ULTRA-ACT グリッドマン

バンダイ ULTRA-ACTシリーズ

定価:3360円

ULTRA-ACT グリッドマン
早すぎた名作、『電光超人 グリッドマン』よりグリッドマンがULTRA-ACTに登場!

夢のヒーロー
ウルトラマンで有名な円谷プロは、今ではバンダイとタイアップしウルトラマン関連の作品を輩出しているが、ライバル会社であるタカラと一時期タイアップしていたことがあった。その時に誕生したヒーローが『電光超人 グリッドマン』である。このグリッドマンは、ウルトラマンシリーズと同じく巨大な怪獣と戦う特撮ヒーローものだったが、当時最新鋭の撮影技術であったVTR撮影を導入し、タカラの勇者シリーズの流れをくむ巨大メカとの合体も取り入れたウルトラマンシリーズと一線を画す特撮作品となった。今回は、そのグリッドマンを紹介しよう!

グリッドマンはハイパーワールドから逃げ出した魔王 カーンデジファーを追ってやってきたハイパーエージェントである。中学生である翔直人馬場一平井上ゆかが中古パーツを寄せ集めて作った手作りPC、ジャンクに宿り、直人と一体化してカーンデジファーと彼のしもべになってしまった中学生、藤堂武史が送りだす怪獣たちと戦っていくという筋立てである。

このグリッドマンが戦う舞台は現実世界ではなく、コンピューターワールドと呼ばれる世界である。これはコンピューター内部のプログラムの世界で、IC基盤の様な建物が並び立っている世界である。このコンピューターワールドが破壊されてしまうと、コンピューターで動いている機械が誤作動を起こしてしまう。その誤作動から起きた事件をグリッドマンが怪獣を退治することで解決していくという話である。

グリッドマンは直人に変身アイテムであるアクセプターを授けた。「アクセスフラッシュ」という掛け声とともに直人がアクセプターのボタンを押すと、スクリーンの中に直人が吸い込まれ、グリッドマンと一体化する。直人と一体化することで二次元の存在であるグリッドマンは実体を得ることができるのである。

一平とゆかは現実世界からジャンクを操作してグリッドマンを支援する。プログラムを組んだり、敵怪獣の分析をしたりするのは彼らの仕事で、グリッドマンと力を合わせて怪獣たちと立ち向かっていくのである。

戦闘コードを打ち込んでくれ
グリッドマン「戦闘コードを打ち込んでくれ!」

アクセスコードはGRIDMAN
グリッドマン「アクセスコードは、GRIDMAN!

ジャンクのキーボードからアクセスコードを打ち込むと、グリッドマンはパサルート(電線)を光になって伝っていき、目的のコンピューターワールドに進入する。武史もグリッドマンもコンピューターワールドに向かう時は電線を伝って目的のコンピューターにアクセスするのだが、この点がコンピューターが普及していなかった当時の時代を感じさせる。(注1)

この作品の特筆すべき点は、時代を先取りしすぎたという点に尽きるであろう。このグリッドマンが放送されたのは1993年で、コンピューターは一般に普及していなかった。このころは一般の人間には「インターネット」という言葉すら知られておらず、パソコン通信をやっている人間はごく一部で、パソコンで動いている機械も今ほどなかった時代である。

今の時代ならば、カーンデジファーが繰り出す怪獣は「コンピューターウィルス」、コンピューターワールドは「コンピューターのプログラム」、そしてグリッドマンは「ウイルスバスター」として描かれているところだろう。しかし、パソコンの普及していない1993年にして我々が普段使っているコンピューターネットワークの世界の存在をいち早く描きだしているのがこの作品のすごい点である。

これらの当時としては夢のような世界だったコンピューターの世界が、今となっては当たり前のように普及し、さらにはスマートフォンなどの端末で携帯できるようになったものだから、時代の進歩というのは恐ろしいものである。

ただ、あまりに時代を先取りしすぎており、ローカル放送だったのも手伝って特撮作品の中ではマイナーな部類に入る。しかし、小学2年生であった筆者ははまりにはまり、毎週ビデオを録画して見ていたものだった。思えば、グリッドマンはテレビ放送で初めてリアルタイムで見た怪獣ものの特撮だったと思う。

このグリッドマンで培われたVTR特撮のノウハウはウルトラマンシリーズにフィードバックされ、翌年のウルトラセブンのスペシャル放送や平成ウルトラマンシリーズでもブラッシュアップされて使用されるようになった。
注1 後の『ウルトラマンメビウス』でグリッドマンのオマージュがされたこともある。このとき、グリッドマンで使われた電線を通る時のバンクシーンの画像がそのまま使用されている。
悪魔の版権取り作戦
当時発売されたグリッドマンのおもちゃは、今ではオーパーツと呼ばれるほどプロポーション、ギミックが充実していた。グリッドマンには電飾ギミックとサウンドギミックが与えられ、タカラが同時期で展開していた勇者シリーズの変形ノウハウを活かしたアシストウェポンの変形・合体ギミックはプロポーションとギミックを両立させた傑作であった。

