用した時のカラーリングを再現している
このように、ウルトラマンティガからウルトラマンに入って行った世代にとってはにやりとするようなエフェクトパーツがそろっている。同時発売されたキリエロイドと合わせると序盤のバトルが再現できるようになるし、7月発売のイーヴィルティガとのバトルも再現できるようになる。また、劇場版の『THE FINAL ODYSSEY』で活躍したほか2フォームや最終回で登場したグリッターティガの発売も期待したいところである。
ただ、筆者の予算が足りないのでこの3タイプ以外は買いそうにないのだが・・・。
人間はみんな、自分自身の力で光になれるんだ!(もどる)