S.H.Figuarts ペガサス光牙

バンダイ S.H.Figuartsシリーズ

定価:3990円(税込)

S.H.Figuarts ペガサス光牙
次世代の聖闘士、ペガサス光牙がS.H.Figuartsに登場!

この世に邪悪がはびこるとき、必ず現れる希望の戦士・・・
星座の聖衣クロスをまとい
おのれの肉体に秘められたエネルギー、小宇宙コスモを爆発させて戦う
彼らこそ、地上の愛と平和を守る戦士・・・

聖闘士セイント!!

(OP冒頭のナレーションより。古谷徹氏の声で読むべし!)

星矢が救った命!甦れ聖闘士伝説!
ジャンプ黄金期に作られた漫画はその続編、いわゆる2世物としてリバイバルされることがここ10年で定着したと思う。『キン肉マン』や『シティーハンター』などといったジャンプ黄金期を支えた漫画は主人公の息子や年を重ねた主人公が活躍する漫画は昔からのファンや新規のファンを惹きつけ、根強い人気を誇っている。

ジャンプ黄金期を支えた漫画である『聖闘士星矢』も例外ではなく、紙面を別の雑誌に移植しハーデス編のその後を描いたり、前聖戦の時代を描いた作品が人気を誇っている。しかし、聖闘士星矢シリーズはアニメ化がかなわなかったハーデス編のアニメ化を優先させたため、次の世代の聖闘士が活躍する2世物のシリーズは放送されてこなかった。2008年の『エリシオン編』の完結を持って曲りなりに旧シリーズの映像化がやっと完了したくらいなのである。

その後数年間は、チャンピオンで連載されている『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』がOVA化されたりもしたが、聖闘士星矢アニメを支えた名作画監督、荒木伸吾氏が急死するなどの事件もあり『星矢』の正統的な続編の製作は絶望視されていた。

そんな中、2012年になって『聖闘士星矢Ω』と題した新作のテレビ放送が発表された。放送時間は、日曜日の朝6時半と昨今の子ども向けアニメの定石を踏んで早朝に放送し、声優問題で降板していた古谷徹氏を再び星矢役で起用し、次世代の聖闘士である光牙を主人公にした完全新作という触れ込みであった。キャラクターデザインは、荒木氏・姫野氏に代わって『プリキュア』シリーズのキャラクターデザインで有名な馬越嘉彦氏を起用。まったく新しい聖闘士伝説が今ここに始まったのである。

冥王ハーデスを打ち破った後、役目を終えた神聖衣は元の最終青銅聖衣に戻り、タナトスとの戦いで破壊された射手座の黄金聖衣も修復され、星矢が射手座の黄金聖闘士に昇格した。地上はつかの間の平和を享受していたが、その平和を破る物がいた。それが戦いの神、マルスである。マルスは、赤ん坊の面倒を見ていたアテナこと、城戸沙織に襲いかかるが、そのマルスを星矢が阻んだ。星矢はマルスと交戦し、互いの必殺技を技の撃ち合った。

その13年後、星矢に守られた赤ん坊、光牙は孤島で沙織とと共に暮らし、シャイナと聖闘士になるための修業を続けていた。聖闘士になることを強制され、厳しい修業を課せられた光牙は聖闘士になることに対して疑問を抱いていたが、沙織は「聖闘士にならないと守れないから」と光牙に諭す。

そんなある日、マルスが再び沙織の下に現れた。マルスの狙いは13年前と同じく、沙織を連れ去ること。彼女を守るためにシャイナがマルスと戦うも、まったく勝負にならず逆に吹き飛ばされてしまう。連れ去られかけた沙織を救いたいと強く願った光牙に反応し、ペガサスの聖衣が光牙に装着された。

ペガサス聖衣、装着!
ロールオーバーで画像が変わります

ペガサス聖衣、装着!
ロールオーバーで画像が変わります

ペガサス聖衣、装着完了!
ロールオーバーで画像が変わります

聖衣に驚く光牙
光牙「これは・・・?」

星矢「光牙、小宇宙を燃やせ!」

光牙「!?」

星矢「お前の小宇宙を燃やすんだ!」

光牙「小宇宙を・・・燃やす・・・?」

ペガサス聖衣をまとった光牙は、聖衣に宿った星矢の意志に導かれ自身の小宇宙を燃焼させ、マルスに敢然と立ち向かっていくのだった・・・。

拳を繰り出す光牙
光牙「うおおおおおおおおっ!!!

