HGAW ガンダムX

バンダイ HGACシリーズ

定価:1890円(税込)

HGAC ガンダムX
宇宙世紀以外のHGシリーズついに始動!
戦後15年・・・新たなガンダム伝説が幕を開ける。

かつて戦争があった・・・。
一つのコロニーの独立運動を端に発した紛争が、地球全土を巻き込んだ全面戦争になったのだ。
戦争がこう着状態になって8カ月・・・宇宙革命軍は地球に甚大な被害を及ぼすコロニー落とし作戦を切り札に地球連邦政府に対して降伏を迫った
これに対して連邦軍は極秘に開発していた決戦兵器MSガンダムを導入、徹底抗戦の構えを取った

コロニーを迎撃するガンダムX

だがこの一撃が人類史上最大の悲劇の引き金となった
勝利を焦った革命軍は作戦を強行、連邦軍も一歩も退くことなくこれに応戦・・・
戦いは泥沼となり、ついには人類すべての故郷である地球に致命的なダメージを与えてしまった
100億を誇った人口のほとんどが失われた

戦いを続けるガンダムX

もはや戦争に勝ちも負けもなかった・・・

頭部を破壊され漂うガンダムX

そして15年の時が流れた・・・。

第1話冒頭のナレーションより


(シリーズが)生き延びた先には、何があるのか?
『機動戦士 ガンダム』で登場したニュータイプという概念は、宇宙世紀のガンダムシリーズの中では重要な要素である。富野監督が手掛けてきたガンダムシリーズでは必ずと言ってよいほど登場するし、2010年からOVA化が展開されている『機動戦士 ガンダムUC』でもニュータイプがテーマの重要な部分を占めている。

そもそもニュータイプとは、人類が宇宙で生活を始めたことにより認識力が向上した人間である。認識力が向上しているため、常人よりも空間認識力、直感力が上がっており、人類の革新とされている。

宇宙世紀以外のガンダムでもこのニュータイプが登場する作品がある。それが平成ガンダム第3作、『機動新世紀 ガンダムX』である。この作品を監督した高松信司監督は、『勇者特急 マイトガイン』などでおなじみのメタフィクションを得意とする。前作『新機動戦記 ガンダムW』の後半から引き続き監督として起用されたのだが、勇者シリーズのテイストを混ぜながらこのメタフィクションを活用し、ガンダムシリーズで取り扱われてきた「ニュータイプ」という概念ひいては『ガンダムシリーズ』という現象を作品の中で描いている。この作品のテーマから『ガンダムを考えるガンダム』という評価も受けている。

舞台となるのは、第7次宇宙戦争から15年経過したアフターウォー(AW)0015年。この世界は先の宇宙戦争のコロニー落としにより地球環境は荒廃しており、無法地帯と化していた。ストーリーは主人公の少年、ガロード=ランが前大戦の決戦兵器、ガンダムXに乗り込んで、一目ぼれしたニュータイプの少女、ティファ=アディールを守るために奮戦するいわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」物である。特殊な力はないものの、ガロードの前向きな姿勢は出会った人々の運命を変えていく。

OP冒頭のガンダムX
荒廃した世界を舞台にガロードとガンダムの冒険が始まる・・・

ただ、前作のガンダムWに比べてガンダムXは「地味」という印象が付きまとっている。話の骨格はなかなか考えられているが、Wと比べるとキャラクターのビジュアルは地味であるし、世界を滅ぼすほどの戦争が集結した後の話を描いているため、全体的に作品も暗い雰囲気を醸し出していることが地味と言われるゆえんであろう。

また、テレビ局内のごたごたで関東では早朝放送に回されたのが致命的であった。今でこそ子供向けアニメが朝にやるのは当たり前だが、放送された1996年のころはアニメは夕方にやるのが普通で、早朝に回されてしまったためガンダムXの視聴者は激減、結局初回が最高視聴率であったくらいである。放送期間も1年保つことはできず、全39話で放送が終了してしまった不遇の作品である。

「地味」、「打ち切り」などの負のイメージが付きまとう作品であるが、近年ではDVD-BOXが発売されたり、『ガンダムビルドファイターズ』この作品の主人公機であるガンダムXの改造機、ガンダムX魔王が登場するなどで認知度が上がりつつある。というわけで、今回はHGAW ガンダムXを紹介しよう!

