MG V2アサルトバスターガンダム(ver.Ka)

バンダイ マスターグレードシリーズ

拡張セット 定価:2700円(税込み)

V2アサルトバスターガンダムセット 定価:7560円(税込み)

プレミアムバンダイ限定


MG V2アサルトバスターガンダム(ver.Ka)
立体化完全再現不可能と言われていた宇宙世紀最強のMSがマスターグレードで登場!
エンジェル・ハイロウにいるシャクティを救い出せ!!

天使の輪の上で
ザンスカール帝国の地球クリーン作戦は、連邦軍との間で停戦協定が結ばれたことで一時中断された。しかし、ザンスカール帝国は次の一手として、木製圏よりひそかに資材が運ばれ開発された巨大兵器、エンジェル・ハイロウを開発した。エンジェル・ハイロウのなかには、100万人単位のサイキッカーたちが収容され、女王マリアの祈りやシャクティの祈りにより、地球上の人々は幼児退行するようになる。

表向きは平和を実現させるための兵器だが、その開発の真意は地球上のありとあらゆる生命を眠りにつけ、地球を浄化するという作戦なのであった。この作戦を察知したリガミリティアは地球連邦軍のムバラク=スターン率いる連邦宇宙軍と共同戦線を張り、ザンスカール帝国に対抗するのだった。ウッソたちの戦いは再び宇宙に場所を移し、ここに最終決戦の火ぶたが切って落とされた。

宇宙に上がったウッソの前には強化人間にされたファラ=グリフォンザンネックゴトラタンなどの強力なMSが立ちふさがる。強化されていくザンスカールのMSに対抗するため、ウッソのV2ガンダムにはオプション装備が配備された。V2ガンダムは防御力を強化したアサルトパーツ、火力を強化したバスターパーツの装備が可能となりファラのザンネックやゴトラタンと死闘を演じた。また、この装備は取り付け箇所が違い、互いに干渉しないため、アサルトパーツとバスターパーツの同時装備も可能である。この同時装備した状態は、V2アサルトバスターガンダムと呼称される。

番組終盤でこれらの装備が登場したのだが、この要素は当初の企画では予定になかったものでプラモデルのテコ入れのために用意されたものであった。また、この当時はアニメの制作側とプラモデルの仕様のやり取りが非常にアバウトで、プラモデルとアニメでの装備方法が違うという矛盾が生じてしまっていた。これらの矛盾から、変形合体をこなしかつアサルトバスターの装備が可能であるプラモデルの発売は不可能とされていた。

しかし、2018年にバンダイスピリッツはこの不可能とされたV2アサルトバスターガンダムの開発についに成功、プレミアムバンダイで発売を見た。というわけで、今回はMG V2アサルトバスターガンダムを紹介しよう!

ウッソ聞こえて?また新しい追加パーツが発売されたわよ
HUYU君のROBOT魂 V2アサルトバスターガンダムのコラムで述べられているように、V2ガンダムにも戦局に対応するためのオプション装備が用意されている。それがアサルトパーツや、バスターパーツである。V2ガンダムの肩アーマー、スカートの中央に装甲を追加。サイドスカート、膝アーマーに追加パーツを取り付ける事で、V2アサルトガンダムという形態に変化する。

V2アサルトガンダム 前 V2アサルトガンダム 後
強化装甲をまとい、ビーム攻撃からの耐性が上がるV2アサルトガンダム
実体盾や追加の高出力ビーム砲を持つ

また、フロントスカートアーマーに装甲を追加し、リアスカート、膝側面にパーツを追加、背中にメガ・ビームキャノンスプレー・ビームポッドを背負わせる事でV2バスターガンダムになる。

V2アサルトガンダム 前 V2アサルトガンダム 後
二次元のウソを孕んでいるV2バスター
メガビームキャノンの劇中での装着のせいでこれまで立体化が困難だった

この形態はその名の通り、長距離砲撃を得意とする形態で特に背中のメガビームキャノンは、戦艦のビームシールドすら貫通し、一撃でやすやすと戦艦を沈めることができる。

特にこの形態は、メガビームキャノンの背負い方が設定と劇中とで食い違いが生じており、劇中準拠で装備させるとなると変形合体するモデルの立体化が非常に困難となる部分であった。放送当時に発売された旧HGモデルも、この箇所は一度翼パーツを外さないと取り付けられないし、後に発売されたHGUCやROBOT魂でもこの箇所は追加パーツで済ませている。変形と合体の問題をどのように解決するか長い間解決のめどが立たず、V2ガンダムはその人気の高さのわりに全くMG化されてこなかったわけである。