今ここに、新たな聖闘士の神話が始まったのだった!!

炸裂した隕石と世相はいろいろな物を変化させていってね・・・。
聖闘士星矢シリーズは、連載当初はおもちゃとの連動が視野に入れられており、聖衣をオブジェ形態と人形に装着できるギミックを持った聖闘士聖衣大系セイントクロスシリーズが発売されていた。当然、日曜日の朝にやるということは、子どもの世代も取り入れる目論見があったはずである。しかし、蓋を開けてみると特におもちゃの展開はなく、聖衣のオブジェ形態への変形も廃止された。

新世代の聖衣は聖衣石クロストーンと呼ばれる様々な形の宝石状になり、変身の要領で聖衣が装着される。過去のシリーズのように、パンドラボックスを背中に背負って箱を開けるとオブジェ状の聖衣が出てくる・・・というようなことではなくなったのである。作中では隕石が衝突し、聖衣と融合、これまでの聖衣をすべて新しい姿に再生させ、さらに聖闘士に属性が備わったという設定になっている。

昔の聖衣
星座を模したオブジェから鎧になるのが魅力の一つだったのだが、廃止!
コンパクトさがステイタスになっている世相を反映したのだとか・・・。

聖衣が小さな石になったことで、持ち運びがしやすくなった利点があるが、『聖闘士星矢』の大きな魅力が一つなくなってしまったのが非常に残念である。大人向け商品である聖闘士聖衣神話セイントクロスマイスが売れているのだから、このギミックは継承するべきだったと思うのだが・・・。

また、聖衣のデザイン自体も金属製の鎧から変身スーツの様なデザインに変更された。これは、角ばった鎧状のデザインだと、動かす時に作画が大変であるという理由からだろうと推測されるが、パッと見た感じではプリキュアの様なコスチュームにしか見えないのが残念である。

ただし、聖衣のデザインを簡略化したおかげでアクション面では文句のない作画になっており、劇中の聖闘士はグリグリ動く。旧作の青銅聖衣もスーツのように作画されていたことが多々あったので、この点は痛し痒しなところである。また、聖衣のデザインコンセプトは「未知の素材で作られたしなやかな金属」という設定で、作中では効果音や光の加減でちゃんと聖衣は金属パーツであるということが演出されている。

このように、聖闘士星矢のまさに肝である部分が大きく改変され、筆者も最初は受け入れにくかったのだが、聖衣の装着シーンのバンクは出来が良いものだったし、星矢の売りだった「泥臭さ」と「熱さ」は作品にそのまま継承され、これぞ星矢というノリでの作品に仕上がっている。マイナスな意見を羅列してしまったが、この重要なテイストはなくなっていないため、これも時代の流れかと筆者は受け入れることができている。

言わずと知れた、アテナの聖闘士だ!(ver.Ω)
聖闘士星矢の人気は根強いものがあり、聖闘士聖衣神話を進化させたver.2とも言える聖闘士聖衣神話EXも展開し、このシリーズで発売された黄金聖闘士は売り切れてしまうほどである。正統的な続編であるΩも商品展開しなければまずいということで、聖衣装着ギミックをオミットしS.H.Figuartsで展開することとなった。

神話シリーズのS.H.Figuarts化は、装着ギミックに興味のないアクションを楽しみたい層がいることに着目してのことだろう。そのためか、スポンサーのバンダイはあえて聖衣の装着ギミックをなくし、アクションフィギュアとして出しやすいデザインを求めたのだと考えられる。