しかし、バンダイ傘下の円谷プロを使ってしまっていたことにタカラとバンダイの間には根深い軋轢が存在していた。同年の『五星戦隊 ダイレンジャー』で登場したスーパー気力バズーカとグリッドマンに登場した巨大武器、ドラゴニックキャノンが双方とも龍をイメージしたバズーカ砲であるということで、裁判沙汰に発展したという一大事もあったそうなのである。

グリッドマンはローカルセールスにしては上出来の人気を得るまでに成長し、続編も作られる予定だったそうだが、円谷プロをこれ以上バンダイ側に使わせたくないということでこの企画は立ち消えとなった。(注2)

その後、円谷プロは経営難に陥りバンダイが株の49%を保有するまでに至る。ガンダムを製作していたサンライズ同様、円谷プロもバンダイの発言力が強くなった上に、ウルトラマン関連の商品化はバンダイが独占化するようになった。当然、円谷プロが制作に携わったグリッドマンも例外ではなく、版権はバンダイが握っているという状態になった。

それから約19年の歳月が流れた2011年の11月のNATION2011で、ライバル会社の特撮ヒーローであるグリッドマンを自社製品として売り出すことを発表した。このころのバンダイは、タカラがリリースしてた商品をうまく自分たちのものにする商法が成功し始めており、タカラが商品を出さないことをいいことに次々とタカラがリリースしていた商品を自社製品として発売したのであった。このとき展示された試作品は、関節なども仕組まれておらず「ある物をただ持ってきただけ」という状態であった。しかし、商品化がほとんどされていなかったキャラクターであるのも手伝って、グリッドマンファンは歓喜の声をあげていた。

翌年の2012年2月の魂ウェブでは、グリッドマンの設計CAD画像や、今後の製品化のアンケートが行われた。グリッドマンのサポートメカは複雑な変形をするため、どのキャラクターがどういった形で発売すれば売れるのかというのはバンダイ的には大きな課題だったのであろう。当然筆者は、アシストウェポン完全変形の状態で出してほしいとアンケートに記入したのだった。
注2 その企画の名残か、講談社が販売している児童向け雑誌『てれびくん』では『電光超人 グリッドマン 魔王の逆襲』という題名で新規撮り起こしのオリジナルフィルムストーリーの連載が行われた。そこでは、新たに藤堂武史がグリッドマンΣに変身し、グリッドマンとともにカーンデジファーの弟ネオカーンデジファーと戦うというストーリーになっている。
アクセスコードはULTRA-ACT GRIDMAN
ウルトラマンではないものの、円谷プロ発のヒーローということでグリッドマンはULTRA-ACTのブランドで発売された。ウルトラマンとは違い、プロテクターを着たようなデザインとなっているグリッドマンは、CADでの原型作成を行った。これは肉体造形を重んじなければならないウルトラマンとは違い、プロテクターのかっちり感を出すためとアシストウェポンとの合体の寸法を正確に行わなければならないという事情からであった。ユーザーへのアンケートなどを通して企画されたグリッドマンは2012年9月に無事一般販売で発売された。それではその詳細を見てみよう。

ULTRA-ACT グリッドマン 前 ULTRA-ACT グリッドマン 後
CADと現代のテクノロジーが生んだグリッドマンのアクションフィギュア!
当時のスーツをブラッシュアップさせたかのようなプロポーションになっている

プロポーション面は文句の付けようのない出来栄えである。CADでの設計が功を奏し、グリッドマンのプロテクターの様なスーツを見事に再現している。ボディ全体は銀色の塗装が施されており、非常に良い配色となっている。また、背中には魂STAGEに接続するための穴が開いているのがわかる。

顔の造形は、当時グリッドマンのスーツの作成に携わっていた澗淵隆文氏が3D設計を行っている。これにより、当時のグリッドマンそのままの造形のグリッドマンに仕上がっている。

グリッドマン頭部
当時スタッフが設計したためイメージ通りの顔の造形となっている
額のエネルギーランプと目はクリアパーツ

胸のトライジャスターやクリスタルコンバーターはクリアパーツで表現されている。

トライジャスター、クリスタルコンバーター
クリアパーツが当時のスーツ以上に良い質感を醸し出している

左腕に装備されたグラン=アクセプターは塗装で再現されている。中心の黄色い部分はエフェクトパーツを付ける都合で取り外せるようになっているが、塗装をはがさないように注意したい箇所である。

グラン=アクセプター 真ん中のパーツを取り外したところ
細かい部分ながら、エフェクトパーツ用のギミックときれいな塗装が施されているグラン=アクセプター

可動範囲はULTRA-ACTの最新素体の物が反映されているが、デザイン上の都合で足首の可動範囲が通常のULTRA-ACTよりも狭い。また、最大の難点として腰をひねることができない。胸を反らしたり、腹の部分で前後に動かすことは可能であるが、必殺技のアクション時によく腰をひねったポーズをとっていたのでここが動かないのは致命的である。これは後のバージョンアップを見越し、強度が必要なところであるためであろう。

アクションポーズ
劇中のファイティングポーズは取れるが、より派手な動きが取らせにくいのが残念

このように、フィギュア単体としてはアクションよりも造形と他メカとの合体機構を重視したものだと言える。ある程度の可動が犠牲になったもののグリッドマンの造形を十二分に再現しているのが良い点だと言える。

男の意地の必殺技エフェクト!
ウルトラマンとは違い、グリッドマンは専用の武器を装備している。また、必殺技であるグリッドビームのエフェクトも付属しており、劇中のグリッドマンの技の再現をすることができる。せっかくなので、グリッドマンの登場シーンや必殺技のシーンをロールオーバーで再現してみよう!

