リボルテック セイバー

海洋堂 リボルテックシリーズ

原型:榎木ともひで

定価2499円(税込み)

リボルテック セイバー
本コラムシリーズ初の女性キャラクター登場!

士郎、リボルテックとはおいしいのですか?
本コラムシリーズは「オタクになるための教科書」というキャッチフレーズの元、合体おもちゃやプラモデルを通してロボット関連の重要な部分を紹介してきたが、その題材の選択には筆者の趣味が90%以上絡んでいるので、なかなか実現しそうに無い。特に、PCゲームや美少女フィギュアは全く取り扱ったことが無かった(注1)のだが、今回は趣を変えて美少女フィギュアの世界に足を踏み入れてみよう。

美少女フィギュアメーカーで、というよりフィギュアメーカーで有名どころの一つというと海洋堂が挙げられる。この会社はロボットから美少女物まで、幅広くキャラクターフィギュアの展開を行っているのだが、そのブランドの一つで最近注目されているのが、リボルテックシリーズである。このシリーズではリボルバージョイントと呼ばれる全く新しい関節を採用している。

リボルバージョイント
球体の両端にジョイントが設けられている
球体の部分が可動部になる
曲げたときの形はまさに拳銃のリボルバーである

この全く新しい関節機構のリボルバージョイントは、今までのアクションフィギュアの欠点を克服したものである。まず、アクションフィギュアのコンセプトは、言うまでもなくさまざまなポーズを取らせて遊ぶことである。しかしながら、関節の磨耗によってどうしても関節が緩くなってポーズが固定しにくくなっていく。ミクロアクションなどのアクションフィギュアでは関節に磨耗に強いABS樹脂を使用しているが、それでも関節のヘタリは避けられない。

その弱点を克服するために、このリボルバージョイントではラチェットを使用してポーズを固定できるようになっている。具体的にはどういうことかというと、BRAVE合金などの大き目の合体おもちゃでは、可動部分にバネとギザギザの接合部を利用したカチカチと音のなるいわゆるクリック関節を採用している箇所があるが、リボルバージョイントを使用することで、小さなフィギュアにもこのクリック関節を導入することが出来るのだ。この関節を回転させるには一定以上の力が必要なので、自重で自然に垂れ下がるということはなくなる。これにより、ポーズの固定がしやすくなる。

さらに、このリボルバージョイントのジョイント部分の直径はどれも2.5mmなので、ピンバイスなどで穴を開けてやればどのようなフィギュアにも導入することが出来る。さらに、リボルバージョイントを使っているフィギュア同士のパーツの組み替えも容易にできるようにもなる。つまり、汎用性が高いのである。このジョイントを使用すれば、自作したフィギュアや全く動かないフィギュアを可動するアクションフィギュアに改造することが出来る。

このリボルテックシリーズは、2005年の5月に初めて発売され山口可動で有名な山口勝久氏を原型師に迎えて、主にロボットキャラクターを中心にした商品展開を行ってきた。(注2)毎月15日発売、1995円という安値で高クオリティ、月2点ずつ発売、フレンドショップ(注3)による定番化という独自の商品展開を掲げて1年間活動してきたが、2年目突入を皮切りに、第2世代(セカンドジェネレーション)と銘打ち、新しいコンセプトが発表された。

まず、山口氏原型のリボルテックヤマグチシリーズのみならず、他の原型師を登用して幅広いフィギュア展開を行うことが発表された。その第1弾として、PCゲームでモンスタータイトルとなっているFate/stay nightよりメインヒロインのセイバーが選ばれた。
注1 筆者の所有している女性フィギュアは、ミクロアクション卯都木命のみ。他は合体するロボットかガンプラだらけである。美少女フィギュアに関しては、造型面の美しさは認めているが、大きいのにポーズ固定でほとんど遊べないということと、何より水着姿などの露出が多いということで敬遠していた。