商品が初めて出たのは、放送を開始してから8ヶ月後の2012年12月である。第一弾として抜擢されたのは、主人公のペガサス光牙である。

S.H.Figuarts ペガサス光牙 前 S.H.Figuarts ペガサス光牙 後
劇中の四肢のバランスを忠実に再現し立体化したペガサス光牙
ダイキャストなどの金属パーツは使われていません

劇中のキャラクターデザインは、S.H.Figuartsのアニメのイメージに近いシンプルなアクションフィギュアを出すコンセプトにはうってつけのもので、劇中のイメージを損なうことなく立体化に成功していると言える。馬越氏のキャラクターデザインらしく、腕と足がすらっと長いアニメのイメージをよく再現できている。

このペガサス光牙には金属パーツは使用されておらず、すべてPVCの軟質素材とABSとPOMを使用したモデルとなっている。またメッキパーツも使用されていないため、神話シリーズにあったずっしりとした重量感や金属の輝きを楽しむことは出来ない。その代わり、関節部や胸のクリスタルパーツはクリアパーツが使用されている。

クリアパーツ クリアパーツ
膝や肘のクリスタルはクリアパーツ製
ちなみに、このクリスタルは光牙の聖衣石と同一形状である

聖闘士聖衣神話シリーズと同じく、頭部のマスクパーツは取り外すことができる。ただし、マスクパーツは髪の毛と一体成型になっている上に、頬当ての部分は表情パーツに取り付ける形になっているので、劇中のようにマスクを手に持たせることは出来ない。

マスクパーツ
神話シリーズと違い、マスクパーツは髪の毛と一体成型になっている

マスクパーツの取り付け方
頬当てパーツは表情パーツにジョイントで取り付ける

一体成型になっている恩恵で、頭部のラインは劇中のイメージに近いものになっているのが良いところと言えるだろう。また、神話シリーズと同じくマスクを付けない時の前髪パーツも用意されている。

マスクを取り外したところ

後ろ髪は干渉しないように、上へ跳ね上げることができるようになっており、頭部を回す時に重宝する。また、可動させる時に干渉する肩パーツには軟質パーツが使用されており動きに合わせて肩パーツが曲がるようになっているので、腕を真上に伸ばすこともできる。

腕を真上に伸ばしたところ
ヒンジがないにもかかわらず、軟質素材の柔軟性で肩を真上に上げることが可能

付属品は平手パーツが3種類付属し、さらに神話シリーズではあまり重宝されていなかった表情パーツが2種類付属している。

付属品一覧
表情パーツは必殺技を放つときなどに使えますね

これらの付属品を使用することで劇中の光牙の必殺技であるペガサス閃光拳ペガサス流星拳を放つことができる。

ペガサスの属性は光!
ライオネット蒼摩「間違いない、ペガサスの属性は光!」

ペガサス閃光拳
ペガサス閃光拳!
ロールオーバーで画像が変わります

ペガサス流星拳
うおおおおおおおおっ!
ロールオーバーで画像が変わります

ペガサス流星拳
ペガサス流星拳!
ロールオーバーで画像が変わります

このように劇中のイメージ通りのポージングが可能となっている優れものである。

・・・だが、商品展開が少し遅れているため、新・十二宮編に合わせて聖衣のデザインが変わっていることに対応できていないのが難点である。このシリーズでは、新たに牡羊座の黄金聖闘士に昇格したアリエスの貴鬼によってマルスとの戦いで傷ついた聖衣が修復されたのだが、その時に右腕のデザインが変更、腕全体を覆ったフルアーマー仕様に変更された。別の商品として出すのもまどろっこしいマイナーチェンジなのが商品化を難しくしそうである。今後、ほかの青銅聖闘士を出す場合、双方のデザインを再現できるようにしてもらいたいものである。

今後の商品展開は魂NATIONSでオリオン座のエデンの試作品が作られている。Ωシリーズにも新たな黄金聖闘士が登場しているので、是非とも仲間の青銅聖闘士と黄金聖闘士は続々商品化していってもらいたいものである。

君は、小宇宙を感じたことはあるか!?(もどる)