まず、パサルートを通り抜けてコンピューターワールドに進入した際、グリッドマンは等身大の大きさである。それゆえ、怪獣よりも何十倍も小さい状態でコンピューターワールドに出現する。1話目はそれでピンチに陥ったが、ゆかが巨大化プログラムを作成し、グリッドマンは等身大の大きさから70メートルにまで巨大化する。

現地に到着したグリッドマン

巨大化プログラムを受け取るグリッドマン
ロールオーバーで画像が変わります

グリッドマン登場!
ロールオーバーで画像が変わります

グリッドマンのエネルギーはジャンクと連動しており、ジャンクがダウンすればグリッドマンはコンピューターワールドから消去されてしまう。エネルギーが消耗すると、額のエネルギーランプがウルトラマンのカラータイマーよろしく点滅し、ジャンクは火花を上げながら警告音を発する。

グリッドマンのピンチを救うために一平がプログラムを組んだサポート用の武器がアシストウェポンである。最初に組まれたアシストウェポンはバリアシールドである。

バリアシールド!
グリッドマン「バリアーシールド!
ロールオーバーで画像が変わります

過去のおもちゃでは、なりきりセットとして発売されていたバリアシールドは、塗装で再現されている。劇中通りのデザインのグリップを使ってグリッドマンに持たせることも可能である。

バリアシールド グリップ
一平がスペシャルドッグから着想を得てデザインしたバリアシールド
常に電磁波をまとっており、怪獣の攻撃をはじく

また、バリアシールドのグリップにはプラズマブレードが内蔵されている。

プラズマブレード
グリッドマン「プラズマブレード!
ロールオーバーで画像が変わります

プラズマブレード
ホットドッグのウインナーの部分から着想を得ているプラズマブレード

サイズがサイズなため、プラズマブレードはバリアシールドに収納することはできない。刃の部分はメッキパーツで再現されており、非常にきれいである。

また、この二つの武器を合体させれば電光雷撃剣 グリッドマンソードにパワーアップする。これはコンピューターワールドに住むコンポイドの力によって得た新たな形態で、敵怪獣をいとも簡単に切り裂くことができる。

電光雷撃剣 グリッドマンソード
グリッドマン「電光雷撃剣 グリッドマンソード!

過去のおもちゃではバリアシールドの形状を組み替えて再現していたが、こちらもサイズの都合により別のパーツとしてグリッドマンソードが付属している。この形態のときも刃の部分は銀メッキで再現されている。

グリッドマンソード グリッドマンソード
威力が大幅に上がる分、小回りが利かないのが難点

尚、刃の部分を縮めたサンダーアックスという斧形態に劇中では変形していたが、本製品では省略されている。

グリッドマンはウルトラマンと同じく、必殺技の光線を持っている。それがグリッドビームで、ウルトラマンのスペシウム光線と同じく怪獣に止めを刺す時に使用される。ULTRA-ACT グリッドマンではこのグリッドビーム再現用のエフェクトパーツが付属している。

グリッドビーム@
グリッドマン「グリッドォォォォッ・・・
ロールオーバーで画像が変わります

グリッドビームA
グリッドマン「ビーーーームッ!!
ロールオーバーで画像が変わります

グリッドマンが単体で戦う時はほとんどの場合、この技が決め技になる。このエフェクトパーツはグランアクセプターのジョイントに取りつけることで再現されている。最近のACTの光線エフェクトで培われたノウハウが使用されており、塗装はクリアパーツにグラデーション塗装を施している。また根元の発光部分は非常にシャープに作られており、光線の威力が視覚的に伝わる。

グリッドビームエフェクト グリッドビームエフェクト
根元のパーツが非常にシャープになっているため取り扱いに注意する必要あり
必殺技らしい迫力のエフェクトに仕上がっている

怪獣を倒した後は、フィクサービームで破壊されたり改変されてしまったコンピューターワールドを修復する。

フィクサービーム
ロールオーバーで画像が変わります

このように劇中で取らせたいポーズがほぼすべて再現できるのがこの製品の素晴らしいところである。

今後の商品展開としては、グリッドマンのパワーアップ形態であるサンダーグリッドマンが2013年1月に発売される予定である。こちらは、サンダーグリッドマン用のアーマーに非可動素体が付いたもので、アシストウェポンには変形しないものの劇中の装着シーンを再現できる予定である。そのほか、もうひとつのグリッドマンのパワーアップ形態であるキンググリッドマンやほかの変形前のアシストウェポンもぜひ発売してほしいものである。

グリッドマン、超神合体だ!(ULTRA-ACT サンダーグリッドマンのコラムへ)

君も、アクセスフラッシュ!(もどる)