新シリーズでガンダム売るよ!
ガンダムXはプラモデルの展開もかなり地味である。ガンダムXは本放送が行われた1996年に1/144と1/100のキットが発売されている。しかし、前作『ガンダムW』まで発売された1/60のキットは発売されなかった。また、MGに関してはほかの作品の主役ガンダムはほぼすべて発売されているにもかかわらず、ガンダムXのプラモデルは2014年になるまで発売されなかった。このように、キット展開も地味なものであるためガンダムXファンは辛酸を長い間なめ続けてきたのだった。

しかし、HGシリーズでは他の平成ガンダムを差し置いて1番にキット化された。HGUCと同じく、作品の年号からHGAWのブランド名が与えられ、21世紀の多色成型技術や可動ギミックをおしみなく投入されたキットとなった。

それでは実際にキットを細かく見てみよう。

HGAW ガンダムX 前 HGAW ガンダムX 後
平成ガンダムとしては初のHG化されたキットであるガンダムX
手ごろな値段ながら様々な部分に工夫が施されている

1996年版のキットを知っているものからすると、HGAW版のガンダムXは大きく進歩している。まず、昔の1/144のキットではシールで再現されていた肩や腕、足のブルーのラインは色分けされている。また、肩のダクト部分の灰色のパーツや頭部メインカメラの周囲の赤色の部分も色分けされている。筆者が塗装したところは、ビームサーベルのグリップ部と鍔の部分、サテライトキャノンのウイングの黒いところ、そして膝の三角形のモールドパーツである。これらの箇所は細かいところであるが、塗装してあるとキットにメリハリが付く。

膝の三角形のモールドは本来はシールが付属しているが大小の三角形が段になっている箇所なのでシールがしっかりと貼られない。そう言うわけで、ここは塗装したほうが早いだろう。筆者は三角形のモールドを一度赤く塗り、その上に黒をちょんちょんと小さい三角形に塗って再現している。

可動面においては、肩の接続がボールジョイントになっている。また、肩関節を前方に引き出すことができるようになっており、広い可動範囲を誇っている。また胸パーツはボールジョイントでの接続になっているので回転のみならず軽く反らせたりすることも可能になっている。

腰の前のアーマーパーツは一体成型になっているが、切断できる箇所が用意されているので、そこで切断するとアーマー部が左右で独立して動くようになる。

ガンダムXの武装は背中に集中して装備されており、コロニーを一撃で破壊する威力を持つサテライトキャノンを主武装にバックパックに武器が装備されている。HGAWではガンダムXの設定上のすべての装備が付属している。

まず、携行装備であるシールドバスターライフルは、キットではシールド形態とライフル形態の2種類が付属している。

シールドバスターライフル

ライフルモード シールドモード
盾がビームライフルに変形するというガンダムの武装でも珍しい方式のシールドバスターライフル

周囲の黒い淵はシールで再現されている。さすがにこの大きさでは変形機構を組み込めなかったのか、それぞれの形態のライフルが付属しているが。パーツを交換することによって変形のプロセスを楽しむことが可能である。

シールドバスターライフルの変形
変形イメージは盾が割れて両サイドに折れたたまれ、ライフルの銃身が伸びる形
ロールオーバーで画像が変わります

また、このシールドバスターライフルはバックパックに懸架させることもできる。

バックパックへの懸架

シールドバスターライフルの難点は、シールド形態になるにもかかわらずシールド時のグリップがライフル時のグリップと同じなため、そのまま手に持たせると盾の構えとしてはおかしくなってしまう点である。筆者は逆手持ちにして盾を持たせるようにしているが、それでも違和感はぬぐいきれない。このパーツは折角別パーツになっているのだから、そのまま普通の盾として持たせることができるようにグリップの位置を考えてほしかったものである。

また、バックパックに装備する形のショルダーバルカンが付属している。この装備は実戦配備早々破壊された不遇の装備で、1/100のみに付属していたものである。HGAWでも1/100より小型ながらガトリングの可動も含めてきっちり再現されている。