注2 有名どころのエヴァンゲリオンやゲッターロボ、コンボイ、少しマニアなところでキングゲイナーやダグラムなどバリエーションが豊かで、1年間だけで25点も発売された。さすがに公式で公言していないが、月2点ずつ出さなければならないので、金型流用しやすいキャラを結構多く選んでいるのもラインナップの特徴。人間のフィギュアはデビルメイクライからダンテ、ブラックラグーンからレヴィの2点が発売されている。

注3 リボルテックシリーズ専用の棚を用意している店のこと。全国に600店舗以上あり、商品見本の展示や、チラシ、リボルバージョイント単品などの関連グッズの配布、カラーバリエーションなどのフレンドショップ限定商品の販売をしている。

その身体はきっと剣で出来ている
さて、いつもなら紹介するキャラクターのバックグラウンドを紹介するところなのだが、筆者はFate/stay nightを1度もやったことがなく、アニメも数話をチラチラ見ていたのみ。有名な台詞やキャラクターの名前、イラストは知ってはいるものの、到底説明できるレベルではない。

知っている範囲での知識であるが、聖杯戦争という魔術師同士の争いで召喚されたアーサー王の化身で、主人公衛宮士郎サーヴァント(しもべ)である。

筆者の聖杯戦争の勝手なイメージ図
聖杯戦争ってこんな感じかしら?

名は体をあらわすという言葉通り、手持ちの武器は剣で、アーサー王にちなんでエクスカリバーカリバーンを使用する。

人気キャラクターだけあって、さまざまな造形物が発売されている。今回のリボルテック セイバーは、榎木ともひで氏を原型師に招き、同氏が製作したFate胸像コレクションのセイバーの胸像を元に全身像を作製し、リボルバージョイントを仕込んだ物となっている。元になった胸像の出来がすばらしいものなので、これを基にしたリボルテックも当然すばらしいものになっている。

まず、全体的なプロポーションであるが、イラストのイメージとの乖離は全くなく、セイバーの雰囲気をよくおさえた出来である。

リボルテックセイバー 前 リボルテックセイバー 後
可憐な顔に甲冑姿が印象的なセイバーの雰囲気を見事に再現

大きさは14センチ程度。彼女の身長は156センチなのでおよそ1/11の大きさ。手持ちの人間のアクションフィギュアの中では比較的大きいほうである。

大きさ比較図
最小変形グレートエクスカイザーや凱よりも少し大きめ

顔の造型も見事の一言に尽きるもので、セイバーの可憐な顔をばっちり再現している。この手のフィギュアでよく問題視されるのが、顔の塗装であるが塗装の精度も高く、個体差はほとんど気づかないレベル。胸の複雑な模様も、タンポ印刷で塗装されており、文句の無い出来。ミクロアクションのときのように、神経質になることは塗装の面ではなさそうだ。

ただし、デフォルトの目の方向は正面から見て右を向いている。これは、アクションポーズを取らせたときに顔の表情をそれにあわせやすいようにとの製作側の計らいで、確かに右方向に構えたときは違和感なくばっちり決まる。しかしながら、真正面を向かせたり、左方向に構えるときはどうも目線が明後日の方向を向いてしまって決まらない。このあたりは、特定のポーズに特化した山口可動の特徴を引き継いでいるとも言えるが、やはりユーザーとしては幅広いポーズを取らせたいところである。なので、顔のバリエーションパーツも多数用意してほしいものである。

本体の付属品は、スタンドとカリバーンエクスカリバーである。エクスカリバーは、劇中の再現で不可視状態のものを採用。無色透明のクリアーパーツで作られている。

エクスカリバー不可視バージョン カリバーン
剣はABS樹脂製

値段の割りに付属品が少ない印象を受けるが、本体の質は他のものよりも格段によいので満足できるのではないだろうか。尚、塗装したエクスカリバーは7月に発売されるセイバーのカラーバリエーション、セイバー オルタナティヴに付属するとのこと。・・・商売上手である。

