HG スターゲイザーガンダム

バンダイ 1/144プラスチックモデルキット

1680円(税込み)


HG スターゲイザーガンダム
星を見るもの、スターゲイザー登場!

人類の夢は深宇宙へ
ザフト軍パトリック=ザラ派によるユニウスセブン落下事件直後の混乱のさなか、一機のMSがDSSDによって打ち上げられようとしていた。その開発者の一人であるセレーネ=マクグリフは、落下直後の津波の災害に遭遇し、足止めを食らっていた。そこに、地球に残留していたパトリック=ザラ派によるテロに遭遇した。同僚であるエドモンド=デュクロは、セレーネだけを緊急ボートで脱出させ、自身は元同僚の戦車部隊とともに(注1)、テロリストのジンと相打ちになり、命を落としてしまう。

彼の命と引き換えに、人類の新たなる可能性を背負う一機のMSが打ち上げられた。そのMSこそ、GSX-401FW スターゲイザーガンダムなのである。

このスターゲイザーガンダムの特筆すべき点は、その推進システムにある。バックパックにあるリング状のパーツは、ヴォワチュール=ルミエールと呼ばれ、リング内部で太陽風を受ける量子の膜を作り出し、特殊なエネルギー変換を経て光の力のみで推進させるシステムである。この推進機構は、無限ともいえる太陽光線を使用するので、機体を無限に加速させることが出来る。つまり、このシステムを利用することでエネルギーをあまり消費することなく、かつ高速で惑星間移動を行うことが出来る。この機体のコンセプトは、この推進システムによって太陽系内の惑星探査を行おうというものなのだ。ゆえに、「ガンダム」の名を冠してはいるが、この機体は兵器ではなく地球圏外探査用MSなのである。

小惑星やスペースデブリなどの危険が伴う惑星探査を行うということで、このスターゲイザーは完全無人で独立稼動するために新型のAIを搭載している。劇中では、このAIは赤子も同然で入力されたデータを演算するだけのコンピュータに過ぎないのだが、このAIの育成を行うために、宇宙での実験をセレーネとエドモンドの養子、ソル=リューネ=ランジュが執り行っているのであった。(注2)
注1 彼は前大戦のときは戦車部隊の少佐であったが、終戦後退役しDSSDに参加した。

注2 AIブロックは胸部に搭載されており、育成のために複座式のコクピットと取り替えることが出来る。

白黒はっきりしたガンダム
OVA「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER」において、ストライクノワールガンダムと同様に物語の鍵を握るスターゲイザーガンダムは、例に漏れることなくキット化された。もうお約束だが、HGシリーズでの発売となったこの機体の出来をそれぞれ見ていこう。

まず、スターゲイザーガンダムのデザインであるが、ストライクノワールが漆黒を基調とした色合いなのに対し、スターゲイザーは白を基調としたMSとなっている。各部に施された溝状の部分は、ヴォワチュール=ルミエール起動時は黄金に光り輝き、それらの再現をこのキットは、シールで再現している。好みに合わせてどちらかを選ばなければならないので、実質上コンパーチブルキットといえるだろう。尚、本コラムはヴォワチュール=ルミエール起動時のもので組み立ててある。

スターゲイザー前 スターゲイザー後
全体的なプロポーションは設定画寄り
金色の部分は黒のシールと選択式

プロポーションは、ストライクノワールといった最近のHGでの流行であるヒロイックな体型ではなく、設定画よりにデザインされている。と、言っても劇中も似たような体型だったのでさほど気にすることはなさそうである。

一方、可動は最近のHGの流行に準じたものになっている。まず、アカツキで採用されているダブルボールジョイントによる肩の可動を搭載。この機構により、表情豊かなポージングが楽しめる。


ストライクノワール同様、幅広い可動範囲を誇る

ただ、このMSは戦闘用のものではないので逆に派手なポーズは取らせることはあまりない。搭載しなかったら搭載しなかったで不満の声は出てくるだろうが、少々ミスマッチ感がある。

もう一つの流行のギミックということで、ストライクノワールで搭載された股関節の可動も仕込まれている。劇中ではスターゲイザーは機動性の高いMSとして描写されていたので、この部分は必要といえる。
また、腿の部分にはバーニアが仕込まれている。


内部バーニアを再現

色分けに関しては、デザインが非常にシンプルなのでほぼ完璧である。塗装箇所を上げるとしたら、腿内部のバーニアを白く、そして額の赤い部分を塗って墨入れを施せば箱の写真に近いものが仕上がる。
ただ、シールを多用するキットなので、改造して足を延長する人はそのあたりを留意する必要がある。黒いシールならば、塗装で済ませればよいが、発光時の色はシールに頼らざるを得ない。そういうときに、シールの長さが足りなくなることも出てくるだろう。ある程度は、余白の部分でカバーできるだろうが、改造する人には厳しいキットではある。

光り輝ける運び手
スターゲイザーの大きな特徴であるヴォワチュール=ルミエールは、広い可動範囲を誇っている。ABS樹脂を使ったアームにより、リングの幅広い可動を実現しているのだ。同時に、内部のフレームも伸ばすことが出来、リングのみでかなり遊ぶことが出来る。

ヴォワチュール=ルミエール
差し替える必要があるが、スタンドのように移動させることも可能

ヴォワチュール=ルミエールの副次的な機能として、機体の周辺にビームリングを展開させることが出来る。このギミックと高い機動性を生かして、劇中のスターゲイザーガンダムは、探査専用のMSでありながら高い戦闘力を発揮した。