ショルダーガトリング
フロスト兄弟のガンダムヴァサーゴに投入早々破壊されたマニアックな装備
ロールオーバーで画像が変わります

接近戦用の武器は、ビームソードが装備されている。通常のガンダムの接近戦用の武器はビームサーベルと呼ばれているが、ガンダムXのビームソードは通常のサーベルよりも出力が高くビームの刃がサーベルよりも太い。この武装を再現するために、専用のクリアパーツのソードが付属している。

ビームソード
ビームソードはサテライトキャノンに収納されている


そしてガンダムXの代名詞ともいえる武装であるサテライトキャノンも再現されている。これは月にある太陽光発電施設からマイクロウェーブが照射され、そのマイクロウェーブを受信することで発射される高出力のビーム砲である。その威力はいとも簡単にコロニーを破壊するだけの威力があり、AW時代の最強の武装である。ただし、AW0015においてはマイクロウェーブの中継装置が破壊されており、月が出ている時しか使用できない。

キットではこのサテライトシステムも再現されている。まず、L字型に配備されている背中のリフレクターは付け替えでX字型に展開する。劇中での展開方法はリフレクター部が回転して展開するのだが、付け替え措置になっているのは大きさと値段のせいであろう。

リフレクターの展開@
ロールオーバーで画像が変わります

リフレクターの展開A
ロールオーバーで画像が変わります

胸にあるマイクロウェーブ受信装置とリフレクター部分はホログラムシールが用意されており、そのシールを貼りつけるとマイクロウェーブ受信時の発光状態を再現することができる。

ホログラムシール
光が当たることによって発光するシールが使用されている

リフレクターを展開させた後は、背中に装備されている砲身部を前方に倒し、砲身を引き延ばしてグリップを握らせばサテライトキャノン発射状態が完成する。

サテライトキャノンを倒す図
ロールオーバーで画像が変わります

砲身を引き延ばす図
ロールオーバーで画像が変わります

サテライトキャノン発射!
コロニーを一撃で破壊してしまう最強兵器、サテライトキャノン

尚、このリフレクター部分はホバー機構を備えており表裏逆に展開すればホバーモードとなる。

ホバーモード 前 ホバーモード 後
リフレクターはウイングの機能も兼ね備えており、空中戦を行う時は上のように表裏逆にリフレクターを展開する

このように比較的低価格のキットであるにもかかわらず、劇中の装備がすべて再現されているのがこのキットの良い点であろう。一部の設定方法が付け替えなのは残念だが、2013年に発売されたMG版ではサテライトキャノンの展開が完璧に再現されている。また、シールドバスターライフルのグリップ部の問題も解消されているので、ギミックにこだわる人はMG版を購入しよう。

尚、このキットを叩き台にして2013年にはガンダムX魔王が発売されている。こちらはガンダムビルドファイターズに登場するガンプラの一つで、劇中でも結構な立ち位置で登場している。ビルドファイターズのキットは全般的にかなり売れ行きが良く、地味だと言われていたガンダムXもそれなりに脚光を浴びるようになった。まさに放送から15年以上たってからの快挙である。

月は出ているか?
AW0015年、コロニーの落下によって地球上は荒廃しきっていた。地上では少ない物資を勝ち取るため、人々が絶えず争いを繰り返しており、中でも戦争時に使われていた兵器や電子部品をあさり売りさばくバルチャー達が跳梁跋扈していた。

そんな中で、15歳のガロードはメカニックの知識を活かしMSを奪っては売りさばいてどうにか荒廃した世界を生き延びていた。そんなある日、ライク=アントという紳士にある少女をバルチャーから奪還するよう依頼を受ける。依頼を引き受けたガロードは、少女を奪うために戦艦フリーデンに潜入した。

船内を物色したガロードは、駄賃代わりにコントロールユニットを盗み出し、目的であった少女、ティファ=アディールを連れ出した。まんまと目的の少女を連れ出したガロードだったが、依頼者であるライクにティファを引き渡そうとすると彼女は非常におびえた表情を見せた。その様子を見たガロードは彼女を連れたまま逃げ出した。