女伊達らによく動く
リボルテック セイバーには全部で20箇所にリボルバージョイントが使用されている。特徴的なジョイントを使用しているにもかかわらず、ジョイントが目立たないように配置されており、人間として自然な形になっている。

分解図
肘以外の関節は全部リボルバージョイントでつながっている

セイバーのスカートは、製品化したときに足の可動を妨げるのでアクションフィギュアとして致命的なデザインなのだが、リボルテックでは可動基部にダブルリボルバージョイントを使用して、横に開くようにしている。これで、足の干渉の問題が解決された。

下半身の可動 下半身の可動
サイドスカートが動くので、足の表情も付けやすい

リボルバージョイントのおかげで、可動範囲が広く思ってい通りにに表情をつける事が出来る。箱の内側に、セイバーがカリバーンを突き立てている代表的な絵が印刷されているが、そのポーズも取れるのだ。

絵とのツーショット 同じポーズを別の角度から
目線の問題がクリアできれば完璧

普段ならば、劇中での印象的なシーンを紹介して可動範囲の広さを見せるところなのだが、アニメもゲームもあまり知らないので、今回は剣つながりということで、ライジンオーとキングゴウザウラーの勝ち名乗りのモーションをやらせてみた。

剣をつかむ図
絶対

左腕を上に掲げる図
無敵!

腹の前で剣を突き立てられるのがお見事
ラーイジーンオー!!
ロールオーバーで画像が変わります

実際にやらせるとこの構図はどうやって剣を持っているのか疑問
熱血

剣を振り回す図
最強!
ロールオーバーで画像が変わります

剣を突き立てて顔のアップに切り替わる図
キングゴウザウラー!!

ロールオーバーで画像が変わります

付属のスタンドを使用することで、ポーズの安定性をあげることができる。また、柱パーツを追加することで、飛び掛るポーズも再現することが出来る。

柱パーツなしの使用例 柱パーツ使用でのポーズ例
足をはめにくいのが難点

可動に関しては、リボルバージョイントの特性を最大限利用しているので、非常にポーズが決めやすい。クリック機構により、ジョイントの角度が決まっているので、普段センスの悪い筆者でも安定した綺麗なポーズを決めることが出来た。リボルバージョイントの癖に慣れてしまえば、非常に遊びやすい製品である。
ただし、逆に言うと微妙な角度の調整が出来ないという欠点もあることにはある。それが気に入らない人は、イエローサブマリン製の球体ジョイントがリボルバージョイントと同じ直径なので差し替えてみるのもよいだろう。

大乱闘スマッシュ聖杯戦争
いつもならば、このあたりでストーリーの紹介を行うところであるが、全然ゲームをやっていないこのキャラクターに限っては、そのように出来ない。というわけで、家にある近いサイズのキャラクターで聖杯戦争をやってみた。今回は文字数を極力抑えてみたので、台詞やシチューエーションは各自の想像の上で楽しんでもらいたい。

特別出演!我が家の最小変形シリーズ全部
大乱闘スマッシュブラザーズみたいやな

セイバーvsゴッドグラヴィオン
見えないエクスカリバーの威力は強力だ

セイバーvsマイトガイン
セイバーは体術にも優れているぞ(筆者の勝手な想像です)

セイバーvsゴッドΣグラヴィオン
マイトガインの落とした動輪剣でグラヴィトンランサーを防御しつつ
エクスカリバーで胸をブッ刺す
ロールオーバーで画像が変わります

セイバーvsソルΣグラヴィオン
不意打ちも難なく返り討ち

セイバーvsグレートエクスカイザー
エクスカリバーの太刀筋を見切ったグレートエクスカイザー
グレートカイザーソードのパワーの前にピンチに陥るセイバー
ロールオーバーで画像が変わります