キットでは、スタンドパーツに取り付けるための特殊なパーツとして付属している。回転軸にステンレス軸を利用しているので、高い強度を誇るのがうれしいところである。

ビームリング
リングは三重
キングゲイナーを髣髴させる

劇中では登場しなかったが、ヴォワチュール=ルミエールは分割することが出来る。このパーツをウイングとして見立てると、結構面白いポーズを取らせることが出来そうである。

ヴォワチュール=ルミエール分割

ポージング例 前 ポージング例 後
リング分割とビームリングでこのようなポーズも取れる

このように、SEED系のMSにしては珍しく非戦闘用のMSなので、派手なポーズを取らせるといった遊びはあまり似合わないが、リングやヴォワチュール=ルミエールのパーツを上手く駆使して、劇中の再現をやろうというコンセプトの元に作られているというのがよくわかる。出来としては上出来なので、これは買いのキットであろう。

そして、白と黒は交差する
「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の38話でヘヴンズ・ベースが陥落し、ロード=ジブリールが宇宙へと脱出した後、DSSDの内部では不吉な噂が流れていた。追い詰められた連合軍部が、スターゲイザーのAIシステムを狙っているのだという。

そして、その不吉な噂は現実となる。地球連合軍第81独立機動軍、すなわちファントム・ペインのナナバルクを旗艦とした部隊が、DSSDに攻撃を仕かけてきたのであった。DSSD側もシビリアン・アストレイ部隊で迎撃に出るが、ヴェルデバスターとストライクノワールの圧倒的な戦闘力の前に、徐々に追い詰められていく。

不利な状況を打開すべく、セレーネとソルはスターゲイザーで出撃することを決意するのであった。

スターゲイザー出撃!
ごめんなさい。
あなたに人殺しをさせてしまうわ・・・。
この子にも

探査用のMSであるにもかかわらず、高い機動性を誇るスターゲイザーは順調にファントム・ペインの部隊のMSを次々に撃破していくのであった。そして、次なる狙いを強力な1機のMSに絞ったのであった。そう、ストライクノワールに!

激突!ノワールvsゲイザー!!
三時の方向、あれが厄介そう

スペースポート内部にストライクノワールを誘い込んだものの、ゲイザーはノワールの巧みな追撃を受ける。再び港の外に出た二機であったが、ノワールのビームライフルショーティーがゲイザーを捕らえた。

・・・かと思われたが、ゲイザーの特殊機能により逆にノワールのビームをビームリングにし、ビームソーとして使用した。


ビームリング発動!

ビーム兵器を無効化され、さらにヴェルデバスターの撃墜報告を聞き、ひるんだストライクノワールは一瞬の隙を突かれてダメージを負ってしまう。


ビームリングがノワールの左腕を捕らえた!

しかし、ゲイザーのパワーが切れてしまい、頼みの綱のビームリングが消えてしまった。管制室の陥落も確認したセレーネはソルに、ゲイザーからおりるように指示する。強制的にソルを排除したゲイザーはストライクノワールに組み付いた。

ノワールの動きを止めたゲイザーは、アポロンA(注2)にプロパルジョンビーム発射を支持する。セレーネは、ゲイザーごとノワールを戦闘宙域から、強制的に排除しようとしたのであった。
しかし、超加速がかかりGにより体を押しつぶされる危険があることを知っているソルは、セレーネを止めに入る。その制止を振り切って、アポロンAの管制室に発射を指示するのであった。

捨て身のスターゲイザー
私は大丈夫だから・・・
押しなさい!

逡巡の果てに、プロパルジョンビームが指示通り発射され、スターゲイザーに超加速がかかり、ノワールとゲイザーはいずこかへ飛んで行ってしまった。アポロンAの管制室に入ったソルは、プロパルジョンビームの照準をナナバルクに向け、撃破する。

両陣営ともに相当のダメージを負ったが、結果的にファントムペインは旗艦を失い、モビルスーツ部隊も全滅してしまった。勝利を辛くも得たDSSDであったが、双方ともにとってこの戦闘は悲劇的なものであった。

漆黒の宇宙へ消えたセレーネは意識を取り戻し、ノワールのパイロットであるスウェンをゲイザーのコクピットに連れてきて手当てを施した。気がついたスウェンに、ノワールのエネルギーをもらうことを告げる。

エネルギーを吸収するゲイザー
あなたの機体からエネルギーをもらうわ
良いでしょ?


PS装甲は落ちております
俺に選ぶ権利があるのか?

ノワールからエネルギーをもらった理由は、もちろん地球圏に戻るためであった。ヴォワチュール=ルミエールの無限加速を利用し、地球に戻ろうというのだ。スウェンを助けたのは、セレーネが眠りに落ちるまで、孤独を感じないようにするため。ゲイザー内の酸素がもつのは、およそ27日間で一か八かの賭けに出たわけである。

地球に進路を向けるスターゲイザー
帰れるわ!必ず!!

セレーネが眠りに就いた後、スウェンはつらい過去の中に尚存在した、良い記憶を回想しながら、彼もまた深い眠りについていく。

最終的にスターゲイザーの酸素が切れる27日目に、ソルの探査部隊がスターゲイザーを発見し、通信を入れるシーンで物語りは劇終を迎える・・・。
注3 スターゲイザーに超加速を与えるためのレーザーを発射するレーザー衛星のこと。
上を見る者・・・。星を見る者・・・。スターゲイザー!!(もどる)