取扱説明書でも、この立体化の難しさについてデザイナーのカトキハジメ氏が述べている。1990年代は、アニメビジネスやキャラクタービジネスが今のように確立されてはおらず、非常に縛りが緩かった。デザイナーのカトキ氏はこのメガビームキャノンの取り付けを一度翼を取り外して取り付けるよう設定していた。しかし、いざアニメのふたを開けてみると劇中ではキャノンを一度パージし、そのままアサルトパーツを装備させたのちにバスターパーツを翼を取り外さずに取り付けたというシーンが登場してしまった。今ほど綿密に劇中での扱いを商品を売る側とアニメ作成スタッフの間で打ち合わせていなかったことから生じた問題で、この問題をどのように解決するかがMGでは求められていたわけである。

2015年にMG V2ガンダムが発売された時点でこの装甲追加は前提に組まれており、バスターパーツやアサルトパーツの追加装甲を取り付けるためのジョイントや隙間が隠されていたのである。具体的には、フロントスカートの装甲を開くとジョイントが隠されていたり、膝の青いアーマーに隙間ができたりするギミックが最初からあったのである。

フロントスカートの展開 膝アーマーの隙間
隙間を作ることで追加装甲を取り付けることができるようになっているのがミソ

しかし、MG V2ガンダムの時点ではいろいろな懸念もあった。まず、変形合体を小さな体躯で再現したがゆえに扱いにデリケートさが求められるうえに、関節の保持力と強度が弱かったのである。特に、肘関節内部は強度的に非常にもろく、重い武器を持たせようものなら保持できないばかりか、腕を曲げるとC字リングに負荷がかかり破損してしまうということもあった。

肘関節
白化しやすく、腕を動かすとひびが入りやすい箇所

これらの欠点はバンダイ側も認識していたようで、この箇所を改善するために新たに関節パーツを作るという荒業に出た。アサルトパーツとバスターパーツのセットには、アップデートされた関節部が追加されており、未組み立てのMG V2ガンダムと組み合わせることでキットを完成させる仕様となった。

まず、最大の問題となっていた肘関節はC字リングから挟み込むタイプに変更。このおかげで、動かすだけでひびが入ることはまったくなくなり、アサルトパーツのメガビームライフルメガビームシールドもやすやすと保持することが可能となった。

新旧関節の比較 メガビームライフルの所持
左側が新規肘関節
肘の強度が上がり、ポージングもやりやすくなった

このほか、股間のアーマー内部のパーツや肩関節、股関節が新造されている。肩関節は前後のスイングが廃止された代わりにより堅牢なつくりとなり、股関節に関しては少し軸が斜め上に造形されているのでハの字立ちがより決まるようになった。また、股関節をつないでおくジョイントも新造されていたので変形機構が勝手に開き、股関節が開いてしまうということもなくなった。

股関節 股間のアーマーの内部パーツ
左側が新規造形パーツ
股間のアーマーは追加装甲を取り付けるための穴が追加された

肩関節
この画像のみ右側が新規パーツです
一体成型で作られるようになった肩関節
前後スイングがなくなり可動範囲が狭くなるが、その分肩の強度が上がる

このほか、コアファイターV2の尾翼アーマーに切り欠きが追加され、さらに主翼下部の白い箇所も新規造形となりバスターパーツの追加のウイングパーツを取り付けられる仕様になっている。

開発者によると、元のMG発売から3年近くの時間が経過しており、その間追加アーマーを考えるついでに関節も再度煮詰めることが可能となり関節強度の向上を実現したとのこと。この変更のおかげでMG V2ガンダムが取り扱いやすくなったが、今後一般再版されるMG V2ガンダムに標準でつけてほしいところである。

製品のクオリティが上がることは非常に喜ばしいことだが、関節を丸ごと交換するということですでにキットを組んでしまっている人はそのキットを分解する必要がある。しかしMG V2ガンダムはその小型さ故、取り付ける軸は細く、破損なしの分解は極めて困難である。そういうわけで、パーツセットでは「未組み立てのキットを用意してください」という文言が追加されており、すでにキットを持っている人はもう一つ同じキットを買う必要があるのである。