ガロードとティファを追跡するため、ライクは仲間のバルチャーとともにMSを駆りだした。追い詰められるガロード達であったが、ティファの導きでたどりついた旧工場の跡地にたどりつく。おもむろにティファが指示した先には、15年前地球を荒廃させた決戦兵器、ガンダムXが放置されていた。ガンダムを見つけ出したティファは、その場で気絶してしまう。

ガロードはライクたちのMSの攻撃をしのぐため気絶してしまったティファとともにガンダムXに乗り込んだ。ライクたちのMSを撃退しようとガロードはガンダムを動かそうとするも、肝心の操縦桿がなかった。そこで一か八かの賭けでガロードはフリーデンから盗み出したコントロールユニットを差しこんでみた。すると、見事にガンダムが起動した。ガロードが盗み出したコントロールユニットはガンダムXを動かすためのキーであるGコンだったのである。

ガンダムX、起動!
ガロード「ティファ!俺、神様信じる!!」

ガンダムX、起動!
ガロード「ようし、行くぜっ!!」

ガンダムを起動させたガロードはライク達のMSへ反撃に出た。ガンダムの強固な装甲は並みのMSのガトリングを受け付けず、拳一撃でMS1機を撃退する。さらに、ガロードはビームソードを抜くと残りのライクのMS2機をいともたやすく撃破するのだった。

ビームソードを引き抜くガンダムX
ロールオーバーで画像が変わります

一方、ティファを奪われたフリーデンは彼女を奪還するためにガロード達を追跡していた。フリーデン艦長、ジャミル=ニートは傭兵として雇っているウィッツ=スーロアビィ=ロイガンダムエアマスターガンダムレオパルドで出撃させた。ようやくガロードに追いついたフリーデンであったが、ガロードがガンダムXを動かしているのを見たジャミルは思わずこのようにクルーたちに訪ねた。

「月は出ているか・・・?」

ジャミルの質問の意図がわからず戸惑いが隠せないクルーたちであったが、ジャミルの中では15年前の悪夢がありありと甦っていたのであった。

別のガンダムが現れたことで窮地に立たされそうになったガロードであったが、ティファの協力の下彼女を盾にしてまんまと逃げだすことに成功した。ティファと穏やかな夜を過ごしていたガロードは、彼女に自分の過去を看破されていた。そんなとき、ガンダムの噂を聞きつけたバルチャー達が現れ無数のMSに取り囲まれてしまう。バルチャー達はガンダムが高値で売れることを知り、ガロードから奪い去ろうとしていたのであった。

強固な装甲を誇るとはいえ、数の差を埋めることはできずガロードのガンダムXは追い込まれてしまう。彼の窮地にティファは自身のニュータイプ能力を使用し、ガンダムXに秘められた力を解放する。彼女のニュータイプ能力によって眠っていた月にある太陽光施設が起動し、マイクロウェーブが照射された。コクピットのコンソールにはサテライトシステム起動の表示が現れる。

マイクロウェーブを受信したガンダムXはリフレクターと砲身を展開する。その様子を見ていたジャミルはティファに交信を試みようとするも、彼の声は届かなかった。

マイクロウェーブを受信したガンダムXはリフレクターを発光させ、その砲塔から極太のビームを発射した。

エネルギーを受信するガンダムX

サテライトキャノン発射!
ジャミル「撃つな!!」

ガロード「行けええええええ!

サテライトキャノンから発射されたビームは、一撃で無数に取り囲んでいたMSを蒸発させた。その様子を見たジャミルは、15年前の悪夢の再来だとつぶやく。サテライトキャノンの威力にガロードは呆然とするも、自分たちが助かったことをティファに確かめようとした。

しかし、ティファは突然絶叫する。多くの人間が死んだことによってティファはその思念を直に感じ取り、発狂し倒れててしまったのである。ティファの異変によってガロードはジャミル達フリーデンに捕えられてしまう。

・・・彼らの運命やいかに!?

何も考えずに走れ!(HGAW ガンダムXディバイダーのコラムへ)

ダブルエックス起動!(ROBOT魂 ガンダムダブルエックスのコラムへ)

ここからが、ワイのガンダムX魔王の真骨頂!(HGBF ガンダムX魔王のコラムへ)

ガロード=ラン様を舐めんなよッ!(もどる)