セイバー逆転!
渾身の力でけりを入れて窮地を脱出
ロールオーバーで画像が変わります

セイバーvsグレートエクスカイザー
エクスカリバーがグレートエクスカイザーに炸裂!
ロールオーバーで画像が変わります

グレートカイザーソードを持つセイバー
奪ったグレートカイザーソードで止めを刺す

聖杯戦争決着!
熾烈な戦争を圧勝したセイバー

このような、殺陣も難なくこなせるので、この商品のプレイバリューは非常に高い。2499円というこの手のフィギュアとしては安値で、造型・可動ともに文句ない素晴らしい仕上がりである。

女性らしく繊細すぎるところがあります
セイバーというキャラクターの起用で、売り切れが予想されたが、初期出荷数が非常に多い模様で、すぐに売り切れてがっかりするということはあまりなかった。これは、限定商品のように無くなればそれまでという不健全な環境からの脱却を図ったそうで、人気商品にもかかわらずユーザーが安心して購入できるのもリボルテックのよいところである。

しかしながら、この大量出荷が裏目に出始めているようである。それは、初期不良の混乱の収拾が大変ということ。実は、セイバーの肘パーツのみABS樹脂を使用し、リボルバージョイントを使用していないのだが、この部分が非常にもろい。
普段リボルテックを買わないライトな層が、セイバーというキャラクターに惹かれて買った挙句、うっかり変な方向に力をかけてしまって壊してしまったというのも中にはあるのかもしれないが、中には箱から取り出した腕がボロリと取れたという悪夢のような個体もあったのだ。

これにはさまざまな要因が絡んでいると思われる。まず、第1の要因は設計時における素材の選択ミスと塗料の選択ミスにあるといって良いだろう。ABS樹脂は塗料の溶剤に非常に弱い。これはモデラーには常識で、ABS樹脂のパーツには溶剤を使った塗装は施さない、つまり水性塗料の使用が定石なのだが、セイバーの場合ABSのクリアーパーツを塗料で青くしているのだ。これは、おそらく金型の都合(注4)でエクスカリバーのクリアーパーツを作るときにコスト削減のため肘パーツも同じ型で成型したのかもしれない。
しかも、このセイバーはすごく石油臭い。これはすなわち、大量に溶剤が使われているという証拠。普通の素材よりももろいクリアパーツのABSに、揮発剤を大量に使った塗料を乗っけてしまえば、その結果は容易に想像がつく。

もう一つの要因として、パッケージングの方法が考えられる。パッケージに入った状態を見ればわかるが、セイバーらしい演出を狙ってか、最初から右ひじにカリバーンを持たせて曲げた状態で入っている。

未開封状態のパッケージ
見た目は格好いいのだが・・・

実は、「肘を曲げてある」というのが曲者で、梱包する段階で生産者が力を考えずに右ひじを曲げて皹が入ったという可能性も考えられる。事実、破損箇所のほとんどが右ひじに集中しているのだ。このように壊れる要因がたくさん考えられるというのが恐ろしい。

さらには、時期的な問題も絡んできた。セイバーの正式な発売日は5月1日で、ゴールデンウィークの最中ということもあり、海洋堂からの十分なサポートを与えられない。これは、あまりの破損率の高さに事態を重く見た海洋堂がGW中の専用ダイヤルを用意して対応してはいるものの、つながらないという声もチラホラ聞く。さらに、中国側も労働祭で休みということがあり、未だに破損の原因が正式につかめていないでいる。

人気商品ということでそれを見越して大量に出荷しているということで、大変な混乱が起こってしまった。事態を重く見た海洋堂は緊急で消費者への注意を促しており、店舗も特例として顧客に開封させて確認させている店も出てきている。混乱のほどがよくわかるだろう。

筆者のセイバーは幸いなことに今のところ白く変色したり、ひび割れたりしている箇所は見受けられなかった。しかしながら、素材の見直しや改良版をリリースした場合のパーツの交換などサポートも、今後充実させてほしいものである。でないと、安心してガシガシ遊ばせられません(泣)(注5)
注4 金型の製造は非常にコストがかかる。

注5 撮影して散々遊んだ後にこのような情報を聞いたので、身の毛がよだちました。(実話)

問おう!貴方が私のマスターか?(もどる)