筆者はこのような事情から、すでにMG V2ガンダムを2つ所持しているにもかかわらず、本体付きのV2アサルトバスターガンダムを購入することにした。これでV2ガンダムは通算3体目となり、劇中ではワンオフ機のはずが、まるで量産機のようにV2ガンダムが増えてしまった。(注1)

注1 本体とのセット版は、過去のHGをイメージし、黄色いパーツはすべて金メッキが施されている。このメッキ処理を施すため、キットの黄色パーツに関してはアンダーゲートにアップデートされている。セット版を売りたい意図と、すでにキットを持っている人への配慮だろう。なお、パーツセット単体ではメッキは施されず、元のMGの黄色パーツに近い金色が採用されている。
Don't Stop! Carry on!(アサルトバスターへの追加装備を)あきらめな〜い♪
セット版は、MGで黄色だった箇所が旧HGをイメージしたつや消しのメッキが施されている。このメッキをかけるため、新たにこの黄色いパーツはアンダーゲート方式に変更された。付属のアップデート関節を使用してくみ上げた本体がこちらである。

セット版V2ガンダム 後 セット版V2ガンダム 後

単品版との比較
パッと見た感じでは黄色い部分がメッキになった以外は変わらない。
しかし、内部機構が大幅にアップデートされているのである

これらの関節機構の変更と一部パーツの形状変更のおかげで、V2ガンダムはアサルトパーツとバスターパーツを付け替えなしで装備することが可能となった。まず、アサルトパーツの詳細な取り付け方法を見てみよう。

アサルトパーツは、アーマーの金色の外側装甲が展開するようになっている。

肩アーマーの展開
ロールオーバーで画像が変わります

すると、V2の肩アーマーに接続するための空間ができるので、V2ガンダムの肩アーマーを上へ跳ね上げ白い部分の装甲をスライドさせ、できたアサルトパーツの肩アーマーを取り付ける。

アーマー内部
肩をすっぽり埋める空間ができる

肩アーマーの変形
装甲をスライドさせることでジョイントの受けが出てくるのがお見事
ロールオーバーで画像が変わります

肩アーマーの取り付け
このように装甲ロックされる。
保持力も抜群である
ロールオーバーで画像が変わります

膝は先にも述べたように、膝装甲の青い部分の隙間にABS性のプレートを挟み込む形式で膝アーマーを取り付ける。腰サイドアーマーについては、MG V2ガンダムのころから設けられていた腰サイドアーマーのハードポイントに設定どおり取り付けることが可能である。この腰サイドアーマーはガンダムF91が装備していたヴェスバーとなっており、前方向に展開し装甲を展開することも当然可能である。

腰サイドアーマーのハードポイント ヴェスバー(展開状態)

ヴェスバーを展開させてしまうと、裏面から装甲をスライドさせるレールが丸見えとなってしまう。おそらく、デザインした側はこのレールも含めてデザインの一部としたのだろうが、隙間が見えてしまうので気になる人はプラ板を張り付け、レールが見えないように隠そう。

アサルトパーツのメガビームライフルとメガビームシールドは、ビームシールド発生装置に取り付けることになっている。シールド発生装置の赤い先端部を取り外すと、ビームサーベルを収納するための広めのスペースがあるので、そこにとりつけるわけである。このおかげで、この大きな装備を保持することが可能となった。

メガビームライフルの取り付け メガビームシールドの取り付け
強度が上がった関節と合わさることで巨大な装備も持ち上げることができる

メガビームライフルは当然、白い部分を差し替えなしで展開させることができる。白い部分をスライドさせることでそのまま砲身が完成する。

メガビームライフルの展開 メガビームライフルの展開
その長大さから、通称「物干しざお」と呼ばれるメガビームライフル
ROBOT魂では砲身は付け替えだったが、MGではスライド展開する

このようにアサルトパーツは装甲のスライドでジョイントが現れ、そこに取り付ける方式で内部機構を変更すれば取り付ける仕様となっている。

一方のバスターパーツは外観を少しいじることになった。特に、設定段階では翼を取り外してから取り付けるようになっていたバスターパーツは、劇中の再現を行うため、コアファイターの尾翼パーツ下の装甲の形状を変更している。具体的には、左右に切り欠きが追加され、この切り欠きにバスターパーツの爪をひっかけることで取り付ける。

コアファイターの切り欠き

バスターパーツの取り付けは、コアファイターを組む段階で指示されており、バスターパーツを取り付けたままコアファイターを変形させる仕組みとなっている。

コアファイター(バスターパーツ付き) 前 コアファイター(バスターパーツ付き) 後

バスターパーツは、翼を覆うための空間が作られており、その空間に翼を覆う形になっている。切り欠きと、翼に被せる方式に変更したことにより、翼を取り外さなくてもバスターパーツを装備できるようになっている。

前から翼を見た図 後ろから翼を見た図

脛や腰フロントスカートや、リアスカートに取り付けるアーマーは内部に隠されたジョイントを使って取り付ける。このジョイントはもとからあったジョイントで改造することなく取り付けることが可能である。

フロントスカートに装甲を取り付けたところ
元のキットから設けられていた細いジョイント受けを使用する。
細いピンをこの部分に通し、裏から装甲を取り付け前後で挟み込むのでポロリと取れにくい

脛のアーマー取り付け
元々脛にあったハードポイントを使用する。
ロールオーバーで画像が変わります

フロントスカートと脛の追加装甲は差し替えることでミサイルハッチを展開させることができる。ここは好みでパーツを選ぶとよいだろう。

すべての追加パーツを取り付けたらこのようになるわけである。

MG V2アサルトバスターガンダム 前 MG V2アサルトバスターガンダム 後

通常版との比較
装甲が追加され、全体的に大きく見えるようになった
この形態が設定上では宇宙世紀最強のMSとされている

変形合体をこなし、装甲の着脱まで再現しているにもかかわらず、このプロポーションの良さである。各アーマーのバランスや形状はカトキハジメが直接試作原型にパテを盛り付けて調整していただけあり、非常にこだわり抜かれている。しかも、この形態からアーマーを取り付けたままで設定上可能とされている変形もこなせる。

しかし、変形好きな筆者であるが、V2ガンダムの変形は非常にデリケートであることに変わりはないので、劇中に登場していない設定上の産物ということから筆者は変形させていない。MS形態での固定モデルとしてこのキットを楽しんでいる。どうしても気になる人は、公式HPなどで画像をチェックしてほしい。

追加装甲たちの昇天
アサルトパーツの装甲とバスターパーツの火力が合わさり、この形態のV2アサルトバスターガンダムは宇宙世紀最強のMSとして位置づけられている。現に劇中でもバスターパーツの遠距離攻撃で艦隊に攻撃を仕掛け、アサルトパーツの追加装甲と装備で対MS戦もこなし、圧倒的な力を見せていた。

しかし、当時の手描きアニメではやはり動かしたり画面に出したりするのは大変だったためか、その活躍の時間は、わずか3分程度である。登場してから、戦艦やMSなどのある程度の敵を撃破した後、カテジナのゴトラタンに格闘戦をしかけられ、バスターパーツをさっさと破壊されている。劇中ではあまりに装備を取り付けすぎたため、格闘戦が不得手となっており、長物であったバスターパーツが先に破壊されたというわけである。

その後、アサルトパーツもエンジェル・ハイロウ内に突入した際、ネネカ隊のバズーカ攻撃により破壊されている。(注2)リアル路線を考える富野監督は、何でも装備をつければ強くなるとは考えていないうえに、プラモデルのテコ入れのためのパワーアップを良しとしていなかったことがうかがえる。登場はさせたものの、そこまで目立った活躍をV2アサルトバスターガンダムに与えなかったわけである。

装備をすべて破壊されても、元のスペックが高いV2ガンダムは最後まで戦いを戦い抜いた。リーンホースJrの老人たちやゴメス艦長、シュラク隊の隊員全員、オデロを失いながらも、V2ガンダムはカテジナのゴトラタンをエンジェル・ハイロウ内で下し、光の翼でエンジェル・ハイロウを宇宙へ上げた。役目を終えたV2ガンダムは出力が低下していき、最後はマーベットのVガンダムととともにカサレリアに打ち捨てられた。Vガンダムと並んでたたずむV2ガンダムの画とともに、『機動戦士Vガンダム』は幕を下ろしたのだった。
注2 カテジナの命により、ウッソを幻惑するため全員が水着を着せられ生身のままバズーカ攻撃を仕掛けた。ウッソは容赦なく生身の彼女たちにV2の機体をぶつけ、ネネカに至ってはビームサーベルで蒸発させられている。元は、ネネカ隊は全裸の状態でウッソに攻撃を仕掛ける予定であった。黒富野全開の描写である。
「シャクティ、手が氷の様だよ。」「川で洗いものしていたから」「そう・・・。」(もどる)